「カラダを言葉で科学する」

「自分は何を間違ったか」が運動音痴脱出のカギ
〜運動はビジネススキルも向上させる

最先端科学で知る運動と脳−−柳原大・東京大学大学院情報学環・准教授(後編)

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2009年5月20日(水)

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 前編では、柳原大さんに運動を学習するとき脳で何が起きているかを伺った。運動には、脳内の“フィードフォワード”で行動プログラムが計画立案され、実行される必要がある。そのプログラムの精度がどうやら「運動上手」と「運動音痴」をわけるようだ。

 そして、精度向上に不可欠なのが「自分は何を間違ったか」という誤差情報だ。誤りを通じてしか、私たちは適正な運動を獲得できない。

 誤差を修正し、適正な行動を選択することは、何もスポーツに限った話ではなく、ビジネスシーンでも問われること。運動スキル向上の秘訣は、ビジネスに応用できるのかもしれない。

柳原大(やなぎはら・だい)

 1964年東京生まれ。大阪大学・助手、理化学研究所脳科学総合研究センター・研究員、豊橋技術科学大学・助教授を経て、現在、東京大学大学院情報学環・准教授。東京大学教養学部では「身体運動・健康科学実習」として主にテニスの実技を、また講義では「身体運動科学」「適応生命科学」などを担当している。専門は運動生理学、神経科学で、運動の制御、学習・記憶について遺伝子レベルから個体レベルまで対応付けながら研究している。

−−前編のお話では、人は最適な運動を行うにあたって、感覚フィードバックを使っているのではなく、あらかじめ目標値を決め、運動に落とし込む“フィードフォワード”の制御を行っているとのことでした。予測に基づく運動と実際の結果の誤差を修正する反復練習の中で、素早く滑らかな運動を可能にするプログラムができるようになる。運動音痴の解消は、運動プログラムを修正できるかどうか。つまりは脳の問題ということはわかりました。

 トレーニングを通じ、学習することが脳内の情報処理の精度向上に関わるとしても、毎日忙しく働くビジネスマンだとなかなか運動する機会がありません。たとえばイメージトレーニングで、運動プログラムを改編し、運動スキルを向上させることはできないものでしょうか?

柳原:基本的には実際に動作することがとても重要です。前編で述べたダーツ投げの実験のように、運動プログラムによって事前に作られる動作の予測と運動した結果の間に生じる誤差を比べる必要があるからです。曖昧なイメージでは、誤差の適確な修正は望めません。

 テニスであれば、打球音の違いやスィートスポットを外したときの違和感。野球ならバットから伝わってくる手の感覚といった、身体の感覚が重要で、それによっていわば運動の成功・失敗を評価しています。

 イチロー選手あるいはかつての王選手は、あれだけの超一流選手でありながら、毎日数多くの素振りをしていますね。ご本人たちに直接訊いたわけではないので妥当な解釈かどうかわかりませんが、脳科学的には、自分の身体のコンディショニング、とくに筋肉の現在の状態を適確に知覚し、さらにその状態に合わせてスイングを微調整するための素振りを行っているのかもしれません。

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著者プロフィール

尹雄大(ゆん・うんで)

ライター。1970年、神戸生まれ。「AERA」や「Number」などで執筆。〈考える高校生のためのサイト mammotv〉でインタビュアーを務める。著書に『FLOW 韓氏意拳の哲学』(冬弓舎)



このコラムについて

カラダを言葉で科学する

自分そのものともいえる「カラダ」とどう付き合っていけば快適な仕事生活を送れるのだろうか。様々な専門領域で活躍している研究者・エキスパートに、「ビジネスの日常にプラスとなるカラダの知恵」を授かるコラム。仕事のスキルアップはカラダを知ることから。

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