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「有能な部下はいらない!」上司の嫉妬と出世欲

2009年6月25日(木)

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 男の嫉妬は本当に、怖い。いや、実際には男・女は関係ないのだろうが、それでもやはり男の嫉妬の深さと、いやらしさを痛感することの方が多いように思う。だって男の嫉妬の多くは、いわゆる「出世」ってヤツに絡む、けっこう醜いものがあるわけで…。そもそも嫉妬という字は、なぜどちらも「女偏」なんだ? どっちか1つでもいいから、「男偏」に変えたっていいじゃぁないか、などと本気で思ってしまうのである。

 「僕たちの年代の多くは、A氏に憧れてこの会社に入ったんです。僕もその1人。僕もあんな仕事をしてみたい、世の中に大旋風を巻き起こしたいなんて、青い考えで入社しました。でもね、そのA氏が晩年どうなったかというと、“窓際”ですよ。昨年定年を迎えて、今は小さな関連会社に行きましたけど、役職はないし、ヒラですよ。要は嫉妬。男の嫉妬は、ホント醜い」

 これは、ある製造関係の会社に勤める知人の話だ。

 「部下はみんな、A氏を伝説の男だと言って、リスペクトしていた。A氏の話に誰もが耳を傾けたし、誰もが彼のまねをした。そういうことも、嫉妬の原因になったんでしょうね。上からはやたらと煙たがられて、あることないことデッチあげられて、つぶされたんです」

 「みんな表向きは、絶対にそういう態度を悟られないようにしてますけどね。でもA氏の扱われ方を見たら、嫉妬以外の何物でもない。サラリーマン社会で出世するには、どんなモノを作ったかじゃないんです。ラインの上司、つまり誰にどれだけ好かれるかってことの方が大事。ゴルフやって、カラオケ行って…。悲しいけど、これが現実なんですよね」

嫉妬の感情は誰でも持っている

 伝説の男を窓際に追いやった、男の嫉妬。自分よりも有能だと思う部下をつぶす上司や同僚たち。こういう嫉妬劇は、何も今始まったことではない。

 例えば源頼朝の義経への仕打ちなんて(いきなり日本史ですが)、誰もが知る過去最大の「男の嫉妬」劇。源平合戦の最大の功労者である義経を、「勝手に判官の地位を得たから」などと “いいがかり”をつけて追いやったのは、嫉妬以外の何物でもない。

 異母兄弟で、もともと「自分の方が上」と思っていただけに、頼朝の自尊心が傷つけられた。自分の方が上であることを誇示したいだけで、相手の足を引っ張った典型だと言えるだろう。

 また、シェークスピアの戯曲「オセロ」などは、嫉妬の怖さを描いた名作だ。ベニスの優秀な武将だったオセロは、副官に任命されなかったことを不服に思う部下イアーゴが画策した、「妻デズデモーナが浮気をしている」という陰謀にまんまとひっかかり、嫉妬に狂い、最後は最愛の妻を殺してしまう。

 嫉妬は人の善悪の判断を狂わせ、道理や理性のすべてを奪い去る。ちなみにオセロの異性への嫉妬心は、オセロ症候群という名で現代まで引き継がれている。

 他人を羨むおぞましい感情である、嫉妬。
 他人をつぶし、最悪の場合、殺してしまうほどの魔力を持つ恐ろしい感情だ。

 「お~、怖い」と、まるで他人事のように言っているアナタだって、いつ嫉妬に狂うか分からない。おそらくすべての人間が、嫉妬という感情を心の奥底に持ち合わせているのだ。

 しかも、心の距離感が近い相手であればあるほど、嫉妬心が強まることがある。相手が上がっていくと、自分だけが置いてきぼりを食らった気になるのだ。特に自己愛が強く自尊心の高い人や、周りの評価ばかりを気にする人ほど、そういう傾向が強まるとされている。

 もともと村社会だった日本では、自分たちの自尊心や自己愛が傷つかないような社会構造を作り続けてきた。出る杭を打ち、みんなで仲良く、普通が一番、という価値観が古くから宿っているため、目立つ人を引きずり下ろそうとする集団心理が働きやすい。

 そういえば私も、中学2年で日本に帰国した時に、「日本って、目立っちゃいけないんだ」と痛感したことがある。“Independence(自立)”をやたらに主張する米国と、“和”をやたらに強調する日本。もちろん和は大切だし必要なのだが、和に過剰な安心感を求めようとするあまり、出る杭が打たれてしまうのだ。

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「「有能な部下はいらない!」上司の嫉妬と出世欲」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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安形 哲夫 ジェイテクト社長