「経済人的流行歌指南」

第5回 ストーンズが示す「裏方も主役」の時代

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2009年4月30日(木)

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いつしか音楽を聴かなくなってしまったビジネスパーソンに贈る本コラム。カバー曲を集めたコンピレーションアルバム「コトノハ」「コトノハ2」を手がけた、元野村証券トップアナリストの佐藤明さんに、最新のお薦めを紹介していただきます(詳細は、元野村のトップアナリストが掘り出したお宝銘柄…ならぬ「名曲」)。

戸田(以下、――): 20カ国・地域(G20)首脳会合(金融サミット)で、各国が景気刺激策を打ち出しました。課題は山積みですが、それでも新たな成長に目が向き始めている感があります。

佐藤明: 一握りの経営者らが短期的な収益を求めて報酬を手にした結果が、富の偏在による格差という社会問題につながっているのは確かでしょう。個人の能力を盲信するような、行き過ぎた成果主義は見直さなければなりません。今までとは違う秩序を考えないといけないのではないでしょうか。

ティム・リース「ストーンズ・ワールド
ノラ・ジョーンズらが参加した「ザ・ローリング・ストーンズ・プロジェクト」に続くカバーアルバム2作目

 金融危機があらわになった昨年の秋以降、こんなことを考えている時に出合ったのが、ティム・リースの「ストーンズ・ワールド」というアルバムです。リースは、ストーンズのワールドツアーでサックスを吹いているミュージシャンです。まぁ、裏方ですね。

 そんな彼がリーダーとなって、ストーンズの曲をジャズでカバーしています。それだけであれば、よくありそうな単なるカバーアルバムですが、びっくりするのはミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ロン・ウッド、チャーリー・ワッツが参加していること。ストーンズの全メンバーですよ。

 ストーンズが全面協力しているのは、このアルバムがツアーの合い間に制作されたから。世界各地で録音しており、キースと日野皓正(トランペット奏者)のコラボレーションなど、ファンには涙モノの企画です。昔はストーンズ、今はジャズと言う人には、強力にお薦めです。

俺たち、チームだろ!

―― 確かにメンバーの1〜2人であれば仲がいいのかと思いますが、ストーンズ全員が参加するのは……。しかも、あのミックとキースがストーンズの活動以外で(笑)。

佐藤: ストーンズはいいチームだなぁと思います。バックミュージシャンのために、皆が参加して盛り上げるのは素晴らしいですね。お金のためでもなく、名誉のためでもなく。友人のため、良い音楽のため。録音現場の様子の写真を見ると、そんな雰囲気が伝わってきます。

 チームワーク重視。「皆で良いものを作ろうぜ。主役も脇役もないよ。俺たち、チームだろ!」。

 なんだか良き時代の日本企業を思い出しますね。経営トップは大局観(マクロ観)で、現場は現場観(ミクロ観)で、全員が経営に参加していました。どちらが正しいわけではなく、局面ごとに大局観、現場観のどちらを優先するか、うまく使い分けていたように思います。

 誰か一人に依存するのではなく、全員がそれぞれの持ち場でしっかり仕事をしていた時代です。このスタイルであれば、一部の人の暴走で、リスクへの十分な考察をせずにリターンの最大化に走ったサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題も、どこかで歯止めがかかったのではないでしょうか。

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著者プロフィール

佐藤 明(さとう・あきら)

佐藤 明

1987年、野村証券に入社。証券アナリストとして重機、運輸、建設、インターネットなどを担当。1995年に日経アナリストランキングで企業総合部門第1位。2001年5月に企業コンサルティングのバリュークリエイトを立ち上げた。音楽レーベル「nowhere music」を設立し、J-POPのカバーアルバム「コトノハ」を制作。コモンズ投信と調査会社バリューリサーチにも関わる。

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