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『足の裏に影はあるか?ないか?』を哲学してみよう
~とことん考えることの効用

2009年7月1日(水)

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足の裏に影はあるか?ないか? 哲学随想』 入不二基義著、朝日出版社、1800円(税抜き)

 本書は哲学エッセイの本だが、何について考えるのかが、ちょっと変わっている。たとえば、タイトルにある「足の裏に影はあるか?ないか?」だ。

 著者の小学生の長男が、散歩の途中に訊ねた。

「お父さん、足の裏の所の地面には、影はあるのかなぁ。そりゃ、足を地面から離せば影は見つかるけれど、足を地面に降ろしたときは、足の裏に影はあるの? ないの?」

 「ないに決まっているよな」。ワタシは、思わず微笑していた。考えるまでもない。足の裏で塞がって、影を見ることなどできない。子供はたわいもないことに疑問を抱くものだなあと、ページをめくりかけていた。

 すると、どうか。一緒に散歩していた著者の友人は、「影はあるんじゃないかな」と答えたという。

 理屈はこうだ。

 影は、光が遮られてできるもの。光が届いていない所には、影ができる。だから、足の裏の地面には、影はある。

 子供は、本当かなぁと納得しない。そこで著者が別の友人に訊ねてみた。もうひとりの友人の答えは、こう考えたらどうだろうというものだった。

 踵を地面につけたまま、すこしずつ爪先を浮かしてみる。すると、地面に影があらわれる。今度は、爪先を降ろしてゆく。地面に接するぎりぎりのところまで、影はある。「だとすれば、影はあるんじゃないの?」

 こんな具合に、著者はひとに訊き、長男と「ある」とか「ない」とか話していた。そこに次男と三男が加わり、場は騒がしくなる。さらに別のひとに訊いてみる。

 しまいには、「原子・分子レベルで考えれば必ず隙間があって、そこに光は侵入している。だから、足の裏の所にも光は当たっているのだ」と答えるひとまであらわれ、「ある」とも「ない」とも絞り切れなくなる。

排除によって「私たち」が生まれる

 当初は簡単に思えた問題なのに、考えはじめると、いくつものモノの見方があることに驚かされる。どれもが正解のようだし、著者もすぐにどれかに軍配をあげるわけではない。そもそも「正解」とは何かという疑問さえ芽生えてくる。という具合に、時間をかけて「考える」ということのトレーニングになっている。

 しかし、ワタシは編集者のSさんからすすめられでもしなければ、本書を手にすることはなかったとおもう。

「なんでこんなに腹立たしいのかわからないんだけど」

 ある映画を観終えたあと、ワタシは電話でもやもやとする違和感についてSさんに吐き出していた。

 作品の出来如何の問題であれば、「ここがダメなんだ」とポイントを数えあげるうちに、それなりに怒りは収束していくものだ。

 出演者は素人ばかりのその映画の監督は、上映後のティーチインの場で、開口一番、作品としての未熟ぶりを表明していた。そのうえで、「一銭の得にもならない作品づくりに参加してくれた人達の意欲を、みなさんもまた汲み取ってほしい」という。

 あらかじめ、批評は封じられた格好だ。

 これに続いて、「くやしいです」。出演者のひとりが、自分の演技の未熟さについて、しきりと反省する。悔しいとかいう問題ではない。俺がおれがのウケねらいがうっとおしいものだったが、それはまあいい。

 出演者たちの短くはない「ひと言」が一巡すると、客席にマイクを渡し、監督が「感想を聞かせてほしい」という。

 さっさと席を立てばよかったと後悔したのはこのときだった。一人、二人、三人と、「意欲」を評価する人が続くではないか……。

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