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運送会社のバイトから『ぼくは猟師になった』
~獲物に刃を入れるとき、「現実」に裂け目がひらく

2009年5月20日(水)

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ぼくは猟師になった』 千松信也著、リトル・モア、1600円(税抜き)

 早春。まだ雪が残るブナの原生林を歩いていく。私の前をしっかりとした足取りで進むのは、40代半ばのマタギの頭領(シカリ)。私にとって、はじめての狩猟の現場だった。不安と緊張、そして、興奮が入り混じった複雑な気持ちのまま、足を進めていた。

 5年前、山形県と新潟県の県境にある村上市山熊田で、私はマタギの狩りにはじめて参加した。マタギとは、東日本の山々でクマなどの大型の野生動物を伝統的に狩猟してきた人々だ。

 約20戸ほどの小さな村である山熊田では、毎年春、クマの巻狩りが行われる。クマが棲む山奥の沢に20人ほどの勢子が散る。猟場を囲むように持ち場についた勢子は、「ホーイ、ホーイ」と叫び声をあげながら山を登っていく。人間の気配を察知して逃げようとするクマを沢の上で鉄砲を持った撃ち手が待ちかまえている。

 勢子として加わった巻狩りの体験が、私にいままで全く意識しなかった事実を突きつけてきた。

 食べるために動物を殺す――。

 マタギたちとの出会いをきっかけに私は、狩猟や捕鯨など野生動物と人間が対峙する現場に足を運ぶようになった。

現代が忘れてしまった動物の死

 本書は、猟師として生きる千松信也さんの手記である。私は、1974年生まれの千松さんとほぼ同世代だ。猟師という生き方を選んだ同世代の青年に興味を持ち、本書を手に取った。

 千松さんは、代々、猟師の家系の家に生まれたのでも、マタギの集落で育ったわけでもない。

 ごく普通の少年時代の回想から本書はスタートする。兵庫県伊丹市の「オケラやミミズ、カマキリやバッタ、ヤゴ、カブトエビなど、季節ごとにいろんな生き物」がいる田畑が残る町のなかの田舎でのびのびと育った千松少年は、動物が好きになる。大学に進学した千松さんは、アルバイト先の運送会社で猟師に出会う。彼は、ワナ猟歴35年の大ベテランだった。千松さんは、運送会社で働きながら、猟を学び、狩猟免許を取り、猟師としての第一歩を踏み出す。

 千松さんの歩みとともに、シカやイノシシの捕獲方法や解体の過程、罠の構造などをイラストや写真を用いて、具体的に解説していく。

 例えば、千松さんが使う「ククリワナ」は、一本のワイヤーでできている。片方を木に結びつけ、もう一方は、輪っか状にして獣道に置く。動物の足が輪っかに入った瞬間、締まる仕掛けになっている。ワナを置くとき自分の匂いをいかに消すか。動物の痕跡をどう見つけるか。獲物によって異なる解体手順や調理方法……。

 読了後、伝わってくるのは、野生動物を捕獲して解体する難しさだ。そして、動物の死を忘れてしまっている現代の暮らしである。

 私自身、日常生活のなかで動物を殺して食べていると意識する瞬間はほとんどなかった。だからこそ、はじめての獲物を前にした千松さんの気持ちの揺らぎに引き込まれた。

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