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アカデミー賞作品「スラムドッグ$ミリオネア」を生んだのは外交官

原作者ヴィカス・スワラップ氏に聞く

2009年5月1日(金)

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 アカデミー賞で作品賞をはじめ8部門を獲得した映画「スラムドッグ$ミリオネア」(ダニー・ボイル監督)がGWの話題作となり興行成績が好調だ。映画の舞台は、躍進著しいインドのスラム街。世界の経済の中心地の1つとなったムンバイの活気と、そこで賢く生きる無学の少年のたくましさが、この映画の醍醐味だ。貧富の差が混在するインドには、その差を吹き飛ばすほどのパワーがみなぎる。

 インドのスラム街で育った孤児である主人公は、世界的な人気番組「クイズ$ミリオネア」に出演し、あと1問で全問正解という状況にいた――。この映画の原作者は、外交官であるヴィカス・スワラップ氏。外交官でありながら小説をどのように書いたのか。正式な教育を受けていない1人の少年がある日突然、億万長者になるという、まるで夢のような物語がなぜ生まれたのか。グローバリゼーションの波を受けるインド社会の変容ぶりとともに聞いた。

(聞き手は日経ビジネスオンライン 大村 洋司)

ヴィカス・スワラップ(Vikas Swarup)氏
外交官、1961年生まれ
インド北部ウッタル・プラデーシュ州生まれ。弁護士の家庭に育つ。アラハバード大学で歴史学、心理学、哲学を学んだ後、インド外務省に入省。外交官となり、トルコ、米国、エチオピア、英国に赴任。現在はインドの高等弁務官代理として南アフリカに赴任中だが、今夏から総領事として大阪に赴任予定。デビュー作となる『ぼくと1ルピーの神様(原題『Q&A』)』は41カ国語に翻訳され世界的ベストセラーに。これを原作としてダニー・ボイル監督が「スラムドッグ$ミリオネア」として映画化。アカデミー賞なども獲得。(写真:小久保 松直)

―― スワラップさんの書いた小説『ぼくと1ルピーの神様』を原作とした映画「スラムドッグ$ミリオネア」は今年のアカデミー賞で作品賞、監督賞など8冠を獲得しました。そもそも、小説を書いていたのですか?

スワラップ: 2000年にロンドンで勤務している時、突然小説を書きたいという思いに駆られ、執筆をはじめ、約2カ月で書き上げました。なので、『ぼくと1ルピーの神様』は私の処女作です。家族が先にインドに帰国していて、時間が持てたことも大きかった。

―― 子供たちがインターネットを短期間で学べるようなことを知ったのが、この小説を書いたきっかけだと。

 「Hole-in-the-Wall」というプロジェクトをご存じですか。デリーにIT(情報技術)系の工科大学があって、その横にスラムがあります。大学の壁に本当に穴を作り、そこにコンピューターを設置して、2~3カ月後に見てみたら、何の説明もしていないのに、スラムの子供たちがコンピューターを使っていたという記事を目にしました。その記事を読んだ時、書きたいという衝動が生まれました。英語で言う「アンダードッグ」、つまり勝ちそうもないロッキー的なキャラクターが最後に勝利するというストーリーが、枠組みとしてとてもいいというインスピレーションを受けたんです。

 洗練されたテクノロジーを駆使しているコンピューターを使うに当たっては、それなりに知識がなければ、教育を受けていなければとみんな思いがちですが、そうではないと知り、本当に驚きました。英語も知らないようなスラムの子供たち、学校も行っていないような子供たちが使えるということは、誰にもすごいことができる可能性が潜んでいるということです。手立てさえあれば、あるいはモノや資源さえ用意できれば、いろいろなことが変えられるのだと気づかされました。

 このプロジェクトに関していうと、インドのほかの場所だけでなく、世界各地でもこれをモデルにしたプログラムが実行されています。子供の持っている自然な好奇心に導かれるような形で学んでもらえるため、このプログラムはすごくいいことだと思っています。

―― 小説と映画では主人公の名前などの違いがありますが、原作や映画はリアルなインドを描いているのでしょうか。

ぼくと1ルピーの神様
ヴィカス・スワラップ(著)、
子安 亜弥(翻訳)
ランダムハウス講談社文庫、800円(税別)

 先ほど触れましたが、私はアンダードッグの物語を書こうと思っていたので、どういうインドかということは、実は考えて書いたわけではなかったんです。クイズ番組がその設定で、10億ルピーの賞金があり、それを主人公が難しい問題に正解して最後に手にするという筋書きですけど、最初からすごくお金がある人だったり、普通に学校に行っているような、いかにも知識がありそうな人では、ドラマ性に乏しいわけです。なので、最初の簡単な質問以降は、きっとこの人は無理じゃないかと思わせるようなキャラクター設定から、この主人公をまず選んだわけです。

 主人公を描く中で、今度は当然、リアルとおっしゃったインドのより貧しい場所だったり、バーだったり、鉄道だったり、スラムが必然的に舞台として登場したわけです。彼がインド有数の大学を卒業している設定は、今回の場合、あり得なかったわけです。

 そういう形で今のインドを描いたわけです。そういった正式な教育を受けていない人であっても、その状況に適応していく力を持っているか、そしてそこから学ぶ、あるいは自分でどうにかしていくという姿勢や力を持っていれば、人は最後に勝利できるんだというのがテーマの1つでもあったわけです。それは今のインドでもあります。

―― インドでは、機会の均等が進んでいる、と。

 すでにカースト制は、経済的には存在していません。都市部では古いバリアーであるカーストというものは取り払われていて、ありません。それは政府が打ち出した政策だったりシステムだったりします。いわゆるカーストによってかつて就けなかった仕事や就くのに不利だったりということがありましたが、そういった部分は是正されています。

 もちろん田舎や地方には多少そういったものが残っているかもしれませんが、いわゆる厳密な意味での伝統的な職業が決まってしまうといった意味合いのカースト制は完全にもうありません。

 ただ、社会的なアイデンティティーとしてのカーストというのはまだ残っていると思うし、それは生活だったり、同じ自分のカーストと同じバックグラウンドの人と結婚したりといった、そういう社会的な面ではまだ残っている部分はあります。

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「アカデミー賞作品「スラムドッグ$ミリオネア」を生んだのは外交官」の著者

大村 洋司

大村 洋司(おおむら・ようじ)

海外事業戦略室プロデューサー

1989年日経BP入社。95年「ナショナルジオグラフィック日本版」編集、2004年同誌副編集長。07年「日経ビジネスオンライン」副編集長。10年「日経ビジネスアソシエ」副編集長。12年1月より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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