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あえて、犯人探しをしてみよう~『資本主義崩壊の首謀者たち』
広瀬 隆著(評:山岡 淳一郎)

集英社新書、720円(税別)

  • 山岡 淳一郎

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2009年8月7日(金)

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評者の読了時間3時間30分

資本主義崩壊の首謀者たち』 広瀬 隆著、集英社新書、720円(税別)

 アメリカ中心の資本主義経済が、崩れていると感じる人は多いだろう。ただ「元凶」を的確に言い当てるのは難しい。

 本書は、その元凶の解明に踏み込み、1989年のベルリンの壁崩壊後に加速したグローバリズムと「金融腐敗」によって未曾有の大混乱を引き起こした犯人たちをあぶりだしてゆく。

 その手法は「何か特別な、世間に知られていない事実」をひけらかすのではなく、皆が新聞・テレビに出てくるエコノミストや評論家のなまぬるい解説で分かったような気になっていることを丹念に正していく、すなわち「政治家や金持ちの太鼓持ち」のために誤解している事実を指摘する形をとっている。解説の水先案内にニューヨーク・タイムズなどの「ひとコマ漫画」をあしらい、米国の大衆意識を軸に展開しているのも本書の特徴だ。

 では、著者が「金融危機」とか「世界同時不況」といった現象追認的な言葉ではなく、「金融腐敗」と言い切るのは、どういう理由からなのか。

 たとえば、原油や穀物価格の高騰が投機マネーに起因しているのは疑いの余地がない。投機事業の逃げ場に「金(ゴールド)市場」が使われているのも察しがつく。しかし、原油、穀物、金に為替を加えた4つの先物取引が、「シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)」グループ1社で行われるようになった経緯を知る人は、金融関係者の他は少ないのではないか。先物取引所の大合同は次の手順で行われたという。

◇1994年8月3日 原油取引所であるニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)が金の先物取引所(COMEX)を買収合併。
◇2006年10月17日 為替取引所(CME)が穀物取引所(CBOT)を買収すると発表(正式合併は2007年7月21日)。両者はCMEグループとなる。
◇2008年3月17日 為替・穀物取引所(CMEグループ)が原油・金取引所(NYMEX~COMEX)を買収(合併完了は8月22日)。

先物市場が統合された背景

 世界経済に多大な影響を与える4つの先物取引が、利益競争に走る、ひとつの企業グループのなかに投げ込まれてしまったのである。

〈アメリカでは、不正をおこなう人間を「腐ったりんご」と呼びますが、一つのりんご箱に、為替、穀物、原油、金のりんごを入れたらどうなるでしょう。(中略)これらのりんご箱の中で腐敗が広がらないはずがない。こうして、ディーラーの一人ずつが腐ったりんごになる〉

 と著者は記す。しかも、

〈アメリカ政府は、これを野放しにしてきました。犯罪が、犯罪にならないように制度を定めているのが、現在のアメリカと世界の金融システムです。これを犯罪とする認識が、全世界のエコノミストと政治家にまったくない。その精神的な腐敗こそが、金融腐敗の源であります〉 

 ならば、最初の「腐ったりんご」は誰だったのか? 著者は、サブプライムローンなどのスーパーバブルによる金融崩壊の最大の責任者は、「財務長官ロバート・ルービン」と名指しする。

 ルービンは、先物取引所の理事として国家の命運を左右する穀物や石油、為替などをギャンブルに似た先物取引の対象にして、投機を煽り立てた。そして、ウォール街の金融を規制する証券取引委員会(SEC)の顧問と連邦準備制度理事会(FRB)の国際資本市場顧問委員を兼務しながら、規制をどんどん緩め、1990年にはゴールドマン・サックスの共同会長に就任し、米国内の投機事業をリードした。

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