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孤独な男どもよ、メシに「欲張りすぎるな!」

山田五郎×久住昌之 僕たちの好きな男飯【1】

  • 山田 五郎,久住 昌之

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2009年6月25日(木)

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 ネットの中で、書店の棚で、グルメ情報が大量に供給されている。僕たちはいつの間にこんなに「グルメ」になったのだろう。山田五郎氏が「フライデー」に連載していた『純情の男飯』もその一角に加わった・・・のだが、一読、肌触りがどうも違う。選ばれている店もメニューも、究極の美味でもなければ、店が格好いいわけでも、かといってコストパフォーマンスだけでもない。でも、その選択はどこか「男心」に刺さるのだ。

 そこで思い出すのが、12年も前に発行されながら毎年愛読者を増やし、復刊すること3回、とうとう連載再開となった男飯本の元祖『孤独のグルメ』。この原作を担当した久住昌之氏をゲストに迎え、「僕たちの好きな男飯」をテーマに語り合っていただいた。

山田五郎(やまだ ごろう)。
1958年12月5日東京都渋谷区生まれ、大阪府豊中市で育つ。上智大学文学部在学中にオーストリア・ザルツブルク大学に1年間遊学し西洋美術史を学ぶ。卒業後、講談社に入社し「Hot-Dog PRESS」編集長、総合編纂局担当部長等を経てフリーに。現在は時計、ファッション、西洋美術、街づくりなど幅広い分野で講演、執筆活動を続けている。フライデーで連載した『純情の男飯』が上梓され、好評。
久住 昌之(くすみ まさゆき)。
1958年7月15日東京都三鷹市生まれ。漫画原作からデザインや音楽活動など幅広い活動を行うアーティストとして活躍している。『孤独のグルメ』(画・谷口ジロー 原作・久住 昌之)は超ロングランの傑作。最近「SPA!」で連載が復活した。

男の一人飯は「ひとりだから気楽」だ

山田五郎が食べ歩く 純情の男飯
(山田五郎著、講談社・税別1200円)

久住 どうも、こんにちは。

山田 元気にしてました?

久住 元気です。ごぶさたです。『純情の男飯』読むと、いい店、行ってますね、いっぱいね。

山田 久住さんほどじゃないですよ。

久住 いやいや。

山田 紹介しているお店も、町の定食屋さん的なところが基本だし。

久住 でも、ボクから見るとさりげなく洒落た店ばっかりだったな。

――『純情の男飯』は、当サイトの中心読者、まさに「働く男」の一人飯のお話ですよね。どうして私たちは一人飯というのがかくも好きなんでしょう?

山田 いちばんの理由は、気を遣わないでいいからじゃないですか。

久住 そうだよね。

山田 特にサラリーマンの場合、仕事で取引先や上司と食べざるをえない場合もあるわけで、たまには誰にも気を遣わず一人で食べたいときもあるんじゃないかと。俺も会社員時代には、そういうときがありましたから。

久住 会社員の人って気を遣うもんね。

山田 仕事関係となると、たとえ相手が同僚や部下であっても、無意識のうちに気を遣ってるんですよ。

――今は、むしろ上司が部下に気を使っていたりして。

久住 俺なんか、会社員をやったことがないから、基本が一人飯だと思うんだよね。一人で食べることが多い。

山田 一人で食べることに特別な理由はいらない、と。

久住 お昼になってわざわざ誰か呼び出すのも面倒だし。

――できることなら、誰かと一緒になんていうことは全然考えないですか。

孤独のグルメ 【新装版】
(画・谷口ジロー 原作・久住 昌之、扶桑社・税別1143円)

久住 それだと気を遣うからね(笑)。俺はウマいけど相手はどうか、とか。映画とかも人と見るの、すごく苦手なんですよ。「この人は面白いと思ってないんじゃないか」とか気になって。

