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臓物から学ぶ反骨イズム

解剖学がひもとく腸の賢さ~藤田恒夫・新潟大学名誉教授(後編)

2009年6月3日(水)

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 脳がもたらすストレスの影響を受けやすい胃や大腸と違い、小腸は脳からの命令を受けず、体内で“独立国”の地位を確保している。

 前編では、とかく脳を中心とした身体観を当然としがちな傾向に“待った”をかけるような、小腸の独自性についての説明を藤田恒夫さんにしていただいた。

 藤田さんは、脳とは独立して小腸でセンサー機能を果たす“パラニューロン”を指して「草の根の細胞があってこその生命活動」と話す。後編では、体内で周縁扱いされる小腸の役割をビジネスや東京一極集中になぞらえうかがった。

藤田 恒夫(ふじた つねお)

 1929年東京生まれ。54年東京大学医学部卒業、59年同大学院修了後、新潟大学医学部教授を経て、現在同大学名誉教授。科学雑誌『ミクロスコピア』編集長。著書に『腸は考える』(岩波書店刊)、『鍋のなかの解剖学』(風人社刊)など。

--前編では、小腸は脳のコントロールなしに消化・吸収の活動をするだけでなく、毒物からからだを守り、ときに脳に命令を発したりするなど、生命活動に欠かせない働きをしているというお話でした。単純な細胞の組み合わせが複雑な生命のふるまいを作り出しているから不思議ですね。

藤田:私たち科学者が生命科学を研究し続けているのは、まさにその謎があるからです。肉眼で見える消化管の動きも不思議ですが、細胞は絶妙な形と組み合わせではたらき、刺激を受けとる分子(受容体)や命令(ホルモン)の分子レベルにいたるまで、なんともいえない上手な積み木細工のような働きが存在しています。しかも、すべてが合理的に目的にかなっているように見える。

 ダーウィンの進化論は、環境に適した生物だけがうまく生きてきたと説明するけれど、ランダムに生じる突然変異を自然が選択するだけで、これほど複雑で完全な生物体ができるということは、説明困難ですね。他の生物との合体・共生とか、遺伝子の交換とか変換とか、いろんな現象は発見されていますが、何か突破口になる学説が待望されるように思います。

 進化論が誕生する前、科学者は古い地層に妙な生物の化石を見つけるようになり、一方、地球上の生物はあまりに多様でどうもキリスト教の「天地創造」説では説明できないと思うようになっていました。

 今日では進化論が一応、生物のしくみを説明する回答になっているけれど、腸の複雑なしくみを見るにつけても、それだけで説明がつかないことがあまりに多いような気になってきます。

人間を機械になぞらえる発想は何がまずいか

--ところで、生体のしくみの複雑さに驚嘆してきましたが、反対に生体システムを合理的だからといって単純に考え、ときに短絡的にとらえてしまう傾向もあるようです。たとえば、口から栄養を取らなくても、血管に直接注入すればいいというような発想です。こういう考えの問題点はどういうところにありますか?

藤田:病気などの理由で胃や腸に直接管を入れたり、静脈からチューブを通じて栄養を注入したりすることもあります。栄養を与えられるということだけを考えれば、確かにそれだけで患者は生きられます。

 だからといって、栄養は血管から注入したほうが合理的という話にはなりません。小腸のセンサー細胞は腸内に到来する物質を感じ、10種類以上ものホルモンを分泌します。それらのホルモンは胃酸や膵臓の酵素などを放出させるだけでなく、胃の壁を厚く保ち、膵臓などの消化器官をそれなりの形と大きさに維持する作用もあります。

 つまり口から食べ物を摂取することは、小腸に関係する臓器を機能させるだけでなく、それぞれの臓器の維持・成育にも関わっています。実際、血液から栄養をとっていては、小腸のセンサー細胞が物質に触れないため、ホルモンが分泌されず、そのことで膵臓も肝臓も胆嚢も弱まってきます。胃と腸の壁も紙のように薄くなる。だから口から食物を取るのは、とても重要なことなのです。

コメント1件コメント/レビュー

もう20年近く前になるでしょうか、藤田先生の“腸は考える”を読ませていただいたことがあります。そして、今回改めて腸の働き、パラニューロンとセンサー細胞の機能についてのお話、人間の健康と身体について考える場合の視点の重要さを教えていただきました。脳科学全盛というような雰囲気の中で、神経の働きだけではない身体各臓器の相互関係と生体調節機構のあり方を理解することは、健康生活、健康問題について考えていく上では忘れてならないことだと知らされました。独自の機能と相互の関係があってこそ全体が成り立つという立場からすれば、ストレスという問題にしても心の働きだけからの発想ではなくそれを受け止める生体の働き全体を見渡すような考え方で、対応していくべきだろうと思った次第です。ありがとうございました。(2009/08/06)

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いただいたコメント

もう20年近く前になるでしょうか、藤田先生の“腸は考える”を読ませていただいたことがあります。そして、今回改めて腸の働き、パラニューロンとセンサー細胞の機能についてのお話、人間の健康と身体について考える場合の視点の重要さを教えていただきました。脳科学全盛というような雰囲気の中で、神経の働きだけではない身体各臓器の相互関係と生体調節機構のあり方を理解することは、健康生活、健康問題について考えていく上では忘れてならないことだと知らされました。独自の機能と相互の関係があってこそ全体が成り立つという立場からすれば、ストレスという問題にしても心の働きだけからの発想ではなくそれを受け止める生体の働き全体を見渡すような考え方で、対応していくべきだろうと思った次第です。ありがとうございました。(2009/08/06)

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三品 和広 神戸大学教授