今回の「走りながら考える」は、いつもとは些か趣を変えて開発途中で未発売のクルマに乗ってみた。慶應義塾大学が主体となり産学協同で造る未来の“スーパー電気自動車”「エリーカ」である。
そもそも何が“スーパー”なのか? 先ずはそのカッコである。
小径タイヤを8つ並べた特異なレイアウト。シトロエンの傑作車DSを彷彿させるモダンクラシカルなデザイン。そして圧倒的な動力性能。8つのタイヤの内側には、それぞれ出力100馬力のモーターが直結されている。100馬力×8で都合800馬力。セッティングによって大きくその数値は変わるのだが、最高速仕様にすると、時速370km/hを越える。しかしエコこそが第一義であるべきはずの電気自動車に、かようなバカ力を与える必要が果たしてあるのだろうか。その理由はエリーカを開発する慶應義塾大学電気自動車研究室のホームページに掲載されている。以下引用。
「電気自動車はこれまで、性能が低くて実用的でないとされてきました。その評価を一挙に覆すには最高速度の高い車を作れば良いと思いました。それで、Eliicaは最高速度400kmを目指しました。結果的には最高速度は370kmになりました。」
う〜む、単純明快。確かに電気自動車というと静かだが遅い、走っても全然楽しくない“電動カート”のイメージがつきまとう。圧倒的に速いクルマを造って、そんなマイナスイメージは一掃してしまえ、と言う訳だ。それにしても目標400km/hとは……。ずいぶん途方もない数値を掲げたものだ。さすが慶応、陸の王者。
「Eliicaの最大の特徴の1つは加速です。スタート時から時速約90kmまで0.68Gの加速度で加速します。これは物が落ちるときの加速度の0.68倍に相当します。」
実際エリーカに試乗(運転はさせてもらえず、助手席で)させて頂いたのだが、このクルマの加速は本当に凄まじい。何しろ800馬力の8輪駆動。よくスーパーカーの試乗記などで、「シートに身体が押し付けられる」という表現を見掛けるが、本当にその表現がピッタリなのだ。下の画像をクリックすると、動画がご覧いただける。
提供:慶応義塾大学電気自動車研究室
ホントに乗った経験から言うが、GT-Rよりもポルシェ911ターボよりもガツンと来る。実際に0-160キロ(停止状態から時速160km/hに達するまでの時間を計測する)の実験では、レーシングドライバー片山右京氏ドライブの元、7.04秒という驚異的なタイムを叩き出している。これは、ポルシェ最速のGT2(7.40秒)より速い。
(開発者の清水浩教授から後日届いたメール:「ごめんなさい。気が利かなくて。運転してもらえばよかった。というのは、ガソリン車で高い馬力が出る車は運転がとても難しいです。ところが、この車は運転がとても簡単なんです。最近では藤原紀香さんがテレビの撮影で運転してくれましたが、違和感なく乗れる車だといってくれました」)
しかしこのエリーカ、レースに勝つために造られたクルマではない。世間をアッと言わせ、注目を集めることにこそこのクルマの意義が有るのだ。そして注目が集まった暁には……そこからさらに世間をアッと言わせる壮大なプランが背後に控えているのである。
さてさて、それでは早速このクルマの仕掛け人である、慶応義塾大学環境情報学部の清水浩教授にご登場いただこう。清水教授は何を考え、どこを目指してクルマを造るのか。クルマにエネルギーに環境問題に……。アッと驚き、ナルホドと唸らされる、清水節を堪能されたし!
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F:清水先生、この度はお忙しい中お時間を頂きましてありがとうございます。
清:こちらこそありがとうございます。
F:まず始めに、先生が「クルマ」をどのように捉えていらっしゃるかをお伺いしたいと思います。クルマはどうあるべきか、あるいはどうしたら楽しくなるのか。先生のご著書も読ませて頂きましたが、ここで改めて、先生が何を目指してクルマを造っておられるのかを教えて下さい。
「加速」「広さ」「乗り心地」、クルマの条件はこれだけ!

清水浩教授の新刊
『脱「ひとり勝ち」文明論』
清:私は単純にクルマが好きなので、そのクルマ好きの自分が「良いなぁ」と思えるようなクルマ造りです。
F:それは具体的な言葉にすると、どのような要素でから成り立ちますか。
清:「加速感」「広さ」「乗り心地」。この三つです。突き詰めるとクルマってそれれしか無いでしょう。
F:え、それだけですか。
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