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不合理に見える国際政治にも背景はある~『なぜ世界で紛争が無くならないのか』
増田 弘監修(評者:加藤 亨延)

講談社+α新書、895円(税別)

  • 加藤 亨延

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2009年7月22日(水)

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なぜ世界で紛争が無くならないのか』 増田 弘監修、講談社+α新書、895円(税別)

 三度のエベレスト登頂に挑んだ英国の登山家、ジョージ・マロリーは、なぜエベレストを目指すのか記者に問われたとき、「Because it’s there(そこに山があるから)」と答えたという。

 世界を見渡すと、中東パレスチナをはじめ、人種・民族を理由にした紛争が多く起きている。昨今ではチベットやウイグルにおける問題も記憶に新しい。我々は、これら紛争の原因を「そこにユダヤ人がいるから」「そこにイスラム教があるから」と短絡的に結びつけがちだ。

 しかしその背景をひも解くと、「誰々がいるから」「何々があるから」はそれほど重要ではなく、さまざまな国際政治の駆け引きと、メカニズムが隠されていることがわかってくる。

〈民族対立の背景には、必ず政治対立が存在します。民族は、ただ民族が異なるという理由だけで、武力紛争を起こしたりはしません。そこに至った政治対立とはなにかを見極めることが大切です〉

 本書は、「アラブ対イスラエル」「アメリカ VS. イラク紛争」「朝鮮半島危機」「台湾海峡危機」「歴史認識をめぐる日中危機」「現代アフリカの紛争」「東ティモール紛争」という7つのケースを7人の専門家がそれぞれ解説したもので、現代世界における国際紛争の事例をほぼ網羅している。

 特に興味深かったのは、1950年代に起きた二度の台湾海峡危機における中台関係だ。

お互い内戦状態でいた方が都合が良い

 1954-55年の第一次台湾海峡危機において、中国は、当時台湾の勢力圏だった上海沖の島々を軍事的に奪おうとした。アメリカの台湾防衛の意思を試したのだ。結果、アメリカは台湾を助け、これを契機に相互防衛条約を台湾と取り交わした。

 アメリカの意志を確認した中国は、1958年に、今度は台湾が今でも実効支配する中国・福建省沿岸にある金門島や馬祖島などに攻撃を仕掛けた。これら島々には、台湾が「大陸反攻」を行うための大規模な軍隊が配置され、軍事上重要な位置を占めていた。

 しかし、アメリカは台湾政府に「本土から遠くにある島々を放棄すべき」という要求を出した。仮に台湾がこれら島々を拠点に中国と戦えば、アメリカは同盟国として、その戦闘に巻き込まれる。したがって、これら島々を台湾が放棄することで、少しでも戦争の懸念材料を減らしておきたかったのだ。

 もちろん、台湾はこの提案を受け入れることはなく、中国へ頑強に対抗した。アメリカも台湾を助けなければ、日本や韓国など他の同盟国から「同盟の信頼性」を疑われるため、金門島の守りに入った。

 ここで不思議なことが起こる。中国は「7日間砲撃を停止するから米艦の護衛をつけないという条件で、充分に自由に補給品を輸送してもよい」という声明を台湾側に伝えた。そして中国は、「奇数日砲撃」という宣言もした。結果、いつしか台湾も偶数日にのみ砲撃するようになり、双方の砲撃も空砲へと変わった。しかし、この戦闘は1978年まで、約20年も続くことになる。

 なぜ、空砲を撃ってまでも戦闘を続ける必要があったのか? じつは、台湾国民党も中国共産党も内戦状態が続いた方が都合は良かったのだ。アメリカが台湾に圧力を加え、中国大陸近辺の島々を放棄すれば、台湾は中国から永遠に切り離される恐れがある。国民党も共産党も、中国を統一するという目標をお互い持っている。したがって、双方の思惑を持続させるため「内戦の儀式化」が必要であったという。

〈(評者注:中国と台湾は)単に憎み合って殺し合っているだけではありません。お互いのメッセージを理解して、国際政治のなかで自分たちの利益や政治的目標を最大限に実現するために、どうしたらいいのかを考えています〉

 さらに、北朝鮮という、我々にとってより身近であり時宜な外交問題に関しても論理的な説明が展開されている。

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