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「一流の人」とあなたの差はここに出る~『思考・発想にパソコンを使うな』
増田 剛己著(評者:朝山 実)

幻冬舎新書、780円(税別)

2009年6月2日(火)

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評者の読了時間3時間00分

思考・発想にパソコンを使うな──「知」の手書きノートづくり』 増田 剛己著、幻冬舎新書、780円(税別)

 取材をするときにワタシはボールペンを手にするものの、ノートは広げたままだ。

「ぜんぜんノートをとらないんですね?」

 取材相手や編集者から、不思議がられることがある。たまに、ふにゃふにゃとメモすることはあるが、インタビューとは関係のない相手のしぐさ、よく頬杖をつくけど右の手でつく比率はどれぐらいだとか、タバコの吸殻の折れ曲がりかげんだとか、およそ話のながれからしたらどうでもいいことを小さい字で書きとめていることが多い。

 よくこんなので仕事しているな、と自慢していいくらい記憶力は最悪だ。だから会う前にノートは、予習の質問やメモの類で、スキマなく埋まっている。

 ノートをとらないのではない。のろくてとれないのが、しいていえばとらない理由である。インタビュー中は録音機を使い、あとでテープ起こしをしているというと、きまって言われる。

「それって、手間でしょう」

「そうね、語尾にいたるまでベタで文字に起すことが多いから、取材した時間の2倍から3倍は文字起こしにかけているかな」

 15年ちかく続けているが、ひとから感心はされることはあっても、自分もまねしてみようなんて反応にでくわすことはない。ただひとりだけ、同病相哀れむ顔をして、ニヒヒとわらったひとがいた。永沢光雄さんだった。

 永沢さんは、代表作である『AV女優』というインタビュー集を執筆する際、ひとりにつき4~5時間、話を聞くなんてザラだったという。

 しかも、ワープロを使わず、相手がしゃべったまんまを書き起こす。深夜に腕はしびれてくるし、女の子たちの身の上話には、親に捨てられたり虐待を受けたり、人がよすぎてダマされてきたなどシンドイ話がいっぱいで、無口な相手だと自分のほうがつなぎにどうでもいい話をしている。そんなテープを聞きなおすのはツライ。

 対面恐怖もあり、インタビューは酒の力を借りていた。へらへらと質問する自分に嫌悪をもよおし、嘔吐しそうになったこともある。それでも、ひとりに大学ノートを一冊は使い切るのがならわしだとか、そんな話しをしていた。

 文字はひとをあらわすといわれるが、永沢さんの文字は、なで肩のやわらかいものだった。

小津安二郎は同じ日記を5冊も書いた

 さて、本書はノートのすすめである。著者は、手帳やメモの活用術の本を数多く出してきたフリーライター。パソコンに頼りすぎるのはよくない。中村俊輔から漱石まで、古今各界一流の人たちは、みなさんこんなぐあいにノートを使っていますよと声をかける。

 第二章の〈かの著名人たちは、こんな「ノート」をつくっていた〉がけっこう読ませる。

 変り種は、映画監督の小津安二郎の日記である。どこそこに行った、誰がやって来たということを一行、二行書き込んだ、それじたいは特色のないシロモノ。しかし、同じ内容の日記帳が何冊もあった。多いときには5冊も存在したという。

 どうやら小津さんは日記を書き写していたらしい。なぜそんなことをしていたのか。

 著者は、テレビドラマの演出家だった鴨下信一氏の『面白すぎる日記たち──逆説的日本語読本』にこんな文章を発見する。孫引きすると、

「これは〈本直し〉、脚本の改訂作業とひどく似ている。本直しは同じところを何べんも書き直す。小津の日記の書きかえは〈本直し〉のクセが日記に出たのだ」

 同じに思える日記だが、見比べるとすこしずつ簡潔になっているという。

 役者の台詞の一言一句にこだわりアドリブを禁じたという演出術とあいまって、小津安二郎という人物を印象付けるエピソードだが、あの小津がやっていたんだからオレも……とトライする人はそうそういないだろう。一流の人ほど、モノを習得するにはムダなことをしているという一例であって、日記5冊はあくまでもクセ。〈我流〉な作法というものである。

 小津さんほどではないにしても、伊丹十三のノートの取り方も変わっている。

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