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鼻を失った男が肉眼で観察した星空

大望遠鏡の400年から量子コンピューターまで

  • 松島 駿二郎

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2009年6月26日(金)

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 星空を見上げよう。そこに見えるのは宇宙という果てしない空間だ。宇宙の奥の、もっと奥を覗いてみたい。空間を彩るのは無数の星々だ。その星空をもっと深くもっと鮮明に見たいと言う男たちが、巨大望遠鏡に挑んだ、ちょっとロマンチックな物語。

◇   ◇   ◇

望遠鏡400年物語 大望遠鏡に魅せられた男たち』 フレッド・ワトソン著 長沢工/永山淳子訳 地人書館刊 2800円(税別)

 技術的な進歩は何であれ、小型化によって推し進められることが多い。しかし、夜空を覗き、星の様子を観察する望遠鏡だけは違う。誰も彼もが今あるものより、さらに大口径の望遠鏡を開発することに、全勢力を注ぎ込んできた。それを天文学者は「大口径熱」と呼ぶ。本書はこの「大口径熱」の物語である。

望遠鏡400年物語 大望遠鏡に魅せられた男たち』 フレッド・ワトソン著 長沢工/永山淳子訳

 天文学は占星術の昔から一貫して進歩し続けてきた。今では星空に巨大なアンテナを向ける電波望遠鏡まである。人にとって不可視光線(電波)を星空で観測するためだ。しかし、天文学者はあくまでも大口径の可視光線の望遠鏡(光学望遠鏡)にこだわる。

 天体望遠鏡の精度は分解能で示される。単位は秒角と呼ばれ、1秒角は1度の3600分の1となる。5キロ先で500円玉を手で持ち上げてみよう。それを観測できるのが、直径1メートルの反射鏡を持った望遠鏡だ。これが1秒角。

 直径4メートルの鏡を持った反射望遠鏡なら、冥王星の表面まで見える。反射鏡が大きくなればなるほど分解能は良くなる。しかし、分解能を高めていく過程で大きな壁が立ち塞がった。それは地球の大気の揺らぎである。揺らぎは人の目にはキラキラ輝く星として感知される。雲のない空でも星は煌めく。この揺らぎのおかげで、せっかく0・03秒角まで望遠鏡の性能を上げても、その大きさは膨れ上がって3秒角になってしまう。しかも揺らぎを消し去る術はない。

ハッブル寸前までの望遠鏡史

 そして考え出されたのが宇宙望遠鏡だった。ハッブルという宇宙望遠鏡が送ってきた宇宙の星雲、宇宙の果てにある映像は忘れがたい。本書はハッブル寸前まで、望遠鏡の大型化に身を投じてきた男たちの物語だ。

 揺らぎのことを天文学者は「シーイング」と呼ぶ。シーイングの値を少しでもよくするために、天文学者たちは地の果てでも、地上のいかなる所でも出掛けて行って、大型望遠鏡を建設した。しかし、どこでもシーイングのために、望遠鏡本来の性能を引き出せるところはない。

 でも天文学者たちは常にシーイングの向上に挑み続ける。1980年代後半、シーイングの壁を打ち破る新しいテクノロジーが生まれた。揺らぎがあろうがなかろうが、宇宙からの真像は揺らぎ像の中に含まれている。地球大気によるボケ(揺らぎ)を光学的に消し去る装置を作り出した。これは一種の奇術である。その奇術は波面補償光学という。訳が分からないだけ奇術に近い。これを従来の望遠鏡に付属装置として設置すると、シーイングは望遠鏡本来の性能に見合ったものが得られる。

 これは望遠鏡発達史上、ちょっとした革命ではないか。

 ここまできたところで、本書は16世紀後半に時代をさかのぼる。それは、ドイツの神学校教授の家で開催された晩餐会から始まる。2人の若い男が激しい口論を始めた。誰も止める間もないうちに口論は決闘に発展した。

コメント1件コメント/レビュー

 フラクタルなど、カオスがらみの話題を含んだ本であったら、個人的にはもっと興味深い本となったと思います。(2009/06/26)

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 フラクタルなど、カオスがらみの話題を含んだ本であったら、個人的にはもっと興味深い本となったと思います。(2009/06/26)

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