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おっちょこちょいのヒマ人、「世論」を作る

2009年6月29日(月)

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 東国原英夫宮崎県知事の国政出馬問題をめぐる報道は、初手から大仰だった。

 カメラの放列の前で展開される出馬依頼の会談。両手で握手する古賀誠選挙対策委員長(自民)と東国原知事のツーショット。クルマの中から顔を出して「宮崎県のために国政に」と訴える横顔。すべてに映像がついている。紙芝居みたいに。それも、お約束通りのカメラ位置からの、狙い通りのショットが。そして、突然の演説。宮崎県民の皆さん、と、カメラ目線で、東国原知事は語るのだ。移動中のクルマの後部座席から顔を出しての撮影なのに。なんという抜け目のなさ。

 それもそのはず、今回の出馬騒ぎは、はじめから最後まで、すべてがカメラの前で展開されていた。

 持ちつ持たれつ。

 つまり、われわれは、ネタ枯れのマスコミと、露出機会を稼ぎたい政治家による、婚約会見ライクなニュース製造現場に立ち会っていたのである。

 週末に向けて、東国原知事のテレビ出演は、さらに加速する。

 金曜日の夕方は「総力報道! The NEWS」(TBS)に宮崎から遠隔生出演し、土曜日には「情報7days ニュースキャスター」(同)のスタジオに登場している。

 映画の宣伝のために主演の男女の交際報道をリークするプロモーション手法にも似た、いっそ懐かしいプロパガンダだ。

 話題の焦点は、東国原知事が、古賀選対委員長に「出馬の条件」として提示したふたつの項目だった。

「私を総裁候補として総選挙に臨む」
「全国知事会の要望を党政権公約(マニフェスト)に盛り込む」

 この荒唐無稽な要求を、テレビ各局は、芸人出身の知事が自民党の選対委員長を手玉にとった一大痛快事として伝えた。

 「条件」が本気なのかどうかについては、各方面で様々な見方が紹介された。以下に代表的な例を挙げる。

1. 無論ブラフだよ:自分を高く売るために法外な言い値を言ってみただけ。海辺の貝殻売りと同じ。露天商のマキャベリズム。手の内はせいぜいワンペア。相手が折れるのを待ってる。震える心で。

2. 実は本気:というのもこの人は知事になって以来、著しく舞い上がってるから。昔の、天然の「そのまんま」じゃない。完全に自己肥大してる。イソップのカエルみたいに。「天下を取ってやる」と、マジでそう思っている。脳内「俺の空」状態。付ける薬無し。じきに破裂するよ。ぱあああぁぁーんって(笑)。

3. てか、虚勢でしょ:会ってみてナマ古賀の迫力に圧倒されたんだと思うな。顔コワイし。で、ビビってないことを強調しようと思って、ついつい過大な要求をしてしまった、と、そういう姿だな。霞町あたりのビストロに迷い込んだカッペの反応に近い。緊張のあまり「プロヴァンス風のパエリヤをフォアグラ添えで焼いてくれないか」とか、支離滅裂な注文をして、ギャルソンを圧倒しにかかる。笑われるだけなのに。このあたりの行動パターンについては、たぶん別れた嫁さんが一番詳しいと思うな。誰か取材に行ってくれよ。

4. むしろ弁解じゃね?:要するに、宮崎の有権者に対して何かもっともらしい転進の理由を残しておきたかったってことだよ。もっともらしくなくても、とにかく何かデカいことを言って、「これも宮崎のためなんだよ」式のそういうストーリーをデッチ上げたかったのだと思うな。ほら、いるじゃないか、部下のアポイントを横取りしておいて「これはお前のためなんだぞ」とか抜かす課長とかがさ。あれと同じ。あの年頃の間管理職って、言い訳になると急にアタマが冴えるから。

5. 芝居でしょ:シナリオを書いてるヤツが誰か別にいるのだよ。どうせ。あのたわけた条件もそいつの入れ知恵。知事閣下は台本通りに小芝居を打ってるだけ。それもこれも、条件を飲むかどうかなんて、はなっからどっちでも良いわけでさ、デカいニュースになればそれで第一段階は成功なんだよ。で、知事会と道路族が結託して、「地方分権」ぐらいなスローガンをブチ上げて選挙戦に合流するわけだよ。ワンイシューポリティックスってやつさ。詐欺師の常道。話を単純化して二者択一を迫る手口。買うのか、でなければ、一生デブのままで過ごすのか? みたいな。そういう話をして。もちろん、狙いは道路利権。で、小泉改革で見直しになったゾンビみたいな公共事業が息を吹き返すわけさ。日本中で。

 いずれももっともな分析だ。たぶん、全部当たりなのだと思う。

 つまり、東国原県知事は、大真面目の本気でハッタリをカマしながら虚勢を張り、ついでのことに県民向けの弁解をアナウンスして、その裏で、道路族の議員と結託して宮崎を土建化せんとたくらんでもいる。そういうことなのであろう。

 週末のテレビを見ると、週末向けの情報ワイド番組に出てくる政治家や、コメンテーターの先生方も含めて、誰もが「世論」という架空の怪物を相手に、腰の引けたダンスを展開している感じがした。

 そして、彼らの前提の中では、「世論」は、いつも東国原氏の味方だということになっている。事実、あらゆる調査がそれを裏付けている。

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「おっちょこちょいのヒマ人、「世論」を作る」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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