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「売れない時代」を「ダメ」と「ムダ」で突破する

「マクロス・フロンティア」河森正治監督・1

  • 渡辺由美子

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2009年6月30日(火)

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 「どんな方法を取ればヒットするか」という常識的なノウハウを構築していけばいくほど、売れなくなっていくような気がしていた--1巻あたり2万枚でヒットといわれる中、DVD、ブルーレイを合わせ全9巻で、Blu-ray Discが33万枚、DVDも32万枚のセールスを記録、スマッシュヒットとなったアニメ「マクロス・フロンティア(マクロスF)」。音楽CDもシングル・アルバム7作品合計で100万枚を突破した。

 時代の欲望を形にするアニメーション監督に聞く連載、今回登場するのはこの「マクロスF」の河森正治監督。彼が状況の突破口と考えたのは、時代に溢れる「正解を求める」考え方そのものを捨てることだった。

●作品紹介●

西暦2059年。異星人との星間戦争で滅亡の危機に瀕した地球人類は、種の存続を賭けて新天地を求め、銀河の各方面へと旅立っていった。数えて25番目となる超長距離移民船団「マクロス・フロンティア」の冒険を描く。1999年(!)を舞台にした、1982-83年の大ヒット作「超時空要塞マクロス」の続編でもある。【「マクロスF」公式サイトのリンクはこちら

―― メガヒットした「マクロスFrontier(以下マクロスF)」。今はアニメに限らず、作り手、売り手側には厳しい時代ですね。ジャンル全体を支えてきたDVDの売り上げが落ちていく中で、競合商品が大量に提供されています。

 それこそ世界中で、新しいビジネスモデルが模索されているわけですが、その中で河森監督はこのメガヒット作をどのように仕掛けられたのでしょうか。

河森正治(かわもり しょうじ)
1960年、富山県生まれ。アニメーション監督、メカデザイナー。慶應義塾大学工学部在学中からデザインの仕事をはじめ、スタジオぬえに入社。82年のテレビアニメ「超時空要塞マクロス」で戦闘機がロボットに完全変形する“バルキリー”のデザインを手掛け、84年、映画「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」で初監督を務める。95年にアニメーション制作会社サテライトの設立に参加。同社にて、「地球少女アルジュナ」(2001年TV)、「マクロスゼロ」(02年OVA)、「創聖のアクエリオン」(05年TV/07年劇場版)、「マクロス・フロンティア」(08年TV)、「バスカッシュ」(09年TV)などを手がける。現在、劇場版「マクロスF」を製作中。SONYの「AIBO(ERS-220)」や日産のCMに登場した「パワード・スーツ デュアリス」のデザインも手掛けている(写真:星山 善一 以下同)

河森 今までの方法論では売れなくなってきているというのは、もちろんアニメも同じです。

 「マス」を相手にしたマーケットがやばくなってきたのも皆さんご承知の通りですね。昔だったら、自分ももう少し好き勝手に言えたんですよ。「いいじゃん、一部の趣味人が楽しんでくれれば」と。ところが今はそう言った途端、本当に(DVDが)1000本も売れなくなるみたいな(苦笑)。僕らはそういうクリティカルな時代を生きている。

―― 景気は悪くなる、提供される商品は多すぎる、大量なコンテンツの中で何が面白いのかという情報収集に疲れて「間違いなさそうなのを誰か選んでくれ」ということで、ランキングの上位に選ばれたものだけがメガヒットとなり、そうでないものは全く売れないという二極化が起こる。

ヒットのノウハウが固まるほど、全体では売れなくなる

河森 そうです。今って、「どんな方法を取ればヒットするか」という常識的なノウハウを構築していけばいくほど、売れなくなっていくような気がしていたんですよ。

 売るための方法論をあれこれ考えた理由はもうひとつ、このままオリジナルのアニメーション(コミックや小説などの原作付きではないアニメ)が滅んでしまうと僕らとしては大変にやばいので、オリジナルアニメも売れるんだという実績を1回作っておかないと、という意識もありました。

 それで、実験をしてみたんです。ひと言で言えば「多様性」というものをどこまで作品に入れられるかという。

―― 「マクロスF」の前身で、初監督をされた「超時空要塞マクロス」は、1980年代の大ヒット作でした。戦闘機や戦艦が星間戦争をしているところに、リン・ミンメイという女の子の歌が、「文化」を知らなかった侵略者側にカルチャーショックを与え、戦争が終わるという。あの頃から、戦闘機あり美少女ありという「多様性」はあったと思いますが。

河森 多様性があったようで、充分ではなかったんです。大きな流れとしては1つの方向にしか向かっていなかった。当時はバブル期で、その流れに乗ったと思うのですが。ひとことでいえば「テクノロジー万歳」というやつですね。

 今回の「マクロスF」は、正反対のベクトルも意識しているんです。表面には出さない裏テーマとして、もっと人間とか自然の生理に近いようなフィジカルなところを入れたいと。

「マクロスF」に盛り込まれた多様性とは

―― それは、時代が「テクノロジー万歳」から、「自然」のほうへ向かっているという解釈ですか。

河森 いえ、どちらか一方ではマズイ、ということなんです。テクノロジーはもちろんあっていいし、自然があってもいい。

 一方向にだけ偏っていることがマズイんだと思います。

 今は、「これからは○○の方向で行くのが良い」という、「正解」というものを探しすぎなんじゃないかと思うんです。みんな「どこかにある正解」を求めて迷走しているという。

 アメリカ国民がオバマさんを自分たちを助けてくれる唯一の存在として支持しているのも、正解を求める心の有り様のひとつじゃないかと思うんですよ。みんなが、ロジックでも英雄でも、揺るぎない正解が欲しいという。

―― おっしゃる通り、閉塞感を味わっている中で、そこから出られる解を探しているのだと思います。

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