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33. 「ウチは私企業だからお役所とは違う」と胸を張って言えますか

シュティフター『晩夏』 前編

  • 千野 帽子

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2009年6月10日(水)

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 日直のボウシータです。

 組織のなかで、複数の部署が共同作業をしていると、妙な事態が起こることがありますよね。

 たとえば、こっちの予算を立てると、別の部署に悪影響が出る。でも別の部署なので、その悪影響をどうこうすることがこっちの部署では無理。よって、その悪影響は解決不能のまま残る……。

 前回前々回と、肥大化した企業のなかで歯車として働くことのもどかしさ、歯痒さについて書いてきた。この歯痒さを、小説は150年も前から題材としてきたのである。

鼻/外套/査察官』ゴーゴリ 著、浦雅春 翻訳、光文社古典新訳文庫、680円(税込)

 官僚制の不条理・馬鹿馬鹿しさを諷刺したと言えば、ロシアの作家ニコライ・ゴーゴリの戯曲『査察官』(『鼻/外套/査察官』所収)が有名だが、ここではもっとディケンズ‐カフカが取り上げた主題に沿って、オーストリアの小説家アーダルベルト・シュティフターの長篇小説『晩夏』(1857)を取り上げることにしたい。

 『リトル・ドリット』には迂遠省にかんするジョークという形で、巨大組織で働くことの不思議さが触れられていたが、『晩夏』にもまた、登場人物のちょっとした感慨という形で、同じことが軽く触れられている。

 『晩夏』が発表された年は『リトル・ドリット』と同じ1857年だ。読者としてはその偶然もまた、ちょっと嬉しかったりするんだなあ。

*   *   *

晩夏 上』(全2巻)、アーダルベルト・シュティフター 著、藤村宏 翻訳、ちくま文庫、1,365円(税込)

 舞台となるのは19世紀前半のヨーロッパ。

 〈私〉は堅実な商家の長男だ。家が裕福なので、定職につく必要はない。しょっちゅう旅に出て、野山を歩き回っては、自然史(まあ博物学ですね)の研究に没頭している。父もまたそんな息子に理解がある。というより、息子が民間学者として研究や思索に没頭することを、応援してすらいる。

 なんで父はこの息子を応援しているのか。世間の「空気」だけを読んで、パフォーマティヴに自分の立ち位置を計算しなければならない、同調圧力の強い日本ではまったくピンと来ない話かもしれないが、ヨーロッパでは、世間とか空気とかいった「関係」を超えた、超越的な価値や基準といったものにたいする希求が強い。超越的なものとは、かつては神であり、ある時期からは「学問」とか「近代の理念」のようなものであって、いまはどちらも影が薄くなってしまっているから、欧米ではいろいろ悩んでいるわけである。

 いや日本も強いのだが、「近代」の理念が所詮借り物で「ムラ」がそのまんまポストモダンになっちゃった日本では、要するに農地を潰して「ホームセンター」を作ってしまったような環境なので、超越的な価値や基準を求めようとすると新興宗教かマネーゲームしかないのだった。

 話がずれてごめんなさい。『晩夏』に戻ります。

コメント2件コメント/レビュー

【組織の管轄する問題を理解することは求められず、隣の部署でなにが起こっているか理解せぬまま、理解しようとすらせぬままに、もろもろの作業を熱心に遂行することのほうが求められるのだ。】←隣の部署どころか隣の席でなにが起こっているか、などというどころか、書類甲のA欄記載数値を書類丙のC欄に、書類乙のB欄記載数値を書類丙のD欄にそれぞれ転記し、C欄記載数値とD欄記載数値との差引差額をE欄に記入することが彼(彼女)仕事の場合、書類甲のA欄ないしは書類乙のB欄記載数値がどのように導き出されたものであるか、であるとか、自分が記載したE欄数値が何を意味するものであるか、などということには一切の興味を持たずに、作成した書類丙をいかに素早く上司に手渡しできるかということ以外には何の意義も感じることができないのではないか?などと思う日常です。…文字に起こしてみると何だか切なくなってきました。(ch-k)(2009/06/11)

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【組織の管轄する問題を理解することは求められず、隣の部署でなにが起こっているか理解せぬまま、理解しようとすらせぬままに、もろもろの作業を熱心に遂行することのほうが求められるのだ。】←隣の部署どころか隣の席でなにが起こっているか、などというどころか、書類甲のA欄記載数値を書類丙のC欄に、書類乙のB欄記載数値を書類丙のD欄にそれぞれ転記し、C欄記載数値とD欄記載数値との差引差額をE欄に記入することが彼(彼女)仕事の場合、書類甲のA欄ないしは書類乙のB欄記載数値がどのように導き出されたものであるか、であるとか、自分が記載したE欄数値が何を意味するものであるか、などということには一切の興味を持たずに、作成した書類丙をいかに素早く上司に手渡しできるかということ以外には何の意義も感じることができないのではないか?などと思う日常です。…文字に起こしてみると何だか切なくなってきました。(ch-k)(2009/06/11)

奴らは同じ日本人だから、下らん組織防衛に走ったのだ!…よくわかります。虐めとか村八分とか等等。(2009/06/10)

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