本連載の単行本タイトル、「人生2割がちょうどいい」。その心は、「できることの幅は、勝率ではなく、負けられる幅で決まるから。弱者というのは、この負けしろが少ないという人。基本的に負けられない人です」−−。『ア・ピース・オブ・警句』で大人気の小田嶋隆と、内田樹先生の暴走販売促進対談、スタート!
―― 内田先生は小田嶋さんと、どのようなお知り合いなのでしょうか。
内田 ファンです(笑)。
―― 即座にお答えが。
1950年東京生まれ。東京大学仏文科卒業。東京都立大学大学院博士課程中退。神戸女学院大学文学部教授。専門はフランス現代思想、映画論、武道論。近書に『昭和のエートス
内田 僕は長いファンなんですよ。「シティロード(1972年から93年まで発行されていた、東京の情報誌)」に連載していた『我が心はICにあらず』からですから、最初期から、ということですよね。まだ単行本が出る前ですから。
小田嶋 もろ初期ですよね。
内田 70年代。めったな人は読んでないですからね。
―― ちょっと言葉を変えれば、変わり者ということでもありますよね。なぜ、とうかがってよろしいですか。
内田 「シティロード」の欄外か何かの、ものすごく小さいコラムだったんですけど、文章の際立ち具合がすごかったですからね。もう、ひときわ光っていました。今となっては、結構レアものの初版本から始まって、ご著作はほぼ全部、持っています。
―― 実際にお会いになって、お話しされたのは?
内田 『9条どうでしょう』(2007年・毎日新聞社)を一緒に書いた時かな。
小田嶋 2年ぐらい前ですか。
9条問題、虎の尾を踏む男たち
内田 毎日新聞の企画で、いろいろな人に9条について論じてもらおう、ということだったんですけど、編集者が橋本治さんとか、矢作俊彦さんとかに次々と断られたみたいで。最後に僕のところに来て、「どうでしょうか」と言うので、「僕の好みで選んでいいですか?」と聞いたら、「いいです」という話だった。なので、「じゃあ、平川克美、町山智浩と小田嶋隆、この4人で書かせてくれないか」となったんです。
―― ファン時代から四半世紀を経ての邂逅だったのですね。
内田 四半世紀はオーバーですけど、でも20年ぐらいにはなるかな。
小田嶋 そうですね、20年ぐらいになりますね。私の方は編集者さんに、どこかの大学の教授さんが褒めてくれているよ、ということをウワサ話のように聞いていて、うわあっと恐縮していたタイミングで原稿依頼がありまして。「9条」って、テーマとしてはすごく嫌だったんですけど(笑)。
内田 小田嶋さんも町山さんも、本当に嫌々書いてくれたんですよね(笑)。
小田嶋 ものすごく嫌だったけど、「執筆メンバーがみなさん、虎の尾を踏みにいく人たちで…・・・」と、うまく煽られて、これは応えないとな、と。
―― そうすると、内田先生は小田嶋さんのビフォー・アル中、アフター・アル中の時系列に沿って読んでおられるわけですね。
内田 こんな忠実な読者はなかなかいないですよ。
小田嶋 先生はこの間、クリント・イーストウッドが監督をした映画「グラン・トリノ」の解説を書いておられましたが、私はとてもひどいアル中時代に、カーメルの店に行ったことがあるんですよ。
酒のためだったら怖くない
―― かめ? 亀有?
小田嶋 いや、カーメル。カリフォルニアの、イーストウッドが市長をやっていたところ。
内田 亀有って、両さん(注・マンガ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の主人公、両津勘吉)じゃないんだから(苦笑)。
―― すみません。小田嶋さんが、そんなおしゃれなところに行っていらしたとは・・・・・・。
小田嶋 その、イーストウッドがやっていたレストランに行って。だいたいカリフォルニアは禁煙だらけなんだけど、そこはもう、たばこは自由に吸ってくれ、という店で(笑)。
内田 いい店ですねえ。小田嶋さん、アル中時代でも、そういうアクティビティーはあったんですね。
小田嶋 アップル本社を訪れるというような取材企画がありましてね。サンフランシスコからサンディエゴまでロードムーヴィみたいにドライブして、途中で寄ったんですが、道中ずっと飲みっぱなしで。
内田 なるほど(笑)。
小田嶋 サンタモニカあたりに酒屋があるんですが、酒屋の周りの雰囲気がすごいやばいわけですよ。ホームレスがだーんとたむろしていて、中で酒を買ったやつが出てくると、俺にも少し分けてくれ、と、がーっと群がってくる。これは怖くて買いに行けないな、なんて案内役の友達と言い合いながら、ホテルにチェックインしたんですけど、ホテルに酒が置いてなかったので、じゃあ、やっぱり、あそこに買いに行かないとな・・・・・・ということになって。
でも、俺は国際免許を持ってなかったんです。それで、「オレ、歩いて行ってくるよ」と友達に言ったら、「オマエ、あんなところに歩いて行って、無事に帰ってこられっこないだろう!?」って、散々もめて。結局、そいつが夜中に車を出して、ハイウエイの向こうの酒屋まで買いに行ってくれましたけど。
内田 アル中、恐るべしですな(笑)。
小田嶋 あんなところに酒を買いに行く、と言い張るほど、お前は酒にやられているのか、って友達は結構、驚いていました。アル中者というものは、もうある段階になると、明らかな危険を無視しちゃうんですね。ビールを2〜3本余分に買っておいて、配って歩けば襲われたりしないだろう、みたいに。でも、カリフォルニアの観光地の1本入った道の酒屋って、やっぱり観光客がすっとお酒を買える雰囲気じゃないんですよ。サファリと一緒だから、車から降りたら終わりだ、と言われましたね(笑)。
―― 内田先生はアルコール関係はお好きですか。
内田 おととい、うちの大学の校医さんと話していたら、「内田先生はアル中ですよ」って言われましたね(笑)。
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