(前編から読む)
フェルディナント・ヤマグチ(以下F):インサイト、新型プリウスと、ハイブリッド車の出足は絶好調ですが、これからハイブリッドは、クルマ全体の中でどれくらい売れていくのでしょう?
インサイトLPL、関 康成(以下関):昨年の国内の新車販売台数は、軽自動車までひっくるめて500万台をちょっと超えたところです。その中でハイブリッドは10万台しか売れていない。全部合わせて。
F:500万台のうちの10万台ということは……
関:2%ちょっとのシェアです。我々は2006年の初頭から商品企画を始めていますが、2005年の断面で言うと、ハイブリッドはたったの1%です。
F:2005年で1%。
関:そうです。新車の中のハイブリッドで。2005年当時はアメリカでもシビックハイブリッドが結構売れて、もちろんプリウスも売れて、それでも3.5%です。
F:2005年は日本よりもアメリカの方が売れていた! それは驚きです。今はどうなんでしょう?
関:基本、今でもそうです。全体数は下がっていますが、比率はむしろ増えています。今アメリカは5%近くまでいっているんじゃないかな。
F:ホンダとトヨタしか供給できていないでしょう? サターンも“なんちゃってハイブリッド”があるけれど、物の数では無いし……。
関:はい。それだけプリウスがいっぱい売れているということです。
F:そういえばアメリカではディカプリオも買いましたね、プリウス。
関:そうそう。ディカプリオが7台買ったと。7色あって、毎日違う色に乗ると。
F:全然エコじゃないですねそれ(笑)。
関:確かにエコじゃない(笑)。ですから、まだまだ非常にマイノリティーなんですよ、ハイブリッドって。プリウスという名前は誰もが知っているけれど、残念ながらインサイトという名前は今までほとんど知られていなかった。
F:お借りしていた広報車を洗車してお返しするとき、六本木のガソリンスタンドに寄ったんですね。珍しかったみたいで、バイトの兄さんと店長さんらしき人が寄ってきて、お客さん、これホンダのプリウスだよねぇという。“ロッテリアのマックシェイク”ぐらいのことを言われてしまって。ホンダ本社に徒歩圏内の場所で商売する方が、ホンダのプリウスと言ってしまうほど、プリウスの名前が強いんですね。
結局、プリウスしか売れていなかった
関:結局それしか売れていなかったんです。昨年10万台ハイブリッドが売れたと言ったって、そのうちの7割がプリウスだった。トヨタさんもあれだけたくさんハイブリッドをラインナップしているけれど、結局売れているのはプリウスしかない。
F:この辺りはマーケティングの話だと思うんですが、先ほどおっしゃったプロダクトアウトではなくて、マーケットインというお話。ハイブリッドを買う顧客の購入動機とかクルマに対する考え方を関さんはどのように分析されていますか?

関:少ないながらもアメリカで昔のインサイトを買ってくれた人たちは、学者とか教授とかインテリジェンスの高い人たちが多かった。そうしたごく一部の環境志向層ばかり。ハイブリッド自体は誰もが知っているんだけど、じゃあ、何で買わないのと聞くと、高いから、と。
ハイブリッドのイメージを聞くと、環境にいい、燃費がいい、そういう良いイメージだけれども、高いから購入を躊躇してしまう。実は企画の段階で福井社長からは値段を200万円以下にしろと言われていました。もしもベースに既存のガソリン車があったとすると、ハイブリッド車は20万円高ぐらいでないとお客様は買ってくれないよ、と。
F:ユーザーの感覚としては、それくらいが適当な値段ではないでしょうか。作る方からしてみると、非常に厳しいでしょうが。同一車種のハイブリッドで50万高、というと引いてしまいますね。
関:そのときにちょうど、2005年に東京モーターショーがありました。お客様にインタビューすると、半分の人が210万円、200万円以下なら買いたい、と。また既存ガソリン車ベースでいくら高なら買って下さるかと聞くと、もちろん同価格が一番多くて、10万、20万、30万高と上げていくと徐々に減ってきてしまう。買う買わないの価格分岐点がおおよそ25万円からせいぜい30万円という結果が出ました。
今は、専用車だから買ってもらえる
F:お客さんが車両価格と燃費を勘案した結果の数字ではないですか。興味深いですね。二代目プリウスまでは家庭用太陽電池パネルみたいなもので、よほど手厚い政府保証でも受けない限り、車両価格と維持費を鑑みると普通のご家庭ユースで絶対にチャラになんかならなかった。インサイトの登場で、本当の意味でチャラのクルマが出てきた、と。
関:それともう1つ。プリウスを買っているお客様に聞くと、燃費、維持費、環境の他に、わりと心をくすぐっているのが“専用の車”だという事です。
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