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で、民主党でほんとに大丈夫なのか?~『政権交代論』
山口 二郎著(評者:山岡 淳一郎)

岩波新書、780円(税別)

  • 山岡 淳一郎

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2009年6月3日(水)

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政権交代論』 山口 二郎著、岩波新書、780円(税別)

 バクゼンと「政権交代したほうがいい」と感じている人は多いだろう。

 「小さな政府」を至上命題として規制緩和、市場開放路線を突っ走った小泉政権の負の遺産(医療崩壊、貧困の固定化、地方と中小企業の衰え、公教育の質の低下など)を清算するのは、小泉純一郎という「勝ち馬」に乗ってきた自民党には無理だろうとわたしは思う。自民党は、反小泉路線を明確に掲げた瞬間、変節漢の集団になってしまうからだ。

 しかし、現実にはリーマンショック後、小泉流の新自由主義は破綻した。「小さな政府」の権化だった米国にオバマ政権が誕生し、凄まじい財政出動をしている。この半年で、世界は変わった。

 日本は、環境や資源対策を前面に出した産業政策と、食糧と国土の安全保障に係わる農林水産業、人的資産を支える医療、介護、教育などの分野に集中的に資本投下し、社会の底力を鍛える段階にあると思うが、117億円もの「アニメ美術館」(お台場)建設費用を今年度補正予算に計上するなど、麻生政権はピンボケ状態である。自分の趣味でハコモノを造るのは、晩年にさしかかった政治家がよくやるパターンだ。

 なので、政権交代、と言いたいのだが……反射的に「民主党でほんとに大丈夫なのか」と懐疑の念も膨らむ。憲法、経済、社会保障、外交、どれをとっても民主党がまとまっているとはいえない。民主党が政権を取れば、「政党再編」は必須だろう。

 その結果、米国の共和党と民主党、英国の保守党と労働党のように政策の違いが対立軸として見える二大政党が生まれるのか、それとも烏合の小党分立となるのか……。

 本書は、著者が小沢体制での民主党への政権交代を支援した政治学者であることを割り引いても、頭を整理するのには、恰好のテキストだった。

「選ばれた独裁制」が社会を閉塞させる

 そもそも政権交代は、なぜ必要なのか? 一般には長期化した政権は腐敗し、官僚組織と一体化して暴走しがちになるので、それを防ぐため、といわれる。

 著者は、日本や英国のように下院(衆議院)で多数を占めた政党が内閣を組織する「議院内閣制」では、与党に立法と行政の権力が融合し、権力分立が働きにくいと記す。英国では〈議院内閣制がしばしば「選ばれた独裁制(elected dictatorship)」に陥ると言われている〉と紹介したうえで、本来、政党間で中立でなければいけない官僚機構をチェックするためにも政権交代が必要だと説く。

〈一九五五年以降の日本の場合、本格的な政権交代を経験していないので、官僚機構が異なった政治指導者に従順かどうかという意味での中立性が試されたことはほとんどない。しかし、官僚機構が自民党の持つ政治的志向性を内面化し、それを維持するために権力を振うという意味で中立性を自ら否定することは起こりうる〉

 わかりやすく言えば、官僚は自民党の族議員のもとには「ご説明」と称して、情報をせっせと届けにいくが、野党議員に対しては「呼ばれたら行く」程度である。明らかに自民党の「政治的志向性」に忠実だ。この自民党よりの権力意識は、検察や警察などが「権力を振う」とき、市民との衝突をも招くという。

〈……同じデモ行進でも、その主張の中身に応じて、戦争反対や貧困に抗議するといった現政権に批判的な運動であれば、厳しく規制されしばしば逮捕者が出る一方、燃油の高騰に抗議する漁民のデモのように自民党の支持者によるデモ行進は放任される〉

 著者は、日本流の「選ばれた独裁制」を批判しつつ、〈政権交代がない状態が当たり前となれば、その社会は社会主義国のように閉塞していく〉と警鐘を鳴らす。

 ここで「西松問題」が、ふと頭をよぎる。話はそれるが、考えてみてほしい。東京地検特捜部は、ある種の内部告発をきっかけに政治資金規正法違反(虚偽記載など)で小沢前民主党代表の公設秘書を逮捕、起訴した。検察の捜査は、政権をめぐる権力闘争と無縁といえるだろうか。この捜査には、いくつもの疑問符がつけられている。

 まず、本件は裏献金ではなく、政治団体からの寄付の事実が収支報告書に記載されている点。政治資金規正法で収支報告書への記載が求められているのは寄付行為者であり、資金の拠出者ではない。秘書がカネの出所が西松建設と知っていたからといって、それだけで「違反」と決めつけられるのか。

 違反とされても、罰則を適用するほど「悪質」かどうかは意見の分かれるところだ。同じ政治団体から多くの自民党議員にもカネは渡っており、収支報告書には西松建設が団体の所在地になっていた例もあったという。これを意識してか、漆間官房副長官は「自民党側は立件できない」といち早く予防線を張った。政治団体と西松建設が「一体」だったことは、政界では「周知の事実」ととらえる関係者も少なくない。公然の秘密を法律どおり処理していたとしたら、その悪質性をどう問うのか?

 今回の捜査は検察OBからも「検察の横暴」や「見込み違い」を指摘する声が上がっている。小沢前代表は、かねがね政権を取ったら与党議員を100人以上、行政府に入れると主張していた。そこには当然、検察も含まれる。民主党が政権を取れば、霞ヶ関に激震が走りそうだ。検察官僚に組織防衛の本能が働いたとしても不思議ではない。官僚にとっても、政権交代は驚天動地なのである。

 話を本題に戻そう。著者は英米の政権交代を解説し、1955年以降、なぜ日本に本格的な政権交代がないのか、と問いかける。

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