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新型ウイルスに対抗する、頼もしい抗体を考える

ウイルスとの共生を提唱するダーウィン医学と人間の免疫系

  • 松島 駿二郎

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2009年5月1日(金)

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 豚インフルエンザが、世界中を脅かしている。ウイルスが人々を脅かしたのは今に始まったことではない。1918~19年にかけて、地球規模で襲ったウイルス(パンデミック)のことを思い出す人はそれほどはいないだろう。当時のパンデミックについて語った本『史上最悪のインフルエンザ 忘れられたパンデミック』については本コラムですでに紹介した。

 新型ウイルスをやっつけるのはいつでも抗体だ。今回は抗体の頼もしい働きがたちどころに理解できる書籍を紹介しよう。

◇   ◇   ◇

 進化から見た病気「ダーウィン医学」のすすめ 』栃内新著 講談社ブルーバックス刊 820円(税別)

 生物は万物が進化する、というダーウィンが主著『種の起源』で主張したことは、当時の社会に衝撃を与えた。神は万物を創造した、という聖書の記述が社会の背骨だった時代では、ダーウィンの主張は受け入れられるものではなかった。

 まして、万物の長である人間が、類人猿はおろか、地を這う虫けらから進化した産物だとまで言う進化論は、全くの論外だった。

 ダーウィンはビーグル号という戦艦に乗って世界周航し、特に南米大陸で観察した輝かしい種の多様性に接した。ビーグル号の航海からおよそ30年、ダーウィンは熟考を重ねた後、満を持して『種の起源』を書き上げた。執筆期間中、ダーウィンは常に不定愁訴に襲われていたという。自分の書く書物が社会に及ぼす影響を考えるにつれ、自分は神を否定しているのではないかという思いが、ダーウィンに重いストレスとしてのし掛かっていた。

 本書サブタイトルの「ダーウィン医学」に注目してほしい。ダーウィン医学とは耳慣れない言葉だ。

 著者によれば、「ダーウィン医学」は医師のランドルフ・ネシーと進化生物学者のジョージ・ウィリアムズによって1991年に提唱されたものだという。

人間は進化の途上にいるから病気になる

 ここで、誰もが経験する軽症の病気について考えてみる。発熱、頭痛、身体のだるさ、骨の痛みといった疾患、疾病をダーウィンの目で見直すと、実は身体を守るために必要な防御反応であることが分かってきた。

 この考えの基底には、人間もまた進化の途上にあるという考えがある。ヒト科ヒト(ホモサピエンス)は生き残りのために進化している真っ最中なのだ。熱が出る、頭が痛いといった、風邪の普通の症状で医者に駆け込み、薬を処方してもらう。薬漬けが問題になる中で、実は「放っときゃ治る」疾患がたいへんに多い、ということもダーウィン医学がもたらした福音である。

 ここで、ウイルスによる疾患を考えてみる。ありきたりな細菌なら、人間に本来備わっている生き残りのための装置が発動され、抗体が細菌に集結して細菌を呑み込んでしまう。抗体 vs 細菌の闘いこそが発熱を引き起こす。だから放っときゃ治るのだ。

 ところが、ウイルスの場合、ウイルスは人間を宿主として細胞の中に潜伏する。ウイルスはじっと機会を待っている。そして、ある種のきっかけ(ホルモンのアンバランスとか分泌物の急激な減少)などが起こると、ウイルスは宿主を攻撃し始める。

 抗体 vs ウイルスという闘いは生命が地球上に誕生して以来40億年にわたって続けられている長期戦争なのだ。ウイルスは、しかし宿主である生物を決して絶滅に追いやることはない。宿主が死んでしまえば、ウイルス自らも共倒れとなるからだ。だから、宿主とウイルスの間には一種のトレードオフの関係が成り立っている。

40億年かけて培われてきたヒトとウイルスの共生

 ウイルスが生物であるかどうかについては長い論争が繰り広げられてきた。研究の先端では、ウイルスもまた生物であるとする考えが主流となってきている。ウイルスもまた、生き残りのための進化を続ける。時折、爆発的な進化をして、宿主を脅威に陥れることがある。
 
 パンデミックを引き起こしたスペイン風邪ウイルスや、HIV(ヒト免疫不全ウイルス=エイズウイルス)のような途方もない悪性のウイルスが誕生することがある。そして今、豚インフルエンザウイルスが人類を脅かす。

 人間は、このような突発的なウイルスを絶滅するべく、強力な医薬品を開発してきた。するとウイルスもまた、さらに強力な進化を遂げて、対抗する。

 この進化競争は終わりのないイタチごっこなのだろうか? ダーウィン医学は先ほどのトレードオフが大切だという。この関係は言ってみればヒトとウイルスの共生とも言えそうだ。

 ヒトは寄生虫を毛嫌いして、撲滅に努めた。そしてほぼ、成功した。今時、回虫やサナダムシなどを持っている人はいないだろう。撲滅から間もなくして、ヒトにアトピーやアレルギー症状が増えてきたという。

 生物と細菌・ウイルスの共生関係は長い長い(40億年ほど)時間をかけて培ってきたものだ。共生を見直そうと、ダーウィン医学は提言している。

 確かに「ダーウィン医学」は新しい地平を開こうとしている。

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