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「私の責任ですか?」~部下を裏切る上司の醜態

2009年7月9日(木)

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 日常的に遭遇するいざこざの中で、最も次元が低く、気分の悪い出来事の1つに「言った、言わない」論議がある。

 例えば、こんな具合だ。

 「頼んでおいた資料作ってくれた?」
 「えっ? あれって僕が作るものだったんですか?」
 「何、寝ぼけたこと言ってんだよ。このあいだの会議で伝えたよな」
 「えっ? 何も聞いてませんけど…」

 まだこれくらいの「言った、言わない」論議であれば、「す、すみません。僕が聞き洩らしていたんだと思います。今から、速攻で作ります。本当に申し訳ありません」と頭を下げればすむ。たとえ、本当に(上司から)聞いていなかったとしても、である。

 もちろん「本当に聞いてないのに、俺だけのせいにされるなんて…」と、悔しく思う気持ちは痛いほど分かるし、自分が言ってもいないのに、部下のせいにするような上司に頭を下げるなんて、心底、むかつく。だが、こんな時は負けるが勝ち。さっさと謝ってしまった方が利口だ。

 なぜなら、もし相手が少しでも心ある上司なら、素直に頭を下げる部下に心を動かされ、「いやいや、僕も確認しなかったので悪かったね。じゃ、すぐにやってくれるかな」などと、自分も頭を下げることだろう。内心では「う~ん。俺は確かに言ったつもりなんだけどなぁ」と納得できていなくとも、まともな上司であれば、そうするはずだ。

自分が正当だと主張すべきか?

 また、仮にこちら(部下)がむかつく気持ちを押さえて頭を下げているのに、「ちゃんと聞いていないおまえが悪いんだ。さっさとやれ!」と開き直られたとしても、そんなちっちゃくてセコい上司に長々と関わるのは時間の無駄。ちょっと悔しいが、そんなヤツのことはさっさと頭から追い出して、仕事にかかる方が自分のためだ。

 でも、こういう場合、部下としてはやっぱり悔しいし、自分の正当性は主張すべきでしょう?
 そういう方もいるだろう。

 最近「世の中、正しいことが通らない時があるんだなぁ」という捨て台詞(注)がメディアを駆け抜けたこともあったが、世の中、正当性を主張しすぎると泥沼にはまる可能性が高まるので、やっぱり辞めた方がいい。「僕は聞いていません」と自分の正当性をやたらに主張すると、「ブーメラン効果」が起こる危険性が高いのである。
(編注)鳩山邦夫前総務相が辞任の際、日本郵政社長人事に関して発した一言。

 強く出れば出るほど、相手も負けじと反発する状態を、心理学の世界では古くからブーメラン効果と呼んでいる、放り投げると、空中で曲線を描いで自分に戻ってくるブーメランになぞらえているわけだ。

 ブーメラン効果は、こんな時に生じやすい。

(1)明らかに相手が得をする場合
(2)自分が侮辱されていると感じる場合

 つまり、「僕は聞いてません。課長(部長でも、係長でも、リーダーでもいい)の勘違いじゃないですか? あの時確か課長は、ご自身でやると言っていましたよね?」などと上司を強く責めると、「いや、俺は言った。きさま部下の分際で生意気なこと言うな!」などと、相手が攻撃を強めるかもしれないのだ。

 悔しいけれど、自分の正当性を主張すればするほど、面倒くさいことになる。だからやはり、たいした内容でなければ、“利口な部下”になった方がいいのである。

 だが、世の中には「頭を下げて利口な部下になれ!」と言っても、「そんなことしたら、マジに俺の立場がなくなる!」という類の、深刻な「言った、言わない」論議もある。

 知人のA氏も、その論議に巻き込まれた1人だ。

 「ホントに信じられない。いつのまにか俺の責任になってるんだから、たまったもんじゃない。頭にきたから、さっさと辞表書いて出してきた」と、怒り心頭の面持ちでA氏(49歳)は話しだした。

コメント9件コメント/レビュー

大学教員です。学生を見ていて感じるのは、中高あたりの先生からして、責任を取ってくれないんだというということです。だから最近の学生は、徹底してリスクをとりません。無駄なことはせず、周りに合わせ、チャレンジしない。念のため補足しておくと、最近の学生は非常に優秀です。但し人のために無償で何かをする人は減っているように思います。今の30代はまだいいです。20代は、時代の変化のせいか、そういう上司(?)にあまりに恵まれていません。(2009/07/10)

「ストレスで成長する!~“元気力”のある“健康職場”を目指して~」のバックナンバー

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「「私の責任ですか?」~部下を裏切る上司の醜態」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

大学教員です。学生を見ていて感じるのは、中高あたりの先生からして、責任を取ってくれないんだというということです。だから最近の学生は、徹底してリスクをとりません。無駄なことはせず、周りに合わせ、チャレンジしない。念のため補足しておくと、最近の学生は非常に優秀です。但し人のために無償で何かをする人は減っているように思います。今の30代はまだいいです。20代は、時代の変化のせいか、そういう上司(?)にあまりに恵まれていません。(2009/07/10)

自分の勤務する会社にもいますよ。部下(それも派遣社員)に責任を押し付ける、管理職。派遣社員は責任をとる立場じゃないのに。そんな管理職に限って、管理職ならこのくらいわかっているだろということがわからない。それでもって、管理職としての報酬はそれなりにの高い⇒今の不況のご時勢、当然今の職場にしがみついたほうがおいしいので、ますます居座り続ける。・・・・の悪循環です。(笑)(2009/07/10)

いつも楽しみに拝読させていただいております。毎回、毎回、ごもっとも!!と思うのですが・・・。このような内容のコラムを是非とも「上司」に読んで欲しいと思いますが、実情は「上司」と言われるような立場に居る人間は読んでいないのではないでしょうか?たとえ読んだとしても「自分の事」だ!!と思わないような「人種」が多いようにも思います。だからいつまでたっても「改善」されないのでは?と悲観的になります。(2009/07/10)

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