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あたり猫でも、スカ猫でも~『猫の品格』
青木 るえか著(評者:尹 雄大)

文春新書、740円(税別)

2009年5月14日(木)

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評者の読了時間4時間00分

猫の品格』 青木 るえか著、文春新書、740円(税別)

 ここ数年、写真集に動画にホームページと、猫がブームらしい。土鍋に入ればかわいいと評判になり、ブサイクな面相であれば、それはそれで愛嬌があると人気者になる。「猫」と名のつくもので一顧だにされなかったのは、猫ひろしくらいではないか。

 このような世情に誰であれ思うだろう。猫ならなんでもいいのか! と。

 著者もそう吼える。が、舌の根の乾かぬうちに「なんでもいいんです」と態度豹変、開き直る。なぜなら「猫に取り憑かれた者は、そういうふうになってしまう」からだ。

 「そういうふう」とは、「猫が好き」と周囲に広宣し、猫のいる暮らしの素晴らしさを語り出すことではない。むしろ、著者は「猫が好き、という女はモテたいから」そう言うのであって、「猫が好きと広言するやつを信用してはならない」と断言する。

 では、猫を心通じる伴侶「コンパニオンアニマル」として扱おうとすることをいうのか。「取り憑かれた者」は、いずれにも与さない。著者曰く

〈猫に取り憑かれると、人生変わる。それほど劇的でもなく、生ぬるく、変わります〉

 本書は、猫との暮らしで人生観が「生ぬるく」変化し、その過程で露見する人間の品格について実体験にもとづき述べていく。

 ちまたの猫ブームは、猫を写真や動画で愛でるだけではなく、猫との暮らしを賞揚する。趣味のいい調度品がさりげなく置かれた部屋と、気まぐれだけど、かわいらしい姿を見せる猫、そしてきれいな身なりの飼い主。雑誌のグラビアページをめくれば、そんな取り合わせが目に付く。どうもオシャレな「私」が滲み出ている。

 そこに著者は異を唱える。「猫と共にある生活をしていると、どうしても人間がさえなくなってくる」。なぜなら「フンの香りとか、破れた障子とかフスマとか、猫がツメトギしたあとのカス」で家内は雑然としてくるのが自然だからだ。

猫との暮らしはうんざりしてナンボ

 これまで8匹の猫を飼ってきた著者は、その経験から持説を展開する。

 猫のしでかした乱行なり排泄の始末をするという、地味なルーティンで「猫まみれ」となり、次第に疲弊するのが、猫との暮らしなのだ。

 だから、「猫とその飼い主の間に、いかにしょぼいドラマが思い浮かぶか」が猫と本当に触れあっているかどうかの基準になり、関わりが深まるほどに「美しい生活とは無縁になる」。

 著者は現在も、二匹の猫を飼っている。一匹は人間でいえば104歳のラマちゃん。腎臓を患い、歯槽膿漏でヨダレをいつも垂らしている。午前零時をまわれば2時間ごとに「るえかさんや、まだごはんもろうてないがな」と食事を要求するといった、「老人特有の症状」も呈している。

 もう一匹は50歳を超えたクダちゃんで、「撫でようとするとその手に噛みつく」という「心がない、食べて寝てフンをするマシーン」みたいな猫だ。

 これでともに暮らす楽しみが見出せるのか。実際、著者もこうこぼす。

〈猫なんて。猫なんて。と、私はいつも、いぎたなく寝入っている猫を見つめながらつぶやいている。ほんとは飼いたくなんかないんだ。猫がいなかったらどんなにさっぱりした暮らしになるだろう〉

 評者のような、猫と暮らしたことのない身からすれば、こんな二匹との生活は特殊な事例に思えてしまうが、そうでもないらしい。著者は、猫話を多数書いている村上春樹の「あたり猫とスカ猫」という考えを披瀝する。

 「あたり猫」とは飼い甲斐のある猫。「スカ猫」とは手間がかかって仕方のない駄猫のことで、スカ猫にあたる確率のほうが高いようだ。ただ、あたりか外れかは、飼ってみないとわからないし、血統書が左右するものでもない。

 著者によると、村上春樹は「猫についてマジメに考えている」からこそ猫との巡り合わせという運命を「あたり猫とスカ猫」という概念で整理できた人物だ。

 翻って、猫について「マジメに考えない」とは、どういうことか。本書は、このあたりで飼い猫との悲喜こもごもという話から転調する。

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牛島 信 弁護士