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文化が創り出す“おそるべき”食事~『世界奇食大全』
杉岡 幸徳著(評者:清田 隆之)

文春新書、830円(税別)

  • 清田 隆之

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2009年7月17日(金)

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評者の読了時間3時間00分

世界奇食大全』 杉岡 幸徳著、文春新書、830円(税別)

 我ながら未熟な味覚だと思う。

 好きな食べ物はカレーに唐揚げ、ハンバーグなど。子どもの頃から食べ慣れたメニューをローテーションするだけの食生活で、栄養の偏りに不安はあるものの、いろんなグルメを味わってみたいという欲はまるでわいてこない。

 口当たりのいいモノ、どこでも簡単に食べられるモノに慣れすぎてしまい、食が極端に保守的になってしまったのだろうか。

 そこに来て「土のスープ」「鶏のとさかの塩焼き」「パイナップル茶漬け」である。カバー見返しの説明文にもあるように、数々の「奇食」を紹介し、〈ヒトの業と知恵の深さを実感〉しようというのが本書だ。

 例えば、虫。テレビのゲテモノ料理番組には昆虫食がつきものだが、日本人も古来からトンボやカマキリ、コオロギやゲンゴロウといった虫たちを食していた。本書では「ザザムシの佃煮」や「ハチの子のすし」といったメニューが紹介されている。茶色い幼虫がひとかたまりになったグロテスクな外見だが、これらは今でも珍味として流通しているという。

 これが味や食感だけの話であったら、単なるカタログで終わってしまうだろう。しかし、原始時代の人間にとって、虫は重要なタンパク源として機能していた、という事実を知ると、昆虫食に対する考え方もにわかに変化してくる。

「何が奇食か」という明確な定義はない

 狩猟や牧畜といった食糧確保の技術を獲得する以前は、身近にいて捕まえやすい虫からタンパク質を摂取するしか方法がなかった。事実、原始人の糞の化石からは、セミやバッタはおろか、シロアリやカブトムシ、スズメバチやゴキブリなどの遺骸まで見つかっている。

 タンパク質が不足すると脳や体の機能が低下し、疲れやダルさが表面化するが、その状況を解決してくれる食べ物を見ると、脳は活性化する。肉を見て食欲をそそられるのも、それがアミノ酸など人間の体に必要な栄養素を効率よく摂れる食材であると脳が経験的に認知しているためだが、我々の祖先にとっては、虫たちがごちそうに見えていたのかもしれない。

 現代のフランス料理には、先ほど挙げた「土のスープ」なんて変わり種もある。これは、マグネシウムやカルシウムなど、ミネラル豊富な山の土を煮てルッコラの根を添えただけというシンプルな料理で、ベトナムやハイチ、アメリカ南部でも食されているそうだ。あるいは、日本のマタギたちは「ツキノワグマの血」を飲んでいたという。いずれも滋養強壮や精力増強といった効能があり、現在も「薬食」として親しまれているようだ。

 馴染みのない人にとっては口にするのも想像し難いメニューであっても、そこには食べられるだけの理由があり、好んで口にする人だって存在しているのだ。

〈ここまで見てきて、「何が奇食か」という明確な定義がどこにもないことがおわかりだろう。ヒンドゥー教徒から見れば、ウシは奇食そのものだし、イスラム教徒からすれば、ブタはとてつもないゲテモノであり悪食だ。オーストラリア人から見たら、クジラを食べる日本人はどうしようもない野蛮人に見えるだろうが、日本人から見たら、かわいいカンガルーをステーキにして食べている彼らを見ると、なんて残酷な人々だと思うだろう〉

 つまり奇食とは、時代ごと、文化圏ごと、もっといえば個々人ごとに変わってくる相対的なものなのだろう。

 こうして様々なメニューを見ていると、人間の食の幅広さに驚かされるばかりだが、注目すべきは、そこに費やされた膨大な手間ひまとアイデアだ。

コメント2件コメント/レビュー

 ドラマ「チャングムの誓い」の中に、病人が(壁の?)土を食べていたという話が出てくる。 今回の記事で、土を食べる習慣を持っている文化もあるということ、また、土を食べることの意味について理解が得られた。(2009/07/17)

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 ドラマ「チャングムの誓い」の中に、病人が(壁の?)土を食べていたという話が出てくる。 今回の記事で、土を食べる習慣を持っている文化もあるということ、また、土を食べることの意味について理解が得られた。(2009/07/17)

現代日本にも「奇食」を作る主婦が多いと聞きますが、、。「嫁の飯がマズイ」で検索をすると凄い事例が出てきます。材料は普通なんですけどね。(2009/07/17)

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後藤 忠治 セントラルスポーツ会長