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ほったらかすために、やらなきゃいけなかったこと~『リンゴが教えてくれたこと』
木村 秋則著(評者:朝山 実)

日経プレミアシリーズ、850円(税別)

2009年6月11日(木)

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評者の読了時間5時間00分

リンゴが教えてくれたこと』 木村 秋則著、日経プレミアシリーズ、850円(税別)

 散歩道に、半ば廃墟となった邸宅がある。住んでいた人たちは夜逃げをしたといううわさだ。

 この数年、柵ごしに見える広々とした庭には、雑草が生い茂り、ジャングルのようになっている。

 それでも、この時期になると、ダリヤ(たぶんそうじゃないかな。間違っていたらごめん)などの球根系の花がカラフルに咲き誇っている。花屋さんで見るよりも、ひとまわりはでかい花々なのだ。

 球根は一年ごとに植え替えねばならないと教わった記憶があるのだが、手入れする人などいないにもかかわらず、毎年すくすく育っている。目にするたび、たくましさにあきれつつ、励まされるのだ。

 鬱蒼とした廃墟と結びつけるのは見当違いかもしれないが、リンゴ栽培に雑草はプラスになると語るのは、『奇跡のリンゴ』で知られる木村秋則さん。農薬なしに栽培は不可能といわれてきたリンゴの世界に、革命を起した人物だ。

 〈雑草を丁寧に取っていると、土が固まってしまいます。土をつくるためには草をぼうぼうにしてください〉と木村さんは、これからのリンゴ栽培の後継者に向けて書いている。

 無農薬、無化学肥料のリンゴ栽培で一躍時の人となった木村さんだが、もともと青森のリンゴ農家を継いだ当初は、まわりとなんら変わらず、ふつうに農薬を使っていた。

 転換のきっかけは、家族が健康を害したことだった。大量の農薬を使わねばならない農法に疑問を抱いた木村さんは、以後、農薬の量をすこしずつ減らしていった。

 年に13回だった散布を6回に、翌年は3回にと様子をみた。農薬散布の回数を減らしても収穫できた。これならいけると自然栽培に踏み切ったのは1978年。

 しかし自然栽培に切り替えてからの数年は、一個のリンゴも実をつけることがなかった。それでも木村さんは2~3年もすれば軌道に乗ると考えていたらしいが、楽観的な読みは外れ、無収穫の年が延々と続くこととなる。

することがないから、虫を見ていた

 害虫がたかり、葉は病気にかかり、バサッバサッと落ちる。

 はじめは同情的だった近隣の農家の目も、きびしくなる。やがて回覧板は素通りし、友人さえよりつかない。村八分の状態となる。

「こんなバカなことはしていられない。やめよう、やめよう」

 そう思いながら、翌年になるとまた自然栽培にとりかかっていたと木村さんは述懐している。

 先が見えないから、退くことも進むこともままならない。たいてのひとなら、途中で挫折しているだろう。しかし、木村さんは違っていた。読者は、なにがどう違っているのかを知らされる。

 自然栽培は、農薬散布などに時間をとられないぶん、時間がありあまってしまう。なにをしていたかというと、

「じっと畑を見ていました」

 たとえば木村さん、一日中「一匹のテントウムシが何匹のアブラムシを食べるのか?」を観察していた。

 あるときは、忙しなく葉っぱを食べる虫に目をとめ、「いつどこで呼吸をしているのか」を知ろうと眺めていた。

〈休まず食べる虫のわきの下辺りが動いています。どうもそこで呼吸をしているようだ。前足のところをつかんだら死にました〉

〈腹の真ん中辺りは(引用者註:つかんでも)、虫を置くとまた元気に動きます。それで、人間の言う肩の辺りに口があるのがわかりました。気口でした。虫眼鏡でそれを確認しました〉

 木村さんの観察で、何万匹もの虫が犠牲になったという。その数だけでも、なみの根気ではない。

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