• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

細部をいくら寄せ集めても、学びには至らない

“真の学び”のための身体論~前田英樹・立教大学教授(後編)

2009年7月1日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

前編から読む)

 身体論を専門とする前田英樹さんは、わが身ひとつで生きていく技というものは、言葉や知識で得られるものではない、と主張する。たくさんの情報を取り込んだからといって、それが技の巧みさに達することはありえないということだ。

 前編では、およそ仕事というものは、「身体を使った技と連続している」域に達するものを指すという内容のお話をいただいた。

 だが、世の中には、我が身を離れた情報があまりに多すぎる。便利さに頼り、技を磨く機会も少ない。そんな現状と私たちはどう向き合っていけばいいのか。引き続き、前田さんに聞いた。

前田英樹(まえだ・ひでき)

 1951年大阪生まれ。中央大学大学院文学研究科修了。現在、立教大学現代心理学部教授。19歳より古流剣術の新陰流を学び、「新陰流・武術探求会」を主宰。主な著書に『独学の精神』(ちくま新書)『倫理という力』(講談社現代新書)『剣の思想』(甲野善紀氏との共著・青土社)など。

--前編では、身体の動きと道具が一体化するような「技と連続できる仕事」をすれば、人はそこにやりがいを感じられるとのお話でした。日本には、職人をはじめ芸能、武術の達人を尊ぶ気風がありますが、これも巧みな技が見せる深さを知ってのことかもしれませんね。

前田:日本に限らず、おおむねアジアにはそういう文化があると思います。残念ながら、近代において技が成り立ちにくいのは、身体と別に成り立つ工業や産業のメカニズムが作られたからです。

 世の中が便利になるほど、限りなく人間の側に問題が出てくる。身体を使って働かなくても済むようになると、努力し、工夫することが少なくなるからです。そうなると上達が何を意味するのかわからなくなります。

「君子は上達し、小人は下達す」

前田:『論語』曰く「君子は上達し、小人は下達す」。上達は、何かを極め、血肉化していくということ。そして立派になっていくということでしょう。専門家が情報を集めて口がうまくなるのは下達ですよ。

--いまでは“立派になる”とは、人格の陶冶と結びつくより、名声や地位の向上を指すほうが多いかもしれないですね。

前田:それが近代というものです。名声や地位といった“記号”を評価し、その効果的な働きを期待しようとする。

 たとえば、紙幣は記号ですが、それを集め、効果的に使うことが現代における能力の基準になっています。為替市場における、紙幣によって紙幣を買う行為は、操作であって努力でも技でもありません。

 もはや紙幣そのものが電子化、情報化されている。記号の流通の中で、物質的な豊かさが成り立っているということは、私たちの暮らしは、極度に抽象的になっているということです。

「豊かさ」「質素」とは何が基準か?

--人々は生活の抽象性に耐えかねるからこそ、職場において鬱をはじめとした心の病にかかってしまうのでしょうか?

前田:そうかもしれません。かといって、「本当に価値のあるものは記号やお金ではないんだ」と言って、私たちを取り巻く環境をいっさい否定するならば、それはそれで覚悟が必要です。近代そのものを問い直すことになるからです。

コメント0

「カラダを言葉で科学する」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

全体の2~3割の人でも理解し、動き出してくれれば、会社は急速に変わります。

中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長