• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

最後に推理したのは“お濠の向こう”~『松本清張の「遺言」』原 武史著(評:澁川 祐子)

文春新書、800円(税別)

  • 澁川 祐子

バックナンバー

2009年7月7日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

評者の読了時間3時間30分

松本清張の「遺言」──『神々の乱心』を読み解く 』 原 武史著、文春新書、800円(税別)

 今年は国民的作家・松本清張の生誕100年にあたる。清張は『点と線』『砂の器』など優れた推理小説を発表する一方で、戦前までの昭和史を膨大な資料によって明らかにしたノンフィクション大作『昭和史発掘』(全9巻)も残している。

 フィクションとノンフィクション、その両方の手腕を活かした作品──それが本書のテーマにもなった遺作『神々の乱心』である。

 虚実入り混じる小説『神々の乱心』は、1990年から「週刊文春」に連載され、1992年に松本が脳出血で倒れ絶筆となるまで書き続けられた未完の長編だ。文庫版に付記されている〔編集部註〕では、

《連載中から週刊誌の切り抜きに手を入れ始め、前半部分の決定稿を藤井(評者註:担当編集者の藤井康栄)に渡していた。亡くなったとき、書斎の机のうえには赤字の入った後半部分の切り抜きが置かれてあった》

 と出版秘話が語られている。そうした松本の陰なる努力のおかげで、この作品は未完であるにも関わらず、いまも文庫(上下巻)で読むことができる。

 ただ未完とはいえ、実際に読んでみると「ほぼ終わり」まで筆が進んでいたことがわかる。殺人事件のタネ明かしはされ、あとはエンディングを待つばかり。登場人物勢揃いの派手なクライマックスが準備されていただろうことは、謎かけに疎い私でも容易に想像できる。

 その未完の推理小説のエンディングを推理する、というのが本書だ。

天皇制という課題に小説の形で決着をつける

 著者は、『大正天皇』『昭和天皇』など最新の天皇研究をリードする日本政治思想史の研究者。また、『鉄道ひとつばなし』といった鉄道に関するエッセイも数多く発表しており、日本の鉄道史にも造詣が深いことでも知られる。終戦直後のお召し列車(天皇・皇后・皇太后が利用するために特別に運行される列車)の運行状況から昭和天皇の姿を浮き彫りにするなど、鉄道と天皇を結びつけたユニークな論も展開している。

 そんな著者がなぜ、一編の推理小説を題材に一冊まるごとの紙幅を費やしたのか。

 それは、『神々の乱心』が半端でない資料収集と鋭い観察眼に基づいて描かれた昭和初期の“お濠の向こう”の物語であり、著者が考えるに〈自らの死期が迫ったときに、天皇制という長年の課題に小説の形で決着をつけ、昭和を総括しようとした作品〉だからだ。

 本書から小説のあらすじを引用すると、

〈大正末期に満州で「月辰会」という新興宗教をおこした教祖が帰国して埼玉県に本部を置き、宮中へと進出する。そして皇位の象徴とされる「三種の神器」や、特殊な宗教儀式に用いる半月形の凹面鏡をそろえて皇室を乗っ取り、昭和天皇の皇位を否定するための何らかの行動を起こそうとするまでの野望を描いた〉

 という、壮大な物語である。

コメント0

「NBO新書レビュー」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

トランプ政権のここまでの動きはスロー。

ジョセフ・ナイ 米ハーバード大学特別功労教授