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「ツッパリ」が“死んで”、「ヤンキー」は生き残った~『ヤンキー進化論』
難波 功士著(評者:清田 隆之)

光文社新書、900円(税別)

  • 清田 隆之

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2009年6月5日(金)

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評者の読了時間4時間00分

ヤンキー進化論──不良文化はなぜ強い』 難波 功士著、光文社新書、900円(税別)

 今年の春先、「ヤンキー」と名の付く2冊の本がほぼ同時期に発売された。ひとつは『ヤンキー文化論序説』(五十嵐太郎・編著)、そしてもうひとつが本書である。

 ヤンキー漫画やヤンキー向けの雑誌などは数多く存在したが、その生態やカルチャーを分析的に語る本はこれまであまりなかった。それがここにきての同時発売。なぜ今「ヤンキー」なのだろう。

 『ヤンキー文化論序説』は、学者やフリーライター、精神科医など、18名の執筆者がそれぞれの立場でヤンキー観を語った評論集だ。ヤンキー音楽の系譜や、ヤンキーと地域社会の関係性、ナンシー関のヤンキーコラム傑作選など、雑多な「概論」が“幕の内弁当”的につめこまれており、ヤンキー文化を考える上での入門書として十分に読み応えがある。

 それに対し本書は、社会学者である著者が60年代~現在に至るまでの漫画や雑誌といった膨大な文献をひもとき、その前史も含めてヤンキー文化の変遷をたどったものだ。本の構成も、愚連隊やカミナリ族、太陽族や番長・スケバン、マンボ族やロカビリーといった初期の「不良文化」から、80年代のツッパリ全盛時代を経て現在に連なる「ヤンキー文化」まで、通史的に進んでいく形になっている。その意味では、ヤンキー文化を中心に据えた現代史としても読むことができるだろう。

 ここまでひとくちに「ヤンキー」という言葉を使ってきたが、そのイメージは人によって様々だ。

 「暴走族」や「ツッパリ」に代表されるような古典的ヤンキー像を思い描く人もいれば、元ヤン芸人やヒップホップ、ケータイ小説、Jリーグのファンカルチャーまでをもヤンキー文化に位置づけるような語り方もある。

「階層的に下」「旧来型の男女性役割」「地元志向」

 ヤンキー文化史を語るにあたって、著者はまず、広義のヤンキーを次のように規定している。

〈それが「ヤンキー(的)である」という同定に際しては、「階層的には下(と見なされがち)」「旧来型の男女性役割(男の側は女性に対して、性的でありかつ家庭的であることを求める。概して早熟・早婚)」「ドメスティック(自国的)やネイバーフッド(地元)を志向」といったファクターを帯びていることがカギとなる、との仮説をここでは提示したいのである〉

 この仮説を念頭に置きながら、駆け足で著者が提示する変遷の図式を追ってみよう。

 本書によれば、「ヤンキー」という言葉は1970年代以降に広まったようだ。50~60年代には、先述したように愚連隊やカミナリ族といった不良文化がそれぞれに存在していた。

 「ヤンキー」の語源に関しては諸説あって定かでないようだが、70年代に一部の若者に流布した、米兵(=Yankee)の遊び着を手本としたファッションの総体がその出発点ではないかと著者は見ている。

 そこから〈アメリカンなバイカーやローラー的な嗜好、もしくはソウルフルなブラック・テイスト〉などが徐々に払拭され、以後、70年代に全盛を極めた暴走族のスタイルとも融合しながら、ヤンキーは土着化の道をたどることになる。

 70年代後半~80年代初頭にかけて、長ランや短ランといった改造学生服を主軸に据えたツッパリ文化が流行。なめ猫や横浜銀蝿といったブームの後押しもあって、「ツッパリ」は一躍不良文化の代名詞的存在となる。

 関東ではツッパリに取って代わられたヤンキーだが、関西方面では「暴走族の私服的スタイル」として生き残り続けた。

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