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「メタボ」に隠された財源確保の狙い~『命の値段が高すぎる!』
永田 宏著(評:根本 由也)

ちくま新書、740円(税別)

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2009年8月24日(月)

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命の値段が高すぎる!──医療の貧困』 永田 宏著、ちくま新書、740円(税別)

 この夏、第45回衆院選が行われる。有利とされる民主党に対する自民党の長は麻生首相。昨年秋の就任以来、漢字の読み間違いや失言など、何かにつけてマスコミに叩かれてきた。

〈67歳、68歳になって同窓会に行くと、よぼよぼしている、医者にやたらにかかっている者がいる。彼らは、学生時代はとても元気だったが、今になるとこちらの方がはるかに医療費がかかっていない。(中略)たらたら飲んで、食べて、何もしない人の分の金を何で私が払うんだ〉

 上記は、昨年11月20日の経済財政諮問会議での麻生首相の発言である。やはりこれも問題発言として報じられたが、著者は〈公的医療保険の本質的な弱点を突いている〉と評価する。

 公的医療保険制度とは、公的機関などが医療費の一部を負担する制度のことだ。日本は全国民がこの制度に加入する「国民皆保険制度」である。会社員などは「健康保険」、自営業者などは「国民健康保険」、75歳以上の後期高齢者は「後期高齢者医療制度」に加入し、3割(後期高齢者は1割)を自己負担、残りを保険料で賄う「相互扶助の精神」によって医療費を支え合っている。

 だが現在、「国民皆保険制度」は崩壊の危機に直面している。医療保険は短期間で治癒する一過性の疾患を想定しているため、継続的な治療を要する慢性疾患が多い高齢化社会には適していないからだ。さらに少子化も重なり、各保険組合の資金は減少している。このままでは膨らみ続ける医療費を支えるため、国民一人ひとりの負担は増すばかりだ。

 誰もが平等に医療を受けられる代わりに、医者にかかる必要のない健康な人が不健康な人の分まで負担を強いられる。この「不公平」さこそが、公的医療保険制度の本質的な弱点だ。今後は不公平感を抱く人がますます増えていくだろう。麻生首相の発言は、意図せずして多くの国民の不満を代弁していたと言える。

 少子高齢化社会の到来は1980年代初頭から予想され、その頃から医療制度の改革が論じられてきた。バブル景気と、その後の「失われた10年」のせいで改革は停滞したが、小泉内閣の誕生によって、ついに医療費問題へ本格的なメスが入れられることとなった。

小泉医療改革は正しかったのか?

 著者は〈小泉医療改革とは、「高齢者医療の財源問題の解決」という一点に集約できる〉と述べる。小泉医療改革の本懐は、質の高い医療の実現ではなく、増え続ける「医療費の負担配分」または「医療費の抑制」という2つの側面しかないというわけだ。その裏には「国民皆保険の堅持」という国(特に厚生労働省)の思惑がある。

 果たして、その改革は正しかったのか? 本書では、現在の医療制度の元となった小泉医療改革の各施策がどのようにして財源問題を解決しようとしたのか、その詳しい内容と、巧妙な横の繋がりを解き明かしている。

 まず、医療費の負担配分における大きな柱となるのが「後期高齢者医療制度」であるが、この制度は発足当初から構造的欠陥が指摘されていた。

 後期高齢者の医療費全体の内、本人負担は1割。残りの9割を同制度の財源、すなわち後期高齢者からの保険料、公費(税金)、健保・国保からの支援金で賄うことになっている。

 この仕組みだと、後期高齢者人口が増えるに従って医療費の総額も膨らむ、つまり「自動的に保険料も上がる」。しかし、後期高齢者内で不公平感を募らせるようなシステムを、国は欠陥と捉えず、「世代内の支え合い」と称している。

 また、「世代間の支え合い」という名目で、赤字続きの国保を財源が豊かな健保の拠出金で支えようと、65~74歳を対象に「前期高齢者医療制度」を実施した。結果、健保の被保険者である現役世代のサラリーマンの負担が増した。

 同様に、〈前期高齢者を含む現役世代が後期医療に支払う支援金を割り増しする〉ためのものだと著者が直言するのが、「メタボ健診」だ。

 「メタボ健診」の実施者である健保・国保組合は、受診率や異常と診断された被保険者の割合に応じて、「後期高齢者医療制度」への支援金を±10%の範囲で加算・減算される。要するに、メタボな人がいる実施者にはペナルティが課せられる。

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