• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

オトナの読者のみなさん、昆虫採集をしませんか?

2009年7月27日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 夏休みといえば昆虫採集。これは、小学生の発想です。オトナのやることじゃありません、と日経ビジネスオンラインの読者の皆様は思うことでしょう。

 けれども、ここに、オトナこそ昆虫採集! と主張される方がいらっしゃいます。
 そう、養老孟司先生です。
 養老先生によれば、昆虫採集には、経済問題、環境問題、教育問題、心の問題、とにかく人間をとりまくあらゆる問題を解くカギがあるらしい、のです。
 はてさて、昆虫採集はオトナにどんな効用をもたらしてくれるのか。
 先生に聞いてみましょう。

養老孟司 ずいぶん長い間、虫を採ってきた。小学校四年生の夏休みに、標本を作って学校に提出した記憶がある。そのときの標本はさすがに残っていない。でも半世紀以上、虫採りをしてきたことは間違いない。

 なぜそんなことをするのか。

 昨年はアメリカ人の文化人類学者が来た。「日本人はなぜ虫が好きか」というテーマで研究をしているから、取材させろという。その本がどうやら完成したらしい。メールでラフの原稿が届いた。その前の年には、同じくアメリカのテレビ局が来て、同じテーマで話をさせられた。それがどういう番組になったか、見てないから知らない。ともあれ日本人の虫好きは、少なくともアメリカには知られつつあるらしい。

画像のクリックで拡大表示

虫採りをしているほうが、仕事の効率も上がります

 さすがに大学に勤務している間は虫採りの余裕が少なかった。「本業」がほとんどの時間を食ってしまうから、それはやむをえない。
 それでも三十歳の頃、オーストラリアに留学している間は、週末は虫採り、残りの五日間は大学の仕事と決めていた。週に五日しか働かなくても、大学の仕事つまり研究は日本の大学にいるときより進んだ。
 日本と違って研究環境が良かったことは間違いない。なぜか日本では、仕事そのものの能率が悪い。

 そのことと、虫採りは関係があると思う。
 週末の休みに虫採り、つまり野外に出ていれば、月曜日からは元気に働く気になる。人間社会とはまったく違う世界に触れるからである。
 日本にいると、当時は土曜日が休日でなかったこともあり、ベタに働いてしまう。日曜日もたまの休みだからといって、虫採りに出る元気がない。頭を切り替える余裕がなかった。だから必然的に年がら年中、大学の仕事をすることになる。これが能率を上げるかというと、それはきわめて疑わしい。いわゆるマンネリズムに陥りやすいからである。むろん人にもよるであろうが。

 私の場合、仕事だけに邁進するなら、それもできる。できるけれども、それをやってはいけなかったのだろうと、歳をとると思う。

 東大医学部時代には、虫採りをせず、仕事をしていることが多かった。いま思えば、それを可能にしたのは辛抱で、私は辛抱をしすぎた。だからどうなったかというと、東大のある本郷にはいまでもあまり近寄りたくない。今風の言葉でいうなら、仕事による心的外傷が治癒していないのである。

 私が人並みはずれて働いたということではない。そういうことには、それぞれ自分の基準がある。私の場合には、大学で働くことが自分の基準を過ぎてしまっただけのことである。それも研究に没頭したということではない。研究以外のことに時間をとられすぎた。

「養老孟司先生のタケシくん虫日記」のバックナンバー

一覧

「オトナの読者のみなさん、昆虫採集をしませんか?」の著者

養老 孟司

養老 孟司(ようろう・たけし)

東京大学名誉教授

解剖学者/作家/昆虫研究家。1937年生まれ。62年東京大学医学部卒業後、解剖学教室へ。95年東京大学医学部教授を退官し、その後北里大学教授に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

リクルートは企業文化そのものが競争力です。企業文化はシステムではないため、模倣困難性も著しく高い。

峰岸 真澄 リクルートホールディングス社長