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空を「青以外」で塗らせるのは意外に難しい

「マクロス・フロンティア」河森正治監督・3

  • 渡辺由美子

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2009年7月14日(火)

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 イマジネーションを絵にする仕事である、テレビシリーズのアニメ監督は「時代の欲望」をどう捉えているのか、それを伺ってきた本連載ですが、今回は、個別の欲望に応えようとするあまりニッチ化してきた作り手側に、「多様性」をどうしたら取り戻せるか、という話になってきました。もちろん、作品としての採算もきちんと取らねばなりません。

 作品に多様性を入れ込む実験として作られ、大ヒットを記録した「マクロス・フロンティア」を題材に、「商売になる多様性」の作り方について、お話を聞いていきます。

アニメーションは、「観客に先を読まれたら終わり」

―― 今の作り手側、売り手側は、ターゲット層に向けてピンポイントに的を絞っていくようになった。ところがそれが行き過ぎて、マーケットそのものが縮んでいる。それは近代から始まった効率主義が、ついに行き着いてしまったところなのでは、というお話でした。

河森正治(かわもり しょうじ)
1960年、富山県生まれ。アニメーション監督、メカデザイナー。慶應義塾大学工学部在学中からデザインの仕事をはじめ、スタジオぬえに入社。82年のテレビアニメ「超時空要塞マクロス」で戦闘機がロボットに完全変形する“バルキリー”のデザインを手掛け、84年、映画「超時空要塞マクロス愛・おぼえていますか」で初監督を務める。95年にアニメーション制作会社サテライトの設立に参加。同社にて、「地球少女アルジュナ」(2001年 TV)、「マクロスゼロ」(02年OVA)、「創聖のアクエリオン」(05年TV/07年劇場版)、「マクロス・フロンティア」(08年TV)、「バスカッシュ」(09年TV)などを手がける。現在、劇場版「マクロスF」を製作中。SONYの「AIBO(ERS-220)」や日産のCMに登場した「パワード・スーツ デュアリス」のデザインも手掛けている(写真:星山 善一 以下同)

河森 アニメーションも、90年代初めくらいから、ビデオやLDなどのソフトを買ってくれるお客さんに向けて、よりユーザーの好みに特化して作り始めたという歴史があります。90年代が終わって2000年代になるころからさらにそういう流れが加速して。僕も「マクロスプラス」「地球少女アルジュナ」を作った頃から、アニメファン層のさらにニッチな好みに適合させるかどうか考えた。ニッチ適合は、本質的に嫌いなわけじゃないんだけれども(笑)、それではやっぱり自分の守備範囲を超えられないと思ったんですね。

 それに、アニメーションというのは、他の商品と比べてちょっと特殊なところはあるかもしれません。観客に先を読まれたら終わりなんですよ。

 もう言語化されて、現実の部分に起きていることを後で追ったらば……アニメーションって作るのに時間がかかるので、間に合わないんですよ。バラエティだったら間に合うんだろうけれども、オリジナルアニメーションの場合は作っていると、1年、2年遅れる。絶対にそれでは勝負にならないということが最初に分かっているメディアなんです。

―― アニメーションの場合は、さらに時代の先読みをしなければいけない。

河森 時代のニーズ、マーケティング的に合わせていく部分は、最終的にパッケージとして出すときには確かに重要なんですけれども、どちらかというと、まだ表面には出てない、内在化されている人々の気持ちとか場の空気をキャッチして、クリエートして、最終的に現実世界に適合させる。マーケットに出す直前の、ギリギリの段階で軌道修正をして出すみたいな、そんな感じというんですか。

―― 人々の表に出ていない気持ちや場の空気……まさに、言語化されていない「時代の欲望」ということですね。

河森 アニメーションに限りませんけれど、その欲望をお客さんに「皆さんが欲していたのは本当はこんな形ですよね」と見せてあげると、ああ、そうだったんだよとお客さんが気が付くと。

―― 「iPod」が出るまでは誰も気づかなかった「自分の持っている音楽を全部持ち歩く」欲望、みたいな話ですね。

河森 理想ではあるんですけれども、それくらいのことをしないと難しいですね。

―― でも、これだけ変化が激しいと、ずいぶん先読みが必要ですね。そういえば、毎日ウェブで記事を配信している担当編集のYさんは「ヒットする言葉が日々どんどん変わる」と驚いてました。

河森 そうでしょうね。情報過多の時代にあっては、「今自分が職場で見ているものは全て後追いのもの」、ということにもなりかねない。知らないうちに自分のいる業界、自分のいる職場、ヘタをしたら上司の顔色からしか物事が見られなくなっているかもしれない。

 それで、実際に製品化するには、何月何日までに出すとか、どの順番で出すというフォーマットはすごく大事になってくるんですけど、今は、それが逆転しちゃうことが多いんじゃないかな、という。

―― と、いいますと。

河森 最初にどんなモノを作るかという段階で、「このフォーマットに合わせるには、どう作ればよいか」になってしまうケースが多いと思うんです。「今、納品するためには、この製品の足りない点なんて考えないでとにかく作ればいいんだ」みたいなことが容易に起こる。

 結局、“期日に間に合わせるためのクリエーション”になってしまって、主従が逆転しちゃうんですよね。

 だから、僕のところでは、フォーマットに合わせる作業は、最終段階ではやるべきなんですけれども、クリエーションの部分では極力やらないようにしたいなと。詳細な設計図を作ったりとか、マーケティングをしたりしてしまうと、かえって広がらないなと。

―― 設計図やマーケティングにたいした意味はないということですか?

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