「著者に聞く」

ゲーム依存・ネット中毒…。「廃人」の実態が明らかに

『ネトゲ廃人』の著者、芦崎治氏に聞く

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2009年5月1日(金)

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 インターネットで、見知らぬ相手と一緒に楽しむネットゲーム(オンラインゲーム)、通称「ネトゲ」。しかしネトゲのバーチャル空間に長時間没入するあまり、リアルな社会生活が送れなくなる人がいる。

 ゲームに熱中して夫や子供をないがしろにする妻。ネット上のバーチャル恋愛に没頭する女性。息子のゲーム中毒が原因でうつ病になった父…。韓国では、ゲームに数十時間熱中して死に至ったケースも何件か報道された。

 こうしたゲーム依存症・中毒患者を、「ネトゲ廃人」と呼ぶ。ネットゲーム依存は日に日に深刻化しているが、その実態は知られず対策も講じられていない。「ネトゲ廃人」たちは、何を思いどう生活しているのか。ジャーナリストの芦崎治氏が全国の「ネトゲ廃人」を取材し、その証言をまとめた。

(聞き手は日経ビジネスオンライン 大塚 葉)

――まず、ネットゲームにはまる人々を取材しようと思われたきっかけと、取材相手をどのように募集したかを教えてください。

芦崎 僕の知り合いで、中高生の子供がネットゲームに熱中し、不登校になったり引きこもりになったという話を、何人かから聞いたためです。これはどうしたことだ、というのが取材を始めたきっかけでした。

芦崎 治(あしざき・おさむ)氏
ノンフィクションライター、環境ジャーナリスト。1954年、富山県生まれ。立教大学法学部卒。週刊誌「AERA」、司法ジャーナル「ジュディシャルワールド」などに寄稿。主な著書に『ファシリテーター 甦る組織』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『逃げない人を、人は助ける』(中経出版)など。桜美林大学非常勤講師も務める。
(写真:花井 智子)

 調べてみると、ネットゲームにはまって社会からドロップアウトした人が増えているらしい。彼らは「ネトゲ(ネットゲーム)廃人」と呼ばれるが、これは蔑称的な意味合いだけでなく、「こんなにやっている」という尊敬や、自嘲、プライドのようなものも混じっているようだ。

 一方、韓国ではネットゲームの最中に亡くなった人がいるという報道があった。日本はどうなっているのだろうかという疑問がわいたことから、「ネトゲ廃人」を自称する人たちの実態を明らかにしたいと思ったのです。

 出版社のリーダーズノートを通じて、ウェブサイトや口コミで「ネットゲーム依存症の人に話を聞きたい」と募集したところ、すぐに70人ほどから回答がありました。メールでやり取りし、実際には国内で25人ほどに会って、どんなゲームに何年くらいはまったか、その時の生活の状況は、などを詳しく聞きました。

――本に登場した19人の自称「ネトゲ廃人」には、身なりのきちんとした女性や、サッカーや水泳などのスポーツも楽しむ少年もいて、少し驚きました。いわゆる「ネットゲーム依存症」のイメージとかなり違いますね。年齢も、中学生から40代と幅広かったのが印象的でした。

芦崎 そうなんです。マスコミは、ゲーム依存症というと「ゲームオタク」「アキバ系の若い男性」「引きこもり」というイメージを強調しがちです。しかし僕が実際に会った「ネトゲ廃人」には、男性だけでなく30〜40代の女性もいたのです。

ネトゲ廃人』(リーダーズノート)

 彼女たちの話を聞くと、生まれた時に既にインベーダーゲームがあった。幼稚園の頃からゲームに触り、25年くらいゲームに関わっているわけです。女性の中には独身もいるし、主婦もかなり多いということが分かりました。

 例えば、本の最初に登場する30代女性は、フェリス女学院大学の英文科を卒業した、IT(情報技術)企業の社長秘書でした。2番目の女性も、堅い企業で派遣社員をしている30代。

 2人とも既に「ネトゲ廃人」を脱却している人たちでしたが、「ネトゲ廃人」だった自分の過去を冷静に振り返っているんです。引きこもってうつうつとしている人かと思っていたら、そうではない。ネットゲームや依存の状況について論理的に話すし、ちゃんとメッセージを発信できる。

 こういう人でもネットゲームにはまっていた、というのが驚きだった。そこで、この2人を冒頭に持ってきました。

――中には、マスコミがよく伝えるような「太めで身だしなみを構わない若い男性」のような「ネトゲ廃人」もいるでしょうが…。

芦崎 もちろんそういう人もいますが、すべてではないんです。

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著者プロフィール
 

大塚 葉(おおつか・よう)

早稲田大学卒業後、技術評論社に入社し、パソコン雑誌や書籍の編集に携わる。1997年、日経BP社に入社。「日経PCビギナーズ」発行人兼編集長などを務め、現在は「日経ビジネスオンライン」編集委員。

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