「私はね、部下たちに恋人気分で仕事しろって、いつも言ってるんだよ。ガッハハ」
これはかなり以前に、ある企業の社長が言っていた言葉だ。
恋人気分で仕事って、どういうことだろうか? 社内恋愛? 社内不倫? それとも…。おそらく今の私だったら、「それってどういうことですか?」と聞いたに違いない。でも、あの頃はそんなこと、どうでもよかった。男のいない女の楽園(?)で働いていた私(客室乗務員でした)にとって、「恋人気分で仕事」とは、まるで実感のわかない言葉だったからだ。
路線もスケジュールも複雑な国際線では、同じ乗員さんと一緒のフライトになることはめったにない。ましてや、機内に乗り込むお客さんと「ビビビ」とくるような出会い(古い!)は、宝くじに当たるようなもので、夢のまた夢だったのである。
それに当時は、今ほどセクハラセクハラと騒ぎたてる風潮もなかった。「会社に好きな人がいれば、毎日会社に行くのもけっこう楽しいかも」とノー天気に妄想し、「へ〜、このおっさん、恋人気分で仕事して、一代で海外5カ国に拠点を持つ企業に成長させたんだ。すごい!」と思っていた。渋谷や原宿で女子高生たちが、なんでもかんでも「スゲェ!」と感動するような軽さで、その社長の話を聞いていたのである。
チヤホヤされている女性部下を見て自省
あれから十数年。あの社長の「恋人気分」の言葉を思い出すような出来事が起こった。高校時代の友人のA子が、突然会社を辞めた。初の女性役員候補として常に名前が挙がるような、正真正銘のキャリアウーマン(この言い方も古い?)だった彼女が、突然辞めたのである。
「なんだかもう、疲れちゃって。戦うのに、ホント疲れちゃったの。この間、おっさんたちにチヤホヤされて、『自分はデキる』って勘違いしている若い女性の部下を見たら、うんざりしちゃってさ。今ならまだ間に合うかも、と思って辞めることにしたわ。40過ぎてからじゃ、間に合うも何もないか〜。アッハハ」
支離滅裂で、何が言いたいのかよく分からない言い訳を、A子はあっけらかんと言い放ったのである。
これって、チヤホヤされてる女性部下への嫉妬?
それもあるかもしれない。でも、彼女はそんなことで辞めるほど柔(やわ)な女ではない。
何だか、疲れちゃったって?
これはよく分かる! 疲れ果てて家に帰り、くだらないバラエティー番組を見ながら、コンビニで買ったおにぎりを1人寂しくほおばっている時など、「私、何やってるんだろう」と、気が滅入る。
その途端、ズドンと崖から突き落とされたような気分になるのだ。外でどんなに元気に振る舞っていても、会社でどんなにバリバリやっていても、「もうやだ〜」と1人悲鳴を上げたくなることは、誰だってあるはずだ。
「家あり、車あり、貯金あり」。されど「子なし、夫なし、介護なし」。そんな自由すぎる状態に、何とも言えない孤独感を抱くことくらい、誰でもあるだろう。
それにしても、である。A子の突然の行動は、どうにも納得できない。なぜなら、つい数カ月前彼女は「私さ、ウチの会社の女性役員第1号になってやる!」と、鼻息荒く豪語していたからだ。
いったいA子に何があったのか?
辞めた辞めた〜と、明るく言ってるのだから、あんまり突っ込む必要もないかとも思ったのだが、取りあえず聞いてみた。
すると、「何があったのかって? あっはは、そりゃそうだよね〜。ついこの間まで、役員になってやるって宣言してたんだもんね」と、A子は辞めたホントの理由を話し始めた。
どうやら、聞いてもらいたかったけど、言い出せなかったというのが本音だったようなのだ。それから延々1時間。彼女は、いかに「恋人気分で仕事」をしていたかを、話してくれたのである。
「実はさ、私、ずっと上司のB男とつき合ってたの」
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博士(Ph.D.、保健学)・東京大学非常勤講師・気象予報士。千葉県生まれ。1988年、千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。2004年、東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了。長岡技術科学大学非常勤講師、東京大学非常勤講師、早稲田大学エクステンションセンター講師などを務める。医療・健康に関する様々な学会に所属。主な著書に『「なりたい自分」に変わる9:1の法則』(東洋経済新報社)、『上司の前で泣く女』『私が絶望しない理由』(ともにプレジデント社)、『







