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奇怪で健やかな「阿修羅像」の魅力

煩悩というストレスから解放される仏像考

  • 松島 駿二郎

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2009年5月29日(金)

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 東京国立博物館で開催されている「興福寺創建1300年記念『国宝 阿修羅展』」が人気だ。平日でも会場は押すな押すなの大盛況だという。休日なら何時間も待たなければ見られないという話もある。なぜこれほど「阿修羅像」は人気なのだろうか。また、「阿修羅像」人気はどこでどうして生まれたのだろうか。

名文で巡る阿修羅 天平の国宝仏』青草書房 1800円(税別)

 阿修羅の語尾「修羅」はあまりよい意味では使われていない。修羅場、修羅の巷、修羅物などという言い方が定着している。

 この阿修羅像は三面六臂という、常人を超えた姿で立つ。阿修羅は釈迦以前のバラモン教の登場神であって、釈迦をさんざん苦しめた後に仏法に帰依し、釈迦を守護するようになった。

 この度、東京国立博物館で展示されている阿修羅は、菩薩を守護する十大弟子のひとつ。菩薩を安置していた興福寺の西金堂は、たびたび火災に見舞われている。ところが阿修羅は火災のたびに持ち出され難を逃れてきた。

 阿修羅像は当時の作像技術の中でも、脱活乾漆造という特殊で手間のかかる方法で作製されている。まず、粘土であらかたの形を作り、麻布で巻いて、その上に漆を何重にも塗り重ねていく。最後に内部の土を取り除く。その結果、重い素材は少しもないとても軽い仏像となる。

 すわ、火事だといった時、ご本尊は重たくて動かせないが、乾漆の阿修羅は軽いのでひょいと持ち出せた。おかげで、本堂が焼失するような大火事にも、阿修羅はどっこい生き残ったのだった。

 ところで、阿修羅とはサンスクリット語のアスラを音写したもので、天に対抗する悪魔の代表だと言われてきた。天(ディーヴァ)でないもの、しかし、回心すると、この上なく釈迦の教えの布教に精進するようになるものとして捉えられる。

 ではここで、本書のタイトル通り名文で巡る阿修羅像の一文を紹介しよう。まず、戦前、戦中、戦後の名高い思想家、亀井勝一郎の『人間教育』から。

私はここで一つの奇怪な像について語っておこう。
興福寺八部衆立像のうちの阿修羅像である。
腕が六本、顔が三つというグロテスクな姿にもかかわらず、他のどの立像よりも人間的な感じを与えるのには驚嘆した。
(中略)顔の部分には多少の亀裂があるが、すばらしい美少年であることがわかるふくよかな頬と厚い唇をもち、眉毛は神経質に震え、著しく近代的な容貌だ。(中略)抱擁を待つばかりの生々しい肉体、健やかな青春の肉体という感じを受ける

 奇怪であるが健やか、その表現は阿修羅の原初の悪魔性によるのであろう。三面と六臂の縺れ合いは、行為と思考の多様性を表し、観念と行為の錯乱を示している。

 亀井は阿修羅を前にして懐旧の念にとらわれる。

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