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ホーンテッド・マンションはなぜ面白い?~『「幽霊屋敷」の文化史』
加藤 耕一著(評者:朝山 実)

講談社現代新書、760円(税別)

2009年5月18日(月)

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評者の読了時間8時間00分

「幽霊屋敷」の文化史』 加藤 耕一著、講談社現代新書、760円(税別)

 口をあけて鏡をみると、闇がみえる。わたくしごとで恐縮だが、歯が抜けた。

 とれるんじゃないかなぁ、とれるんじゃないかなぁー。予感はあった。いやだなぁー、面倒だなぁー。前歯に指をあてるたび、ためいき。ぐらぐらまではいかないが、歯茎さんがちょっとゆるい。考えると、気持ちはうつうつうつ。

 が、ぽろっと抜けた。あっけなかった。息をするたび、スースーする。抜けた横っちょの歯に唇があたる感触が被虐的に新鮮で、揃っていたときには、歯の存在などこれっぽっちも意識してなかったのだと、わかる。鏡に映る、歯抜けのおっさんは間抜けている。さっそく歯医者に予約をいれた。いやだなぁー、いやだなぁーからおかげで解放された。いまとなっては、予感が名残惜しい。

 さて、本書だ。著者は、はじめに、こう綴っている。

〈本書は、世界でもっとも有名であり、またもっとも人びとから愛されているであろう、この特異な幽霊屋敷がヨーロッパからアメリカを経て東京に至る歴史的・文化的な背景を一つひとつたどりながら、その魅力を解き明かそうとの試みである〉

 著者は、東大の大学院を出た、建築学の研究者。1973年生まれ。冒頭から、東京ディズニーランドの「幽霊屋敷」ホーンテッド・マンションの構造ついて、40ページものボリュームを割いて綴られる。

 来場者を待ち受ける、あの天井が“伸びる部屋”は、どのような造りになっているのか。異様に長い廊下。なぜ、あのような複雑な設計にする必要があったのか。

 植物が生い茂った外観も妙だし、みるみるうちに年老いていく肖像画も手が込んでいる。これらの不思議を、熱っぽく、詳細に論じた「建築の本」はかつてなかっただろう。たかが遊園地の一施設などと甘くみていない。

 記述の仕方は、マジシャンが、同業者の苦心の種をあかそうとするのに近い。ディズニーからは協力を得られなかったのか、写真の代わりに、いくつもの図面が使われている。自分の目で、何度もたしかめながら、推理小説の探偵のように書き起こしたのがわかる。なにより、すごいのは、からくりがわかるほど、ホーンテッド・マンションに行きたくなることだ。

来場者は「幽霊」が見たいわけじゃない

 ホーンテッド・マンションは、いろんなモノから影響を受けている。たとえば、1963年に公開されたロバート・ワイズ監督の映画「ザ・ホーンティング」(邦題「たたり」)。

〈この映画のなかで、登場人物たちが幽霊の恐怖に怯え、肩を寄せ合っている部屋に、何者かが迫ってくるシーンがある。鍵をかけた扉のノブがガチャガチャと激しく揺さぶられ、それが開かないとなると、ドーンドーンという低く響く音を立てて扉に強烈な圧力がかかりだす。扉はゴムでできているかのように歪み、湾曲して、膨らむのである。CGなどなかった時代の、このシーンの迫力は特筆すべきものであるが、これがホーンテッド・マンションにも大きな影響を与えたといえるだろう〉

 映画では、幽霊がいっさい登場しない。恐怖をつくりだしているのは、ゴシックふうな屋敷である。しかも、スクリーンには恐怖の源として映るこの屋敷は、実際にみると、歴史を感じさせるものの、明るい印象を与える建築物だという。白黒フィルムが、建物を不気味な存在に変えたということだ。

 ここで著者は、観客が見たいのは「何かが起こる予感」だと指摘している。できごとそのものではなく、「予感」に期待を膨らませるのだ。

 もうひとつ、ホーンテッド・マンションに強い影響を与えたものとして、18世紀の英国における「廃墟ブーム」をあげている。

コメント1件コメント/レビュー

冒頭の稲川淳二風の書き出し、予測していなかったので大いにウケてしまいました。(2009/05/18)

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冒頭の稲川淳二風の書き出し、予測していなかったので大いにウケてしまいました。(2009/05/18)

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