『フランス革命史上・下』 ジュール・ミシュレ著 桑原武夫、多田道太郎、樋口謹一訳 中央公論新社刊 各1333円(税別)
本書はかつて中央公論社から発刊された『世界の名著』シリーズの1巻を占めていた。錚々たる訳者陣の本書が、文庫本の形で読めることを喜びたい。

ミシュレの歴史記述は独特であり、単に出来事を時代順に並べて記述したものではない。ミシュレは一種、歴史叙事詩として、本書を記述しているようだ。名前や年代が連なる歴史書と違って、
「おおフランスよ!」「おお人民よ!」という呼びかけが多いことに驚かされる。まるでミシュレが革命の現場にいて、人民のデモに加わっているようだ。
フランス革命という世界史的な出来事については断片的に知っている人は多いだろう。王をギロチンにかける、マリー・アントワネットも首を落とされる。ジャコバン派、王党派、ダントンの活躍、ロベスピエールの恐怖独裁、マラーの暗殺などなどの断片が錯綜している。
本書上下巻2冊を通読すると、フランス革命の全体像が明らかになる。そして、フランス革命関連の世界の名著と言われるにふさわしい内容を備えている。
「まえにもあとにも、女性がこんな影響力をもったことはない」
特に歴史家としてのミシェルの視点は、ピタッと人民の自由と権利獲得という一点に定められ、揺らぐことがない。「自由・平等・友愛」というフランス国旗を彩る3原則がすべての出来事の根底に据えられていて、とても読みやすい歴史書になっている。
ご存じの方も多いと思うが、バスチーユの監獄の襲撃に続く、王族をベルサイユからパリに連れ帰ったのが、女性たちの大集団だったことには感動した。彼女たちはまともな武器も持たずに(クワや手製の槍、そこらに落ちていた棒きれなどを持って)ベルサイユに押し掛けた。女性もフランス革命で目覚めた集団であり、女性たちの強さも本書を通して、ミシュレも読者も感じるであろう。ミシュレも、
「まえにもあとにも、女性がこんな影響力をもったことはない」
とまで述べている。
フランス革命は世界的な大事件だ。そのため、世界史の中で普遍性を持つことになった。日本の明治維新や廃藩置県も、驚異的な革命の1つだ。
明治維新に関しても、ミシュレのような視点での歴史が書かれることが待たれる。
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