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「いつかは持家を」と思ってる人もそうでない人も~『住宅政策のどこが問題か』
平山 洋介著(評者:澁川 祐子)【奨】

光文社新書、860円(税別)

  • 澁川 祐子

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2009年4月24日(金)

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評者の読了時間4時間30分

住宅政策のどこが問題か──〈持家社会〉の次を展望する』 平山 洋介著、光文社新書、860円(税別)

 先日、日本最高層のマンションの内覧会が開かれた、というニュースを目にした。東急東横線武蔵小杉駅(川崎市中原区)から歩いて2分、高さ197m、59階建。しかも全794戸がすでにほぼ契約済み、と書いてあって驚いた。「100年に一度の不況」なんて、どこ吹く風だ。

 だが、風は吹いているところには吹いている。そよ風どころか疾風が。クビ切りで寮を追い出されたり、家賃を払えなくなった人が路上やネットカフェに流れ込んでいる。そんな低所得者の弱みにつけこむ住まいがらみの貧困ビジネスも生まれ、訴訟問題にまで発展している。

 しかも空き家問題は一戸建に限らない。老朽化した集合住宅でも空き家は増え、維持管理費が十分得られずにさらに老朽化が進み、ますます入居者が減る、という悪循環に陥っている。

 新しい家はどんどん建てられる一方で、古くなった家はどんどん余っていく。よりよい暮らしを求めて住まいを一新する人がいる一方で、家を失ってどん底の暮らしを送る人がいる──いまの日本の住宅事情は異常に歪んでいる、と最近しきりに思っていた。だが、個々の問題について取り上げられることはあっても、この歪み全体を包括して論じたものに出会わなかった。

 そうしたところへ、本書が出版された。著者は都市計画を専門とする研究者だが、都市のあり方やその変化を建築からアプローチするのではなく、そこに住む人間の目線から解明しようとしてきた。

 本書では一貫して、「現在の日本の住宅事情は自然発生的なものではなく、政策によってつくられたもの」と主張する。そして、戦後以降の政策を追い、過去から現在に至るまでの住まいの実態とその変遷を、綿密なデータの積み上げによって明らかにしていく。

「フツーの人」が家を買えるように

 著者は、日本を「持家社会」と定義する。これは単に持家が多いというだけでなく、人々が持家を指向する社会のことを指す。

〈戦後日本の持家社会は、多数の人たちが住まいの「梯子」を登る動的な社会である。ここでの「普通の人生」のモデルは、住宅・家族・仕事のトライアングルのもとで成り立ち、結婚して家族をもち、仕事を確保して収入を増やし、そして住宅所有によって暮らしのセキュリティを得る、というパターンのライフコースを前提とする〉

 若いときに住宅ローンの返済に苦しんだとしても、高齢になってローンを完済していれば、家が不動産資産として手元に残る。住むところがあって食べるだけの収入が確保できれば、とりあえずは暮らしていける。持家は「老後の安心」を支える柱とみなされ、住宅の獲得は人生における一大ステップとして機能してきた。

 大多数が家を所有するようになれば、政府は社会保障費を削減でき、社会を統合しやすくなる。そこで政府は、大金持ちでもなく貧乏でもないフツーの人間=中間層が家を買うのに有利なように住宅支援を限定し、人々が住宅を所有してメインストリームに入るよう誘導し、中間層の拡大をはかってきたのだと著者は指摘する。

 政策の柱となったのは「住宅金融公庫法」(1950年)、「公営住宅法」(51年)、「日本住宅公団法」(55年)。

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