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「むしや」になった少年、オランダの“虫愛ずる姫君”

心動くまま没頭することがもたらす、試練と幸福

  • 松島 駿二郎

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2009年7月3日(金)

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クラゲの光に魅せられて ノーベル化学賞の原点』 下村脩著 朝日新聞出版刊 1000円(税別)

 夜、暗い海を船で走っていると、航跡の泡立ちの中で盛んに光っているものを目にした人は多いだろう。

 ノーベル物理学賞に比べると化学賞は地味な存在だ。化学研究そのものが地味であり、根気と忍耐を求められるので、専門的な化学研究をしようとする人は少ない。

 海中でお椀のような形を広げ、その縁で発光するオワンクラゲを研究する人などいっそう少ないだろう。しかし、著者の下村はプリンストン大学研究所で、オワンクラゲの発光の仕組みを解き明かそうと、米国に渡った。1960年のことだった。

 オワンクラゲの発光要素の結晶を作れという指導教官の指示が出た。オワンクラゲが大量に浜辺に押し寄せ、浅瀬を歩く時、オワンクラゲの上を歩ける、というワシントン州の小さな島に拠点を構え、採集と研究に打ち込むことになった。

 当時、ホタルイカなどの研究で発光物質は突き止められていた。それをルシフェリンといった。ルシフェリンをオワンクラゲの光る外の輪から抽出する仕事は難しかった。万策尽きた頃、下村は1人、海でボートを漕いでいた。その時下村は閃いた。天啓だった。

 簡単なことだった。光るにはルシフェリンがタンパク質と反応しているはずだ! 酸性度の微妙に違う緩衝液を作り、それらとルシフェリンを反応させてみた。するとある濃度のところで、ルシフェリンは発光しなくなった。

 何かがつかめたと思いながら、実験に使った抽出液の残りを流しに捨てた。すると流し全体がふわっと青く明るく発光した。下村がノーベル賞級の発見を成し遂げた瞬間だった。クラゲの発光の仕組みが突き止められた。

 イクリオンという2万個の球状タンパクの集合が発見される糸口になった出来事だった。イクリオンと同時にGFPという物質も見つかった。これも発光機能を持っているが、イクリオンが青く光るのに対し、GFPは紫外線に反応して緑色に発光する。

 下村はGFP発見の時には何の役に立つのか思い至らなかった。ところがGFPは思わぬ力を秘めていた。現在ではGFPはガンの最初期の細胞を見つけだし、それに取りついて発光させるという研究が進んでいるという。

 ガンは早期発見がカギだ。GFPを医療現場に導入すれば、今までの検査では見つからなかった細胞単位でのガンが見つかるだろう。

 これは人類にとっての福音だ。

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