山田 あ、分かる。俺もそう。

久住 それが嫌なんだよね。

山田 ということは、やっぱり気を遣うのが嫌だから一人で食べてるんじゃん。

久住 そうか。あまり考えてませんでした。

山田 自分がお店を選んで誰かを連れていくとなると、相手がおいしいと思ってくれるかどうかとか、いろんなことが気になっちゃいますからね。

――つまりおふたりの一人飯は、自分へのご褒美とかそういう感覚じゃないんですね。

久住 ない。

山田 まったく違う。

久住 でも、この本は会社員や俺みたいな「一人飯」派にものすごく親切。「ほら、こんなイイ店、こんな場所にありますよ」って。

――安いしうまいし。

久住 そうそう。飯を外したくない人にはものすごくいい本。

――実際、これを見て何軒も行っちゃいました。

久住 でしょう。俺もそう。これは使える本だなと思って。さすがだな。

山田 そんな急にヨイショされても……(笑)。どこが「さすが」なんだか。

自分の「うまい」は、基本的に自分だけのもの

久住さん(写真:大槻 純一 以下同)

久住 俺はできない、こういうことは。

 俺、一番最初に書いた食べ物の本が、とある1軒のラーメン屋さん、そこのことだけ書いたんですよ。その中で何度も何度も、「これは一般的にはそんなにおいしくはないよ」って言ってるんだよ。もう噛んで含めるように。それなのに、みんなそこに食べに行くんだ。それで俺に文句を言ったりするんだよ。

 だって書いてるじゃん、そんなにおいしくないって。でも、このお店はその町の人にはすごく愛されていて、俺なんか、まずいとか、おいしいとか考える前の子供の頃から食べているから。だから、俺は本当においしいんだよ。たぶんいわゆる「おふくろの味」なんだ。

 俺の考えるおいしいものは、そういうのなんだよ。根っからマイナーなんだ。食べるとき他人のこと考えない。神保町とかだったら、ラーメン屋だったら「伊峡」(いきょう)とか好きとか。

山田 「そんなにおいしくない」のに好きなのは、込んでないからとか、そういう理由?

久住 俺にとってはまぎれもなく味が好きなの。伊峡の味が好きなの。だけど、万人にとってはウマいものじゃないかもしれない、くらいのことはわかるようになった。そういうのが好きだから、こういう役に立つ本は書けないなぁ。

山田 『男飯』の場合はマス向けの雑誌で連載してたから、なるべく万人受けしそうなおいしさのお店を選んだだけのことですよ。俺自身は、他人がまずいという店でもわりと平気だったりするわけで。

久住 いや、まずいものがすきなわけじゃないよ。でも俺がおいしいって書いても、誰にも通じるってもんじゃないだろうとつい思っちゃう。

山田さん

山田 ああ、なるほど。

 俺も他人に対して「これが絶対うまい!」とは言い切れないなぁ。久住さんがいうような味覚の個人差の問題もあるし、なんか恥ずかしさみたいなものもあって。ご飯って、腹が減ってるときに食えば、たいていのものはうまいですよね。それ以上の部分でおいしいとかまずいとかいうのは基本、贅沢なわけですよ。贅沢なことをことさらに言い立てるのって、なんか品がないじゃないですか。

久住 品がないよ、本当に。それはそうだと思うよ。

山田 おいしきゃおいしかったで、ごちそうさま。まずくても、ごちそうさま。それでいいじゃないかって。

久住 いいじゃないね。

山田 だから本当は「これがうまい!」とか言いたくないんですよ。世間では味にこだわるのがいいことみたいに言われてるけど、こだわりすぎるのは品がないし、面倒臭い。

――そうはいっても、「同じお金を使うなら、うまいものが食いたいな」みたいな感じの、非常に虫のいいというか、欲張ったというか、そういう気持ちもありませんか。

山田 あるでしょうね。でも、まさにそういう気持ちこそが、飯を食うことを面倒な作業にしてしまっているわけですよ。『男飯』は、むしろそういう煩悩から解放されて、もっと気楽に食いたいっていうのがコンセプト。世の中、そんなにうまいものに対して貪欲な人ばかりじゃないでしょう? 俺みたいに、普通に牛丼屋やファミレスで満足してる人も多いはず。そういう人たちが何も考えず気軽に食えるお店を紹介したかったんですよ。

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