
この半月ほど、ずっとひっかかっていた言葉がある。
いや、「言葉」と言って良いのかどうか……。
単に「表記」と呼ぶべきかもしれない。
私を悩ませていたのは、「本田△」だ。
これは、何と読むのだろう?
この三文字を、私は、どんな音で発声すべきなのであろうか。
サッカー日本代表のW杯アジア地区最終予選の大詰めを迎えたこの春、わがサッカー界は、絶対に負けられない最終予選の試合に向けて、強化試合に相当する試合を組んだ。
その、キリンカップの二試合で大活躍したのが本田圭佑選手(オランダVVVフェンロ所属)なのであるが、その本田選手は、なぜか一部で「本田△」と呼ばれているのである。
「ん? なんだこの△は?」
私は、掲示板に散見する「本田△」表記を眺めながら、その読み方に難渋していた。
これは、実は、よくあることだ。
インターネット掲示板は、私的なジャーゴンが飛び交う、未熟極まりない言語世界だ。
だから、発音不能な表記や意味のわからない略語や、出典の知れない引用にぶつかることがよくある。というよりも、そもそもネット社会は、そういう生煮えの言葉でできあがった沼みたいな場所なのである。
ひとつ例をあげる。
5年ほど前、私は、「にしこり」という4文字に悩まされていた。
時々巡回していた野球系の掲示板に、「にしこり」という4文字だけを書き逃げする輩が現れていたからだ。
意味不明。彼らは
にしこり
とだけ書いて、ほかに何も書かずにどこへともなく消えていく。
しかも、「にしこり」の意味を誰も教えてくれない。
掲示板のマナーは職人の修行過程に似ている。「仕事は見て覚えろ」「ワザは盗んで学べ」てなことになっている。なんというのか、先人が後輩を甘やかさない世界なのである。だから、「この、《にしこり》というのは、何かの暗号ですか?」
と尋ねても、マジメな答えは一切返ってこない。
「見た通り」
「にしこりはにしこり。ただそこにあるのみ」
「読むのではない。感じるのだ」
「心の目で見れば読めるはず」
私は、はじめて「にしこり」を見てから、3カ月ほど、まったく意味がわからなかった。
それが、ある日突然わかったのである。
おおなるほど、このひとかたまりの文字列は、ある有名なアスリートを意味している。
テニスの錦織圭選手?
惜し……くない。まるで違う。
第一、その当時錦織選手はまだデビューしていなかった。
正解はニューヨークヤンキースの松井秀喜選手だ。
よく見てほしい。にしこりは、松井選手の顔の上半分になっている。「に」は向かって左の目とほお骨の線、「こ」は右の同じく目とほお骨を、「し」が鼻、「り」が耳を表現している。
にしこり
どうです? よく見て、にしこりが顔に見えたときの快感といったら無いでしょうが。
さよう。これが「Aha体験」である。あるいはクオリア。
わかった時には、血管の中に新しい血が流れる感じがしますね。
こういうものは、本当は人に教えられるのではなくて、自分で発見する方が望ましい。
その方が感動が大きい。
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