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身近な植物がなぜ叩かれる?~『大麻ヒステリー』
武田 邦彦著(評:加藤 亨延)

光文社新書、740円(税別)

  • 加藤 亨延

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2009年8月19日(水)

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評者の読了時間1時間10分

大麻ヒステリー──思考停止になる日本人』 武田 邦彦著、光文社新書、740円(税別)

 大麻が、日本人にとって身近な植物だと聞いて、驚かれる方も多いだろう。神社の鈴縄やしめ縄は大麻から作られているし、七味唐辛子に含まれる「麻の実」は大麻の実である。この他にも蚊帳、産着、下駄の鼻緒、畳の縦糸と、我々の伝統文化と大麻との関係は、枚挙にいとまがない。

 著者によれば〈大麻は、日本の風土にあっていて、農薬などが少なくて済み、成長が早く、広い用途に使うことができ、持続性社会を考えるなら最適な作物の一つ〉であった。有史以来、日本の伝統・文化と多くの接点を持ち、生活に溶け込んでいた植物にも関わらず、戦後、我々は大麻に対し一貫して否定的な印象を持ち続けてきた。本書では、このような“現代の禁忌”である大麻問題を、様々な例を挙げつつ、肯定しようと試みている。

 そもそも「麻薬」と「大麻」を混同している人も多いのではないか。「麻薬」という言葉は、旧字体では「痲薬」と記し、「痲」の字は「しびれる」という意味を持つ。一方で、「大麻」の「麻」は植物の「アサ」を指す。つまり「痲」と「麻」は同じ意味ではない。1949年に、漢字が旧字体から新字体に移行され、「痲」と「麻」が同じ漢字になった結果、このような混同が起きたのだ。

 言葉の問題に限らず、大麻が禁忌たる“最大の障壁”、精神的作用にも著者は言及する。精神的作用とは、多幸感や開放感と表現される。具体的には、頭がボーっとしつつも、少しの物音にもパッと反応する鋭利な感覚が混在し、箸が転んだだけで笑い出してしまうほど、感情が大袈裟になるといえば、理解できるだろうか。大麻の種類によって、これら引き起こされる作用の程度も異なるという。

 大麻の主成分は、主に二種類の化学物質によって構成されている。1つは精神的作用をもたらすテトラヒドロカンナビノール(THC)。もう1つはカンナビジオール(CBD)という、THCの精神的作用を打ち消す働きをするものだ。つまり、THCとCBDの含有割合によって、精神的作用に強弱がつく。

国産は精神的作用が低いらしいが

 インド大麻はTHCの割合が多く精神的作用が高いが、一方で、日本固有の大麻にはTHCが少なく(もしくは、ほとんど含まれず)、CBDが多い。よって、精神的作用が低い(もしくは、全くない)らしい。

 しかし、現行の大麻取締法では、THCの有無に限らず、全ての大麻が取り締まりの対象となる。これに対し著者は、THCの含有量によって規制すべきと提案している。

 それでは、精神的作用をもたらす大麻は人体に有害なのか? 著者はWHO(世界保健機構)が1970年にまとめた「健康および心理に対するアルコール、インド麻、ニコチン、痲薬摂取の結果の相対的な評価」というレポートの一部を根拠に、大麻の有害性を否定している。

〈奇形の発生、衝動的な行動、大麻を吸っているうちに吸う量が増えるというような、激しい障害や習慣性はないこと、さらには痲薬につきものの禁断症状などは認められない〉

〈大麻がきっかけになって、ヘロインなどの痲薬につながる(評者注:ハードドラッグへの入り口になる)ことはない〉

 さらに、著者は科学的根拠だけでなく、現行の大麻取締法の出自を探りながら、その施行自体に疑問を呈していく。

 大麻取締法のキッカケはGHQ(連合国軍総司令部)の戦後占領政策にあり、その大元は、1920年にアメリカで制定された禁酒法だという。

 そもそも、禁酒法の制定の裏には、ドイツなどから新たにアメリカに渡ってきたカソリック系住民に対する、プロテスタント系住民の感情的な反発があった。また、第一次大戦による対独感情の悪化も影響していた。

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