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若い子にモテたつもりで、『蒲団』に突っ伏して泣かないために
~「尊敬」を「恋愛」と取り違えた男の悲喜劇

  • 古川 琢也

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2009年6月3日(水)

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蒲団・重右衛門の最後』 田山花袋著、新潮文庫、362円(税抜き)

 昨年末、新聞にあるセクハラ訴訟の記事が載った。琉球大学の教授が、元教え子の女性から関係を強要したとして1150万円の慰謝料を求められた裁判である。最終的に、和解金を払うことになった教授のコメントが哀しかった。「女性と交際していたと認識していたが、訴訟を通じて、自分との関係は女性の意に沿わないものだったことを理解した」と述べていた。

 とはいえ、以前から大学のセクハラにはこれに似た話は多い。一昨年には、東京大学のさる高名な社会学者が、やはり元教え子にセクハラ訴訟を起こされ週刊誌などでも報道された。この記事では、女性の側が「『就職の推薦状を書いてあげるから』と関係を迫られた」という認識だったのに対し、教授の言い分は「『自分には妻がいるから』と言ったのに、女子学生の方が強引に迫ってきた」だった。

 当時私は、こうした当事者たちの主張を「ただの誤解というにはあまりに溝が大きすぎるし、これはきっと、どちらかが嘘をついているんだろう」と決め付けていた。だが今は、案外両方とも正直に話していたのかな、と思っている。なぜか。この間に、田山花袋の『蒲団』を読んだのである。

勘違い中年の憐れな顛末

 文学史の授業では「自然主義」や「私小説」との絡みで必ず出てくるし、『蒲団』というタイトルを聞いたことのない人はまずいないだろう。中年の作家が若い女の弟子に惚れ、すったもんだの末に弟子が使っていた蒲団に顔を埋め、匂いを嗅ぎながら泣く、というあらすじも比較的よく知られている。

 ただ実際に読んだ人というのは案外少ないのではないか。「知名度の割に読まれていないランキング」がもしあれば、上位に食い込める小説だと思う。

 主人公の作家「竹中時雄」は花袋自身がモデルで、彼が34歳から36歳くらいまでのことを描いている。作中、「中年」であることがくどいほど強調されるが、現代と明治時代の感覚差を差し引いても、この「35歳前後」はなかなか微妙な年齢かもしれない。

 確かにこのくらいの齢になれば誰もが、(腹の出っ張りや白髪、抜け毛など)自分自身の肉体的老化を示す兆候にはいくつか直面し始めるし、自ら自虐的な冗談のネタにすることだってある。だが、人前でいくら諦念を装ってはみても、「まだまだ若いはずの自分」と「もう若くはない自分」の二つの自分像に最も引き裂かれやすいのが、まさに時雄くらいの齢でもあるからだ。

 そして、対するヒロイン「芳子」は19歳(~21歳)。この芳子にもモデルがおり、実際に花袋の弟子だった津田塾の学生、岡田美知代がその人だ。

 時雄が芳子に振られ、「蒲団に顔を埋めて泣く」のはご存知のとおりとして、そこに至るまでの経緯を説明すると、だいたい次のようになる。

 兼業作家時雄のもとに、「熱烈なファン」を自称する若い女性(芳子)からのファンレターが届く。時雄は最初こそ「どうせ文学なんぞ志す女は不器量に違いあるまい」と関心を持つまいとするが、女性の、しかも若く熱烈なファンに関心を持たれていると知ってどうしても心が騒ぐ。

 結局何度も手紙を交わすようになり、返事に「写真を送ってほしい」と書こうとして慌てて消したりしているうちに、芳子上京。文学者を志して時雄に弟子入りする。

 イプセン『人形の家』やモーパッサン『女の一生』を読ませ、「君も明治の、新しい女にならなくてはいけない」などと諭してくれる時雄に対して、芳子はさらに尊敬の念を抱く。

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