「赤坂真理の人に言えない悩み」

子供ができない悩み。出産を自慢する友人に傷ついています

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2009年7月10日(金)

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 たくさんの「言えない悩み」をお寄せいただきました。今回は、下記の悩みに赤坂さんがお答えします。

【今回の「言えない悩み」】
 子供が欲しいのに、なかなかできません。2回妊娠しましたが、流産。夫婦仲は良好ですが、夫は仕事や、私からの「子供欲しい」プレッシャーとで、自信を失っているようです。昔は、結婚したら子供は自然にできると思っていたのに、理想と現実のギャップが悩みです。

 私も仕事を持っていますが、早く子供を作って産休を取りたい。一方会社では、私の昇進も視野に入れて業務拡大をしようとしています。嬉しいけれど、管理職なんて興味ないのに…。

 不妊に長い間悩んでいた友人が、昨年出産。その途端、音信不通だったのにいきなり、メールやハガキで子供の写真をガンガン送ってきます。「産んでない女性」から一歩リードしたとでもいう態度です。女って恐い。

 人間にとって、子供って何だろう? 自慢する対象なの? 他人から一歩秀でるアイテムなの? 自分はそんな親でありたくないと思う一方で、子供が一生できなかったらどうしよう、とも思います。子供がいないと、何を失いどう生きていくのか。漠然とした不安に、時々泣きたくなります。 

 (会社員、37歳、女性)

 この質問が最初の一群の中に来たとき、運命かと思いました。これは私自身の「言えない悩み」にかなり近いから。もしかしたら、人類最大の悩みなのかもしれないと、この頃予感したりもしますが…。

   私には、セックスと生殖の関係に折り合いがつけられませんでした。多くの人がそれを普通にやってる感じなのが、純粋に驚異でした。衝動と家族をどういっしょにできるのか? と。

   「こんなこと思う人間って、アリ!?」と自分であきれ驚くほどだけど、私はいるのだから、アリと言うしかない。そんな自分がひどく不完全に思えて、どこかで許せなかった・・・。でも許せなくても私は存在するし、存在するなら、許した方がいい。

   結局私にできるのは、日々、自分で自分を肯定し続けること、それしかないと思いました。答えが出ない問題も人生にはある。今は不完全に見えても、いつか全体が分かる時がくると信じる。「ない」ことを信じるのは、ある意味、やってきた大変な状況に対処するより、強さのいることかもしれない。

   のっけから爆弾発言をするようで、クリアな回答を期待する方には申し訳ないけれど、こんな私にできるのは、問題を抱えながら、同じように問題を抱えた人と共に歩くことだけです。言葉の伴走をし、引き出されたがっている言葉を見つけ、それによって、時に自分も救われる。

   皆さんのまっすぐな問いかけを読み、私はそのようだし、そうしかできないと、決意をしました。おつき合いいただけるなら、さいわいです。

   何かが「ない」悩みは、何かが「ある」悩みより難しいのではないかと私は思います。

 「ない」ことを正面切って語ろうとする人は少ない。「ない」ことは語りにくいし(単純に考えて、話のネタも少なそうだ)、「ない」ことには答えが「出ない」と思っているから。それはある意味正解です。後述しますが「ない」は存在の問いになってしまいやすいから、はっきりした答えが出ない。

   しかし考えてみてください。「ない」ということこそ、言葉でしか表せないのです。「ない」ことを考える人こそ、それを語る言葉を獲得してほしい。

   言い方を変えれば、マイノリティーこそ言葉を持たなければならなくて、マイノリティーこそ、生きていくのに言葉が必要です。

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著者プロフィール

赤坂 真理(あかさか・まり)

小説家。1964年、東京都杉並区高円寺生まれ。1990年、別件である会社の面接に行ったら、社長が発行していたエロティック・アートの雑誌『SALE2(セール・セカンド)』の編集をなぜか任され、そこで自分に原稿を発注してみたら小説らしきものを書いた。主な著書に『ヴァイブレータ』(講談社文庫)、『モテたい理由』(講談社現代新書)など。趣味は瞑想、散歩、バイク、身体探求。



このコラムについて

赤坂真理の人に言えない悩み

このコラムでは、読者の皆様からの「赤坂真理の言えない悩み」相談に、小説家の赤坂真理氏がお答えします。「こんな悩みを話しても、誰も取り合ってくれない」「親身になって聞いてくれる相手がいない」と思っておられる方はいませんか。他人には言えない様々な悩みを、ぜひ本欄にお寄せください。 ※このコラムは、日本経済新聞の土曜版「日経プラスワン」に2008年4月19日〜9月27日まで掲載していた連載「赤坂真理のうらやましい悩み」の続編です。

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