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真面目に語るジャパン・オリジナルのメディア史~『アダルトビデオ革命史』
藤木 TDC著(評者:近藤 正高)

幻冬舎新書、820円(税別)

  • 近藤 正高

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2009年7月16日(木)

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評者の読了時間6時間22分

アダルトビデオ革命史』 藤木 TDC著、幻冬舎新書、820円(税別)

 20代のはじめ(1997~2001年頃)、僕は成人男性向けの月刊誌(ありていにいえばエロ本)でレンタルAVのレビューを書くため、ピーク時で月30本近くアダルトビデオを見ていた。

 仕事を始めた当初、計4ページのAVコーナーのうちだいたい3ページは、いわゆる「単体」女優の出演作品にあてられ(一人につき1ないし1/2ページ)、残りのページで「企画もの」……本書によれば〈モデルの質(=美貌)よりも内容(=性交に至る過程)の奇抜さ、性嗜好の特殊性を優先した作品〉を数本とりあげるという感じだった。

 やがて、「セルビデオ」(あるいは「インディーズビデオ」)と呼ばれる、レンタルではなく小売りによって流通するビデオの台頭にともない、新たにセル紹介のページが設けられた。セルビデオは、レンタルAVのメーカー各社が加盟する「日本ビデオ倫理協会(ビデ倫)」とはべつの、より規約のゆるい審査機関を通しており、性器を隠すモザイクもレンタルのそれよりずっと薄かったため、ユーザーの人気が高まっていたのだ。

 本書を読んでいて、僕がAVにどっぷり浸かっていたのが、レンタルからセルへ単体女優が流入すると同時に、逆にセルの企画もので人気に火がつきレンタルの単体作品にも主演する女優──彼女たちは「企画単体(“キカタン”と略される)」と呼ばれた──も現われ始めた時期だということをあらためて知った。レンタル、セルの垣根なく出演する人気女優の登場にともない、両者における女優の質的格差は大幅に縮んだと、本書は説明する。

 従来、アイドル性の高い単体女優のほとんどは、性器の結合、いわゆる「本番」を拒否するのが常だった。ところがセルビデオの隆盛はこうした常識をあっさり打ち破る。セルのような〈修整の薄いビデオでは擬似本番は不可能で、どんな美人女優でも本番をしなければならない〉からだ。

 記録媒体もまた、僕が記事を書いていたころはVHSが主流だったが、やがてDVDへと移行した。いまではインターネットでも動画配信が行なわれており、わざわざビデオ店まで行かなくてもAVを楽しめる。

 このように、その内容も形態もめまぐるしく変遷をとげてきたアダルトビデオ。その歴史をコンパクトにまとめたのが本書だ。著者は80年代より現在にいたるまで、雑誌でAVをはじめとする成人向けメディアの動向を追い続けており、2004年には「噂の真相」誌での連載をまとめた『アダルトメディア・ランダムノート』という好著を刊行している。

「ビデオ撮り」特有のエポックメイキングな手法とは

 そもそもアダルトビデオはいつ誕生したのだろうか。すでに70年代初めには、国内の大手メーカー3社が「U規格」というカセットビデオテープの統一規格を設け、ソフトの商品化が進むなかで「ポルノビデオ」というジャンルも生まれていたそうだ。だが、それはあくまでもフィルムで撮影した映像をビデオテープに記録したものにすぎなかった。

 現在のAVに通じるビデオ撮りによるポルノビデオの第1号は、1981年(75年にはソニーがベータマックスを、翌76年には日本ビクターがVHSを開発し、本格的なビデオ時代が到来していた)に発売された「ビニ本の女・秘奥覗き」と「OLワレメ白書・熟した秘園」の2作だとされる。とはいえ、それらは〈脚本を準備し、カットを割って撮影されたごくオーソドックスな劇映画のスタイル〉を踏襲したものだったようだ。

 ビデオの特性を活かしてエポックをつくったのは、翌1982年に発売された代々木忠監督の「ドキュメント ザ・オナニー」シリーズと、小路谷秀樹監督の「女子高生素人生撮りシリーズNo.2 美知子の恥じらいノート」といった作品だった。これらに共通するのは、ドキュメント的演出が行なわれたことだ。とりわけ後者は、その後のAVの方向性を決定づけたという意味においてより重要であると著者は強調する。

 「美知子の恥じらいノート」の内容は、スカウトされたばかりのモデルが、応接室でヌードになるよう説得される過程を実録風に追ったものだったという。

〈客観から主観、固定から移動へと急転する視点や、機動的なカメラの動き、美知子の表情の細やかな変化の凝視など、この作品ではビデオカメラのアクティブな動きが非常に際立っている。わずか30分の中にモデルへの性的興味を凝縮させた濃密なドキュメントとなっている〉

 こうした演出を可能にしたのは、監督が一人で操作できる機動性に優れた撮影機材だ。70年代後半、テレビ報道においてENGというビデオカメラを使った取材撮影が本格化し、機器メーカーはそれに対応した機材を次々と開発していく。同種の機材を駆使した小路谷の作品が、報道的、ドキュメント的になるのは当然だったといえる。

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