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ノンケな『「薔薇族」編集長』がゲイ雑誌を創った理由
~それは男性の手紙から始まった

  • 古川 琢也

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2009年7月8日(水)

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「薔薇族」編集長』 伊藤文学著、幻冬舎アウトロー文庫、571円(税抜き)

 ゲイの権利向上に尽くしたアメリカの政治家、ハーヴェイ・ミルクの伝記映画「ミルク」がロングランしているが、わが日本におけるゲイムーブメントの牽引役といえば、1971年創刊のゲイ専門雑誌「薔薇族」をおいてほかにないだろう。

 ミルク市議の場合は彼自身が正真正銘のゲイだったのに対し、「薔薇族」を創刊し、30年にわたり編集長を務めた伊藤文学氏は女性が好きな男性、つまり「ノンケ」だった。伊藤氏の自伝『「薔薇族」編集長』には、異性愛者たる伊藤氏が同性愛雑誌の創刊を思い立つきっかけとなった、ある個人的体験が語られている。

 本書によれば、伊藤氏は大学予科の学生時代、ある女性に片思いしており、(誰もがするように)毎晩自慰に耽っていた。だが当時はまだ、「オナニーは身体に悪い」の俗説がまかり通っていた時代。それゆえに伊藤氏も、オナニーそのものの背徳感と、それを誰かに相談したくても相談できないという二重の悩みを抱えながら、結局また自慰をしてしまう毎日だったという。

 その苦しみから解放してくれたのは、彼が偶然手に取った一冊の雑誌に載っていた記事だった。それは、「オナニーは身体に害を及ぼさない」ことを論証する某科学者執筆のレポートであり、これを読んだことにより、安心してオナニーに励めるようになった、と伊藤氏は語る。

創刊1万部という賭け

 後年、父親が起こした零細出版社「第二書房」を引き継いだ伊藤氏は、その個人的な「救済体験」をもとに、真面目かつ本格的なオナニーの手引書『ひとりぼっちの性生活』を出版、ヒットさせるに至る。

 事前に期待したとおり、「この本のおかげでオナニーの罪悪感から解かれた」といった感謝の手紙が多数寄せられるなかで、数こそ僅かだが、「自分の場合、同性を想って自慰をしている」と告白する、男性からの手紙があった。

 普通の人であれば、「そういう(風変わりな)手紙もまぎれていた」で片づけ、それ以上思いを巡らせることもなかっただろう。伊藤氏も当初、「世の中にはこういう人もいるのか」と、素朴な驚きを感じたという。だが彼の場合、それ「だけ」で終わらず、次のように考えた。

「こういう人たちに向けた本を出してあげたら、なおのこと気持ちがすっきりするはずだ」

 つまり伊藤氏は、「他人には話せない悩みがある」という一点に敏感に反応し、ゲイの人々と、若いころの自分自身を重ね合わせたのである。

 本書には「薔薇族」創刊までのいくつかの紆余曲折も語られているが、特に興味深いのは、伊藤氏が雑誌コード取得のため、取次大手トーハンを訪問した際のエピソードだ。

 雑誌の見本を見せられた同社の担当者が「こんな雑誌誰が読むの? 男も買わないし、女も買わないじゃない」と身も蓋もない反応をしたというが、これは当時の人としては仕方ないことだろう。

 そのような周囲の無理解にもかかわらず、伊藤氏の自信は揺るがなかった。

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