「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明」

食べて痩せるダイエットと、「エコポイント」の共通点

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2009年5月25日(月)

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 エコポイント制度がスタートした。
 ITプラスでは、このように紹介されている。

 なるほど。

 エコという名前からして、主導しているのは環境省なのであろうと思ったら、どうやら違う。

 肝いりはあくまでも経済産業省。これに総務省が地デジ普及の思惑から一枚噛んでいる形だ。

 環境省は?

 まあ、アレだね。名前を使われただけ。アリバイ提供。飲み会の名目に誕生日を使われる若手社員みたいなものだ。

「あ、今晩遅くなるから。ほら、2課のヤマグチね。今日はアイツの誕生日でさ。オレらでひとつパァーっとやることになったわけ。総務のOLさんたちも混ぜて」
「ヤマグチさん? 聞いたことないけど」
「ま、話題にのぼるような男じゃないし。逆にそういうふうに地味なヤツだから、みんなで祝って盛り上げてやらないといけないわけだよ。営業部的には」

 バラ撒きでもハコモノでも、昨今は、エコがらみのイクスキューズを錦の御旗にしておかないと話が通りにくい、と、おそらくはそれだけの話だ。一種のエコ偽装ですよ。

 環境省は、被害者ですらある。

 というのも、突然始まったエコポイントのおかげで、環境省が以前から推し進めようとしていた「エコ・アクション・ポイント」が置いてけぼりを食らった形になっているからだ。

 エコ・アクション・ポイントについては、このリンクを踏んでみてほしい。事情を読み取ることができるはずだ。

 なにしろ、ロゴマークが悲しい。あるいは、ロゴマークというよりも、地デジカと同じ「推進キャラ」という立ち位置なのかもしれない。でも、名前も背景も与えられていない。そこにいるというだけ。予算不足のお座なりキャラ。どことなくクマっぽいたたずまい。丸い耳。どう突っ込んで良いのやらわからない。

 目と口は、それぞれ、「エコ・アクション・ポイント」の頭文字である「e・a・p」になっている。
 可愛いと言えば可愛い。特に「p」の口が。棒の部分がよだれっぽい。左右不均等な涙目(e,a)も同情を誘う。

 私は「よだれ熊」と名付けた。

 飢えた子熊みたいに見えるからだ。たぶん親熊にネグレクトされている。環境省と同じ。経産省あたりから継子扱いを受けてしょげている……そういう絵に見える。ぜひリンク先のイラストをみてあげてほしい。できれば、アナロ熊の時みたいにテーマソングを作ってやってくれるとうれしい。まあ、私がねだる筋合いの話ではないのだが。

「エコ・アクション・ポイントとは、消費者による温暖化対策型の商品・サービスの購入や省エネ行動を経済的インセンティブを付与することにより誘導する仕組みです!」

 と、環境省のHPは、語尾に「!」(エクスクラメーションマーク)を置いて、強い言葉で説明している。女子アナ文体。意気込みが伝わってくる。

 で、さらに、上記の一文のすぐ下に、枠で囲ったカタチで、以下の補足説明を加えている。

「エコ・アクション・ポイントは、国民のみなさまが温暖化対策型の商品やサービスを購入する際などに付与されます。貯まったポイントで、様々な商品・サービスとの交換や、その他のポイントや電子マネーとの交換などができます。」

 いじらしい文体。
 でも、これ、エコポイントとどこが違うんだろう。区別がつかないぞ。

 けなげな環境省は、さらに解説を重ねる。
《「エコポイントの活用によるグリーン家電普及促進事業」については、本モデル事業とは異なります。》
 と、赤い字(巨大フォント)で注意を促し、さらに

《 →詳しくはこちらをご覧ください。》

 と、アンダーライン付きの文言でリンク先を明示している。

 リンク先の文章がまた切ない。

「エコポイントの活用によるグリーン家電普及促進事業の実施について」
 と題するテキストの冒頭で、環境省はふたたび
 
《本事業は、環境省が単独で推進しているエコ・アクション・ポイントモデル事業とは異なります。》

 と明言している。うむ。行間に無念さがにじみ出ている。弱小官庁の悲哀。アリバイ機関の弱腰。出来星の限界。新参部局の右顧左眄。

 で、ひととおり経過説明をした後、「よくある質問」に対してのQ&Aを付け加えている。

 世話女房型官庁らしい親切さ。素晴らしい。
 でも、そのQ&Aがヤブヘビになっている。

Q3 まだ使える家電製品を買い換えることは環境保全に反するのではないでしょうか。

Q10 エコポイントはどのような商品と交換できるのですか。

 この二つの質問は、回答者にとってどうにも苦しい。

 ちなみにQ3への答えはこれ。

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著者プロフィール

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

小田嶋 隆

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、小学校事務員見習い、ラジオ局ADなどを経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。近著に『人はなぜ学歴にこだわるのか』(光文社知恵の森文庫)、『イン・ヒズ・オウン・サイト』(朝日新聞社)、『9条どうでしょう』(共著、毎日新聞社)、『テレビ標本箱』(中公新書ラクレ)、『サッカーの上の雲』(駒草出版)『1984年のビーンボール』(駒草出版)などがある。 ミシマ社のウェブサイトで「小田嶋隆のコラム道」も連載開始。



このコラムについて

小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明

「ピース・オブ・ケイク(a piece of cake)」は、英語のイディオムで、「ケーキの一片」、転じて「たやすいこと」「取るに足らない出来事」「チョロい仕事」ぐらいを意味している(らしい)。当欄は、世間に転がっている言葉を拾い上げて、かぶりつく試みだ。ケーキを食べるみたいに無思慮に、だ。で、咀嚼嚥下消化排泄のうえ栄養になれば上出来、食中毒で倒れるのも、まあ人生の勉強、と、基本的には前のめりの姿勢で臨む所存です。よろしくお願いします。

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