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需要がなくても、つくってしまえば国が面倒見てくれる~『血税空港』
森 功著(評者:近藤 正高)

幻冬舎新書、760円(税別)

  • 近藤 正高

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2009年6月23日(火)

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評者の読了時間7時間06分

血税空港──本日も遠く高く不便な空の便』 森 功著、幻冬舎新書、760円(税別)

 羽田空港では目下、4本目の滑走路が建設中だ。空港南端に開設されたプレハブの展望施設では、工事現場が一般に公開されている。

 この滑走路、空港の沖合いに配置される計画なのだが、一部が多摩川の河口にかかるため、流れを堰き止めないよう桟橋になっていたり、また東京港に出入りする船舶の航路を変更する必要があったりと、かなり“無理してる感”は否めない。

 しかし、2010年にこの滑走路の供用が開始されたあかつきには、羽田空港における年間発着数は現在の30万7千回から、さらに10万回も枠が増えることになるという。新滑走路と並行して空港敷地内では「国際線地区」として新たな旅客、貨物ターミナルなどの整備も進められている。

 周知のとおり、1978年に成田空港が開港して以来、国際線は成田、国内線は羽田と分散されてきた。しかし現在では、深夜早朝時間帯にかぎってとはいえ、羽田にもアジアを中心に国際定期便が就航している。現在進行中の各工事は、本格的な羽田の再国際化に向けた布石なのだろう……と、僕はそう思い込んでいた。

 だが、本書によれば、国土交通省にとって、羽田の国際化はあくまでも建前にすぎず、周辺住民への騒音問題などから、拡張や深夜早朝便の就航が困難でキャパシティの不足している成田を補助する、というぐらいの意味合いしかないという。

 その証拠に、羽田から海外に飛ばすにしても、国内線最長となる石垣空港までの1947km以内に制限されるという、いわゆる「ペリメータ規制」が存在する。その規制のもと、上海の虹橋空港、ソウルの金浦空港などへ定期的に飛行機が飛び、人気路線となっているものの、これら路線は「定期便」ではなく、「定期チャーター便」という奇妙な名称で呼ばれている。本来貸切の特別便を意味するチャーター便とは異なり、普通にチケットをインターネットや空港の窓口で販売しているにもかかわらず、である。

 羽田の新滑走路完成で増える10万回の発着枠も、国際線には当初わずか3万回しか割り当てられなかった(東京都や神奈川県の意向を受けて、結果的に6万回で落ち着いたのだが)。そこまでして国交省は、羽田を国際空港と認めることを拒んでいるのだ。

「オープンスカイ」に乗り遅れた日本

 現在、世界は「オープンスカイ」と呼ばれる空の自由化の時代に突入し、各国の航空会社が競争を激化させている。だが、羽田をめぐる上記のような現状を見るだけでも、日本の航空行政がその大きな波にいかに乗り遅れているかうかがい知れよう。

 気鋭のノンフィクションライターによる本書は、こうした日本の航空行政の実態を、綿密な取材と豊富なデータによって告発する(ちなみに、本書は小サイトでの連載「閉ざされた日本の空」を大幅に加筆修正したものである)。

 従来、世界中の国際線の開設は、すべて政府同士の交渉で決めなければならなかった。それがこの30年ほどで、アメリカを中心に徐々に自由化がはかられてゆく。一言でいえば、オープンスカイによって、航空会社は相手国の空港に自由に路線を開設できるようになったのだ。もちろん逆に、採算が取れなければ路線を廃止することも航空会社の自由になったわけだが。

 こうした変革に合わせてアジアも含む世界各国で、国際競争力を持った大規模な基幹空港があいついで建設されている。タイのスワンナプーム空港や韓国の仁川空港、中国・上海の浦東空港はその代表格で、とりわけ仁川と浦東は、長らくアジアのゲートウェイとして一日の長があったとされる成田の地位を脅かしている。

 日本でも安倍政権時代の2006年に「アジア・ゲートウェイ構想」が推進されるなど、オープンスカイ政策が一応始動しているものの、それは世界的な潮流とは大きくずれているというしかない。

 日本のオープンスカイとはつまるところ、海外の航空会社が求める首都圏空港の門戸は開かず、発着枠に余裕はあるものの需要のほとんどない地方空港(海外の需要がない点は、関空や中部といった大規模国際空港も変わらない)を開放するというものだからだ。

 ここには先述の成田と羽田の旧態依然とした位置づけに加え、全国の地方空港の経営問題が深くかかわっている。

 去る6月4日には富士山静岡空港が全国98番目の空港として開港、来年には茨城空港の開港も予定されている。だが、いずれも果たして採算が取れるものなのか、素人目にも疑わしい。事実、ほとんどの地方空港は、航空会社に人気がなく、便数が少ないため赤字に陥っているという。

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