「おたがいさまの店選び」

「3つの基本的お約束」がわかっていないお店

【客に悪い店・ケース01】

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2009年5月27日(水)

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 本連載開始時にお約束したように、今回は攻守が入れ替わり「店に悪い客」から、「客に悪い店」へと替ります。お客さんにとって、店の良し悪しの判断基準は人それぞれ。味、値段、サービス、コストパフォーマンス・・・・など、百人いれば百人違う意見があると思いますが、ここではごくごく基本的な店側の問題点を挙げてみました。飲食店を営んでいらっしゃる方の中には、異論を唱えられる方もおられることでしょう。が、しかし、こういったお店が増えているのも事実です。

 とにかくお店に入って注文をした。そのあと、その店がまともな店かどうか、すぐに分かる基準があります。それが以下の3つの項目。

1. 席を自由に選ばせる
2. 抜栓ものと、最初の飲み物は5分以内
3. 順番厳守

 この基本中の基本である1〜3の項目がおざなりの店に当たって、「キレてしまった」という経験をお持ちの方、心当たりの方、いらっしゃいませんか? 奥さんや娘さんが、「お父さん、そんなに怒らないで」と言っている姿を目にしたことがありませんか? あの気分です。

 人間歳をとるほど短気になるといいますが、年齢如何を問わず、どんなお客さんに対しても最低限守らなければならないのが1〜3のルールです。このルールを無視されると、短気なお客さんは瞬時に、気長なお客でもちょっと時間をおいてからブチ切れるわけです。

 順を追ってご説明しましょう。

 まず1の「席を自由に選ばせる」ということは、お客さんに対して基本中の基本です。予約が入っているテーブルは別としても、できる限りお客さんの希望する場所に案内してあげるのが、飲食店として最低限度のマナーなのです。

 お客さんは誰でも、できるだけ広いスペースに席を取りたがります。2人であれば4人テーブルに、4人であれば6人テーブルという具合に、少しでも余裕のあるスペースで食事をしたい、飲みたいと思うものです。窓があれば窓際に、テラスが開け放れていればテラス席に・・・・と。とはいっても、常識を備えたお客さんならば、間違っても勝手に広めのテーブルに腰を下ろすようなことはしないでしょうし、とんでもないワガママなリクエストもしないはずです。

 要するに、席がほとんど埋まっていない暇な状況の場合、店側は可能な限り、良い条件のテーブルに案内してあげるのが、飲食サービスの基本中の基本なのです。

なぜこのお店は、そんな席にお客を座らせたいのか?

 それなのに、店内に誰一人お客さんがいない状況で、とんでもない席に案内された経験がある方々も多いのではないでしょうか。本来ならば「どうぞ、お好きな席に」と、案内してしかるべきなのに、「こんなに空いているのに、よりによって、なんでこんなテーブルに」という席に案内する店。その感覚は問題です。

 トイレの横、出入り口のそば、デシャップ(料理が厨房からあがってくる場所、もしくは皿を下げる場所)の脇・・・・などなど。その場その場で状況判断できる熟練のホールスタッフがいない(アルバイトが多い)、そもそも、そういった従業員教育をしていない、ということも原因ではあります。

 しかし、店によっては「空いているときはこうしろ」と指導をしているところもあります。

1.通行人からよく見える場所に案内する。
2.奥に席がある場合、入口周辺に案内する。
3.ホールの目が届き易い場所に案内する。

 1と2の理由は、お客が誰も入っていない店は入りたくない、というお客の心理がわかっているがゆえに、人目に付く場所にお客を配置したい。いわゆる客寄せパンダ的な手法。

 3は、ホールスタッフが少ない場合(人件費削減、もしくはシフトの問題)、少人数で(キッチンからも見える)ホールを回すために、目が届く場所に客を配置したいから。

 ・・・というように、いずれも店側の営業上の理由から、お客には好きな席を選ばせてくれない、といったことが起こります。

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著者プロフィール

吉野 信吾(よしの・しんご)

 1958年生まれ。雑誌「POPEYE」の編集者を経て、商業施設や飲食店舗の設計プロデュースを数多く手がける。店舗の投資計画から設計、メニュー開発、プロモーション計画と実施、また運営、経営までの一貫した業務経験が豊富で、自らの多彩なマスコミネットワークを駆使したプロモーションに定評がある。現存する店舗としては」150坪の日本最大のメキシカンレストラン、原宿「ラ・フォンダ・デ・ラ・マドゥルガーダ、400種類のテキーラを誇る50坪のテキーラ専門バー、六本木「アガベ」、昭和レトロ、住宅酒場の火付け役となった麻布十番「ラッキー酒場」など。「広報会議」に「小さなお店の広報術」を連載執筆中。マガジンハウス『もったいない』、日経BP『流行る店』、祥伝社『金欠力』、その他、著書多数。

ロドリゲス 井之介(ろどりげす・いのすけ)

 大学在学中に小学館ヤングサンデーにてデビュー。代表作はテレビドラマにもなった『独身3』、『係長ブルース』など。現在は小学館ビックコミックスペリオールにて、『世界の中心でくだをまく(仮)』ケータイまんが王国にて、『熟恋(うれこい)』などを連載中。



このコラムについて

おたがいさまの店選び

 野球やアメリカン・フットボールでも、攻撃が終了すると、それまで攻撃していた側が、一転して防御に回ります。互いに攻守につくことによって、ゲームが成り立つばかりでなく、お互いの難しさを知るとも言えます。
 本コラムは、まさにこれと同様で、これまでお客の意見、グルメライターのコメント、店の格付け、といった利用する側の目線で一方的にやられっぱなしだった店側に、今度は少しばかり攻撃の順番が回ってきたとお考えください。「お客さんに立場があるのであれば、お店の立場というものもあるんです」というわけです。
 お客自身も、お店の言い分や理屈を理解することで、これまで以上の良い関係を築くことができるのではないでしょうか。また、お店にも「客に良い店とは? 悪い店とは?」を、これまで以上に知っていただくことで、互いの理屈と立場に歩み寄ることが可能になるのではないでしょうか。そうすることで「店に良い客 客に良い店」という末永い関係ができるわけです。
 長年マスメディアに関わり続け、店舗の設計、プロデュース、メニュー開発、経営という実際に両者の立場を経験してきた私にとって、それぞれの言い分が理解できるからこそ、本コラムはお客の立場である読者の皆さんの役に必ず立つと信じています。

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