• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

結局面倒くさいってこと?~『セックスレス亡国論』
鹿島 茂・斎藤 珠里著(評者:尹 雄大)

朝日新書、700円(税別)

2009年8月3日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

評者の読了時間3時間00分

セックスレス亡国論』 鹿島 茂・斎藤 珠里著、朝日新書、700円(税別)

 電車の中吊り広告では、年がら年中水着姿の女性が媚態を示し、コンビニに寄れば一時期鳴りを潜めたはずの成人誌が、いっそう過激になって棚に並んでいる。どれだけ欲情させたいんですか! と突っ込みたくなるような風景が目に付く。だがしかし…。

 厚生労働省の2007年の調べでは、日本の夫婦の3割がセックスレスと報告されている。さらに、イギリスのコンドーム会社デュレックスが08年、26カ国2万6000人強を対象に行った調査によれば、週1回以上セックスを行っている日本人は34%だという(ちなみに最高値はギリシアの87%)。

〈「性生活満足度」においても、「満足している」の世界平均が44%だったのに対し、日本はわずか15%だった〉

 セックスを連想させる光景が日常にはびこりながら、なにゆえセックスレスが「年々増加傾向にある」のだろう。

 本書はマダム・ジュリー(以下、MJ)のペンネームでフランスの性愛事情をレポートしてきた斎藤珠里と、フランス文学研究者の鹿島茂による問答の体裁をとっている。亡国とは、「男と女の磁力が消えてゆく日本に、将来はあるのだろうか?」という危機を指している。鹿島は問答をこう切り出す。

〈人間は放っておくと、セックスをしなくなる〉

 「人間は本能があるからセックスする」のであり、「それを抑えるために、法律や宗教、それに禁忌の文化などが発達してきた」と考えられてきた。だが、鹿島は人間を放任するとセックスしなくなるという。その理由が「二足で歩行できるようになった」ことだという。どういうことか。

 人類は二足歩行し、空いた手で道具をつくり、自然環境を作り替え、進化してきたが、その動機づけは、鹿島いわく「面倒くさいことはしたくない」。

最後に残った「とても面倒くさい」もの

 その気持ちが技術革新を促した。確かにコンビニをはじめとした流通サービス業やITなど、「現代の資本主義のほとんどは、この面倒くさいことの代行業で成り立っている」。

 しかし、いくら利便性は高まっても、人間関係だけはコンビニエンスにならない。「最後に残った最も面倒くさいもの、それが恋愛とセックス」というわけだ。

 本書は、特に根拠を示すことなく、「セックスレスの原因の大半が男」であることを前提にしており、また男にとってセックスは常に「やらせていただく」までの労力やコストのかかる「面倒くさい」ことであったと位置づけている。

 かつては子孫繁栄や家の存続という掟のため、男はもれなく結婚し、セックスできた。だが、掟の効力が弱まった現在、現実の相手がいなくてもオナニーで性欲の解消をはかれるメディアに事欠かない。

 鹿島によると男のオナニーの起源は古く、これまた二足歩行と関係している。「ふと手が空いていること」に気付き、「おのずと自分の股間に伸びるようになる」という具合だ。重要なのは直立したことで、環境を把握する際、視覚が嗅覚より優位になったことである。

 人間は事象を目で観察し、そこから法則というパターンを世界に見出すようになった。この能力は逆にも働き、脳内で思い描いたパターンを現実に当てはめることもできる。

 つまり、「目の前に何もなくても、人間はイメージする力」が備わった。その力と個の欲望を満足させること、本書の表現でいえば「自我パイの一人食い」を可能にした。

 「自我パイの一人食い」とは、自分の思う通り、好きなように生きる自由の獲得のことだ。それは「金儲けの自由」、つまり資本主義の高度化と足並みを揃えている。

 豊かな暮らしは下層階層を押し上げ、人間の欲望をかなえる商品へのアクセスを容易にした。元来、セックスや恋愛が面倒だった男だ。メディアの発達が合わされば、当然「オナニーの方がいいやという男が激増」するというわけだ。

 女性の場合は、「自我パイの一人食い」はどういう道筋を辿ったかといえば、鹿島いわく「セックスは気持ちいいもんだ、女性も性の快楽を謳歌すべし」と、欲望の解放に向かった。

 MJは「女性の性の目覚め。自由恋愛が認められてから、女性はどんどん強くなってますね」というが、鹿島はこう返す。

コメント7

「NBO新書レビュー」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

企業や官公庁の幹部のメールボックスの内容が、まるごと数十万〜数百万円で売られている事例もある。

名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官