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38. 共有できるものは、パトス以外にもある。

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2009年7月15日(水)

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 日直のボウシータです。ここ数週間、共感とか理解とかを公言することをめぐって、めんどくさい話をしています。

 前回、1990年代末から21世紀初頭にかけての、アダルトチルドレン小説や児童虐待を題材とした泣きヒーリング系ノンフィクションの流行に触れて、こういうことを書いた。

社会問題を、気持ちよく泣くためのズリネタにしてしまう国民、それが俺ら日本人なんですよ。合い言葉は「共感」なんですよ。

この一節を書きながら、箒木蓬生(ははきぎほうせい)の山本周五郎賞受賞作『閉鎖病棟』(1994)のことを思い出していた。

*   *   *

閉鎖病棟』 帚木蓬生 著、新潮文庫、580円(税込)

 この良心的な長篇小説の新潮文庫版は、親本刊行の14年後、文庫化の11年後に当たる2008年にベストセラーとなった。当時私は『讀賣新聞』夕刊のベストセラー評担当者のひとりだったので、これについて書いたことがある。そのとき、こんなことを考えた。

 本書も例によって、一書店員の手になる、「泣ける」ことを謳った書店店頭のポップで売れたらしい。しかし本書では、作者は泣かせようとしていない。

 もちろん、泣かせようとしていないコンテンツで泣いたって、べつに構わない。原則として読者の勝手である。

 しかし結論を先に言うと、本書に関しては、「私これで泣きました」と公言するのはちょっとアレなんじゃないか、と思った。

コメント6件コメント/レビュー

泣くことを前提に読む、ということは、一種の思考停止状態ですよね。▼筆者が何を伝えたかったのか(自分の思想と相容れるか容れないかは別として)、また読んで自分はどう感じたのか、その辺りが抜け落ちて、ただただ泣くカタルシスだけが消費されます。そこには知的誠実さも発展性もない。▼ある友人としばしば、「イマジン」に関して議論になるのですが、今回のコラムで何となく腑に落ちました。▼小生は、フランク・ザッパもレノンも好きです。 (かいざ)(2009/07/16)

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泣くことを前提に読む、ということは、一種の思考停止状態ですよね。▼筆者が何を伝えたかったのか(自分の思想と相容れるか容れないかは別として)、また読んで自分はどう感じたのか、その辺りが抜け落ちて、ただただ泣くカタルシスだけが消費されます。そこには知的誠実さも発展性もない。▼ある友人としばしば、「イマジン」に関して議論になるのですが、今回のコラムで何となく腑に落ちました。▼小生は、フランク・ザッパもレノンも好きです。 (かいざ)(2009/07/16)

本を読んで共感できたかできないかは、本を読んで得られる楽しみの1要素に過ぎない。本を読む楽しみは他にもある。それは、たとえば登場人物のキャラクターの設定の面白さだったり、展開するストーリーの巧みさだったり、文字で表現されるその表現スタイル=文体のドライブ感だったり…。作者や作品ごとにいろいろあって、その多様性を味わうのも楽しみなのである。読書の楽しみを「共感できるか否か」という単一のモノサシにのみ求めている人との付き合いは、共感できる作品を介してのみ成立するもので、その基盤は脆弱なものと言わざるをえない。ある本について、相手は共感できたけれども自分は共感できなかったりしたときには、「共感できない人とは付き合えない」とバッサリ切られる可能性があるからだ。楽しみのモノサシをたくさん持っている人の方がお互いの楽しみ方の接点が多く見つけられるだろうし、付き合いも長続きしそうなものだ。そういうことですね。興味深いと思いますので、この話題をしばらく続けてください。(2009/07/15)

初回の内容はよく分かりませんでしたが、今回の内容は分かる気がします。本等の他人の作品を、他人の世界を、自分の中に展開する。その中で感じる。自分の中に展開している以上、感じたものは他人との共有、共感はできないとも言えます。「本」は「味」と似ていますね。共感を誘うグルメリポーターは本のお勧めコメントと同じか。 思うのですが会話で相手を「本」のよう自分の中に展開する、深く分かろうとする、ってのは難しいなりんご。(2009/07/15)

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イアン・ブレマー 国際政治学者