【はじめに】
本連載は、何度も繰り返すようですが、お店側から見たお客さん、お客さん側から見たお店、という双方の視点に立つことによって「相手の考えや立場に、少しばかり近づいてみる」という意図です。が、しかし、お店も、お客さんも、100人いれば100通りの考え方があるように、絶対これが正解、という答はありません。
今回も同様に、お客さん側、お店側、双方から「これは違う」「極端だ」といったご意見、ご批判も予想されますが、しかし、そういう見解があることもまた事実なのです。「なるほど、そういう見方もあるのだな」「ま、あちらも商売だから」という感覚で読み進んで頂ければ幸いです。さて、バッターボックスにはお店側が立ちました。
* * *
黒澤明監督の傑作のひとつに『隠し砦の三悪人』という題名の映画がありますが、どんなに素晴らしい雰囲気のお店であっても、そのシチュエーションの中に「隠れお客の三悪人」という名のいただけないお客さんが潜んでいます。
その三悪人の正体とは、
1.食べないお客さん
2.飲まないお客さん
3.帰らないお客さん
これがお店にとっての三天敵客です。
この1〜3の悪人客に、もう1つの条件が加わると「おねげぇ〜しますだ、もう来ないでおくんなせえ」となってしまいます。そのもう1つの条件とは「悪気(わるぎ)なし」という恐ろしい感覚です。

お店にとっての営業の基本は、お客さんに「よく食べて、よく飲んで、喜んで頂いて、サッと帰って頂く」ということです。「少量しか食べない、飲まない、回転しない」というお客さんでOKという店であればすぐに潰れますし、もしこれでやっていくならば値段も高く取らざるを得ないことはお分かりかと思います。
お客さんが飲食において、「美味しいものを、できるだけリーズナブルに」というポリシーをお持ちであるならば、それを提供、維持するためには、お客さん自身に「よく食べて、よく飲んで、サッと帰って頂く」という、この原理原則を実行していただく必要があります。そうすれば、双方ともに幸せになることが可能です。
お客さんが店の都合を理解するから、お店は安く良いものを出せる
例えば、味よし値段よしと評判で、永年家族で店を営んでいる老舗の居酒屋さんは、お客さんのほとんどがこの原理原則を理解しているからこそ、お店を続けてこられたわけです。また、新鮮なものを手頃な値段で提供できたのです。長居して話し込もうとか、タバコばかり吸って食べない、といった手合いのお客さんは少なかったはずです。もしもそのテのお客さんがいたなら、常連客から冷たい視線を浴びせられたり、お店側からも「悪いけど、次のお客さんに席を空けてあげて」と言われ、居心地も悪いはず。
ここで話をもとに戻しますが、三悪客が「飲まない、食べない、帰らない」理由を挙げてみましょう
1.食べないお客さん
* もともと少食
* どこかで食べてきた
* タバコばっかり吸っていて食べない
* 話に夢中になっていて食べない
2.飲まないお客さん
* もともと飲まない
* どこかで飲んできた
* タバコばっかり吸っていて飲まない
* 話に夢中になっていて飲まない
3.帰らないお客さん
* お腹いっぱいで「もう食べれません、飲めません」状態
* 話に夢中になっていて談話室状態になっている
* 愛の世界に浸っている
* 酔っ払って泥酔状態
* 寝ている
* 気分が悪くなってトイレに立てこもる
自分の身に憶えがなくても、周りの知り合いに1人や2人いませんか? もしくはどこかのお店で、こういったお客さんに遭遇した経験はありませんか? このテのお客さんばかりに店を占領されたら、お店は一挙に干上がってしまいます。そして良いお客さんは離れて行ってしまうのです。
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