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脳卒中になった脳科学者の本――50万部ヒット、『奇跡の脳』がもたらすもの

第1回 ジル・ボルト・テイラー×竹内 薫

  • 日経ビジネスオンライン編集部

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2009年4月30日(木)

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 脳卒中の患者数は、年間147万人。死亡率は昭和55年まで長い間トップだったが、死亡に至る割合が減ったため、現在では第三位の死因だ。それでも年間13万人が亡くなっている。交通事故の死亡者数が1万人、自殺者が3万人なので、13万人を多いと感じるか少ないと感じるかはひとそれぞれだが、発症時の峠を越せたとしても、運動麻痺や失語症などの後遺症に悩まされる患者さんが多いという。「後が大変」。それが脳卒中なのだ。

 一方で「脳ブーム」の中、脳の機能を高めようと日本中が躍起だ。ところが、肝心の機能を失う脳卒中そのものについて、当事者からの声は意外に聞こえてこない。がんの闘病記を読んだことがあっても、脳卒中のリハビリ記録の本はあまり書店でも見かけない。

 そこに登場したのが、このアメリカ人女性だ――。

アメリカで50万部の話題作

 彼女の名は、ジル・ボルト・テイラー、ハーバードの第一線で活躍する37歳の脳科学者だ。1996年12月10日の朝、目覚めとともに脳卒中に襲われてしまう。歩くことも話すことも、読むことも書くこともできず、記憶や人生の思い出が失われていく。そのとき、ひとはどんな行動をとるのだろう。そして、それは、なにをもたらすのか? それがあなただったらどうするだろう。

 その過程を、彼女は冷徹に科学者として観察し、後から長い時間をかけて思い出し、まとめる。それが今回紹介する『奇跡の脳』(原題は『My Stroke of Insight A Brain Scientist’s Personal Journey』竹内薫訳、新潮社、税込1785円)である。

奇跡の脳』ジル・ボルト・テイラー著、竹内薫訳、新潮社、税込1785円

 彼女の病名は、脳動静脈奇形(AVM)による脳出血だ(脳卒中は血管が詰まる脳梗塞と、血管が破れて出血する脳出血の二つに大別される)。主にダメージを受けたのは左脳だったため、左脳が司っていた言語機能、理性や時間感覚が失われる一方で、右脳の芸術家的機能が活発化していく。彼女がそれぞれ「左脳マインド」「右脳マインド」と称するものだ。

 科学者である彼女は、自らを対象に刻々と変化を遂げる脳について考察していく。

 その様子を語った講演会がYou Tubeで76 万回の再生を記録し(リンクはこちら)、著作は50万部の売り上げ、とアメリカでは大きな話題を呼んでいる。オプラ・ウィンフリー(アメリカでカリスマ的人気を誇るテレビ番組司会者)に感嘆の声をあげさせ、タイム誌の「2008年世界で最も影響力のある100人」に選ばれたテイラー博士だが、その体験は、現代社会になぜそれほど影響を与えるのだろう? 正直なところ、このアメリカ人女性のなにが必要とされているのだろう?

 日本でも発売後重版を重ねているという『奇跡の脳』を軸に、脳の機能を失い、そして再び取り戻す彼女の経験と、それがなぜ今の時代に必要とされているのかを3回の連載で考えていく。

 一回目は、『奇跡の脳』の翻訳に携わった竹内薫氏と著者のメールでの対談だ。
 二回目は、ご存知、養老孟司さんが、著者にメールで質問をぶつけてくれた。返事を分析しつつ、「脳化社会」への対処法をざっくばらんに語ってくれているので養老ファンは乞うご期待
 三回目は、編集部からのメール・インタビュー。今回の不況を皮切りにはじまった経済・社会の大きな変化にどう対応していったらいいのか、アドバイスを聞くことができた。

*   *   *   *

 では、さっそく竹内薫さんとの対話から始めよう。なお、テイラー博士からの返事は英語で書かれており、すべて翻訳は竹内氏による。

画像をクリックして拡大表示

ジル・ボルト・テイラー博士
Jill Bolte Taylor

 インディアナ州インディアナ医科大学の神経解剖学者。ハーバード脳組織リソースセンター(脳バンク)で精神疾患に関する知識を広めるために尽力しつつ、「ミッドウェスト陽子線治療研究所(MPRI)の顧問神経解剖学者として活躍している。1993年より、NAMI(全米精神疾患同盟)の会員でもある。タイム誌の「2008年世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。インディアナ州のブルーミントン在住。ホームページはこちら


竹内薫さん(以下、竹内) こんにちは、テイラー博士! 私は、日本のサイエンスライターで、竹内薫といいます。

 拝見したNHKのドキュメンタリー番組(3月24日にNHKのBSハイビジョンで「復活した“脳の力”~テイラー博士からのメッセージ」というタイトルで放送された、テイラー博士が出演したドキュメンタリー番組。今後の再放送はまだ未定)の中では、サイン会に訪れて泣きながら博士に話しかける、脳卒中から回復した患者さんの姿や、講演会の最後に総立ちになって感動を表現するアメリカの市井の人々が映し出されています。なぜこの本がこれだけアメリカで受け入れられたと思いますか?

テイラー博士(以下、博士) この本に価値を見いだしてくれる人は多岐にわたっています。脳卒中を経験した人は、彼らの感じ方の理由が説明してあるので、この本をありがたがってくれますし、彼らもわたしと同じように回復できるという希望がもてるのです。

 患者さんの世話をする人たちは、これまで、なかなかなかった「介護のためのマニュアル」が手に入り、脳疾患に苦しんでいる家族や友人をどうやって助ければいいかがわかった、と言ってくれます。

 それから、医療関係者は、これまで気づかなかった、患者の体験を「発見」し、もっと効果的な治療への「発見」につながると、感謝してくれていますね。

竹内 健康な方にはどうですか?

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